経営者同士の交流の重要性を指摘 2023年版中小企業白書

 2023年版中小企業白書・小規模企業白書が発表されました。中小企業基本法が1963年に制定されて60年。中小企業白書も今回で60回目となります。

 今年の中小企業白書は、中小企業の成長を通じて日本経済や地域の発展につなげる観点から、「成長企業」に焦点を当てています。そして「競合他社が提供できない価値の創出により、価格決定力を持ち、持続的に利益を生み出す企業へ成長を遂げることが重要」であることを示しています。具体的には、価格転嫁、賃金、生産性、デジタル化、事業承継など、さまざまなテーマについて現状や課題などについて分析しています。

 小規模企業白書では、地域の社会課題などが顕在化する中でも、小規模事業者の持続的な成長を促していくことが重要との観点から、ソーシャルビジネスを通じた地域課題解決などを取り上げています。そして地域経済を下支えする小規模事業者について、支援組織や自治体のサポートも得ながら、引き続き地域の持続的発展を担ってもらうことが重要であることを示しています。

 それぞれ豊富な図表や事例も盛り込まれ、読みやすく、興味深い内容になっています。その中でも今年の中小企業白書で特に興味深かったのは、「経営者」に焦点を当てて分析を行っている箇所です。

 白書では、成長企業の経営者は、成長意欲を持っている傾向が示されており、成長企業の経営者は、第三者との交流などにより成長意欲を高めている傾向がうかがえると指摘。特に、経営者仲間との交流を積極的に行うことが、経営者の成長意欲を喚起することにつながっている可能性がある、と分析しています。

 多くの事例も掲載されていますが、うち4社は同友会会員企業です。そのうちの1人、(株)Orbの河井七美社長は岡山同友会の会員。「外部環境の大きな変化に直面するも、柔軟な経営により事業転換を図り、その後も成長を続けている企業」として紹介されています。その中で、「創業当初から参加している中小企業家同友会では、他業種の経営者とも交流を深めており、毎月経営の動向を報告し合いながら、アドバイスを頂く機会を設けている」と、同友会での活動が経営者としての学びを深める機会になっており、それが企業の発展にもつながっていることが紹介されています。

 昨年の中小企業白書では、経営者には「『自己変革力』を身に付けることが求められている」として、そのためには「本質的経営課題」を把握すること、経営者が十分に「腹落ち」(納得)すること、そのためにも第三者との対話が重要であることなどを強調していました。

 今年はそれに加えて、経営者同士の交流が重要であることを強調した上で、事例として同友会が紹介されていることは注目すべきことです。

 なお、中小企業庁では現在、「中小企業の成長経営の実現に向けた研究会」を設け、成長経営を実践する中小企業を多数創出するための新たな政策の方向性を提示することをめざして議論が進められています。近々、中間とりまとめを公表することが中小企業白書でも触れられており、今後の動向に注目したいと思います。

(KS)

「中小企業家しんぶん」 2023年 5月 15日号より