【知っておきたい採用のあれこれ】第2回
これからのインターンシップについて
(株)エム・ソフト 顧問・社会保険労務士 西 秀樹(東京)

 昨年10月、改正職業安定法が施行され、労働者の募集を行う際のルールが変わりました。改正職業安定法について解説する本連載「知っておきたい採用のあれこれ」。第2回目は「これからのインターンシップについて」です。

 経団連では、2021年以降入社対象の「採用選考に関する指針」を策定しないことを発表し、これを契機に、Society5.0人材の育成に向けて、産業界が求める人材像や採用のあり方、大学教育への期待などについて、大学と経団連の代表との間で率直な意見交換を行う継続的な対話の場として「採用と大学教育の未来に関する産学協議会」を設置し、2023年3月20日に3省合意のもと、これからのインターンシップのあり方について公表するに至りました。同協議会の2020年報告書では、日本の新しいインターンシップのあり方をゼロベースで定義し直すとともに、「学生のキャリア形成支援における産学協働の取組み」を4つに類型化しました。

 インターンシップは、「学生がその仕事に就く能力が自ら備わっているかどうか(自らがその仕事で通用するかどうか)を見極めることを目的に、自らの専攻を含む関心分野や将来のキャリアに関連した就業体験を行う活動」と定義しています。

 タイプ1:オープンカンパニー、タイプ2:キャリア教育、タイプ3:汎用的・専門型インターンシップ、タイプ4:高度専門型インターンシップが4つの類型となります。

 今回は紙面の関係上、企業内におけるタイプ1とタイプ3について記述します。

 タイプ1は、自社や業界に関する情報提供・PR、経営者・社員との座談会、職場見学などで、現在の1Dayお仕事体験に準じるもの(今後、インターンシップの呼称は使用できない)。タイプ3の中でも汎用的能力活用型インターンシップは、学生が有する適性、汎用的能力を重視したプログラムであり、基本的に選考や分野を問わず、学生が広く参加可能なもの。ただし、企業は情報開示要件として、インターンシップ募集要項において下記を具体的に記載する必要があります。

 情報開示要件は、(1)プログラムの趣旨(目的)、(2)実施期間、場所、募集人数、(3)就業体験の内容、(4)就業体験を行う際に必要な(求められる)能力、(5)インターンシップにおけるフィードバック、(6)採用活動開始以降に限り、インターンシップを通じて取得した学生情報を活用する旨、(7)当該年度のインターンシップ実施計画(時期・回数・規模)、(8)インターンシップ実施に係る実績概要(過去2~3年程度)、(9)採用選考活動等の実績概要となります。

 タイプ3の実施期間要件については5日間以上、かつ半分を超える日数を就業体験に充てること。実施時期は、長期休暇期間とし、対象学年は、学部3年生・4年生ないし修士1年となります。

 企業としては、インターンシップの呼称を使用する場合、タイプ3を実施することになり、企業において学生に求める能力の明確化や就業体験のカリキュラムの作成、有償・無償の有無など下準備が求められます。

 今後、多様化する人材の確保、定着を考えるうえで、職務内容を明確にすることは、アウトプットに対する速やかなフィードバックなど学生を受け入れることで企業内における人材育成体系が構築できると考え、積極的にタイプ3を検討いただきたいと思います。

 なお、情報開示要件を満たす場合、「産学協議会基準マーク」が使用できます。

 最後に、インターンシップを有償で行う場合、労働条件通知書の明示を行うこと。インターンシップ全般で、ハラスメントに留意すること、タイプ1を併用することで企業認知を高めミスマッチのない採用活動を行っていきましょう。

「中小企業家しんぶん」 2023年 5月 15日号より