事業承継塾10周年記念行事を開催 同友すばる委員会【福岡】

 福岡同友会は4月21日、すばる委員会事業承継塾10周年記念講演会を電気ビル共創館Aホールにて満員の180名のゲスト・会員参加のもと開催しました。


 10年前、私たちは2点の問題を抱えていました。

 1つは、同友会運動に活躍されていたベテラン会員が役員を降り、退会される例が顕著になっていました。2つ目は、事業の後継者問題です。議論の末、2点を解決すべく60歳以上の会員によって構成する「すばる委員会」が設置されました。

 その目的は、(1)事業承継塾を設け経営指針成文化はもちろんのこと事業承継に早めに取り組むことにより会員企業の存続を図る、(2)交流部会を設け定期的に博多の街歴史探訪やグルメ会などによりベテラン会員の交流を深めること、としました。事業承継塾については年に6講座、例えば「事業承継計画表の作成」「事業承継の税制」「事業承継時のトラブル」「事業承継時の保険の活用」「M&A」「100年企業の承継と事業変遷」などを設け、会員の公認会計士、税理士、弁護士の先生、経営者が講師を務めました。前期未まで、延べ2090名の会員が学びました。また2021年より公認会計士などの専門家による事業承継窓口を開設しております。

 10周年を記念して、神奈川同友会の(株)ユサワフードシステム代表取締役、湯澤剛さんをお招きし「ある日、突然の承継 40億の借金を背負う。それでも人生何とかなる」という演題で90分の講演をして頂きました。湯澤さんは、キリンビールにて順風満帆のサラリーマン生活を送られていましたが、居酒屋33店舗を経営されていたお父さんが心筋梗塞にて急死され、40億円の借金を抱えた債務超過の会社を36歳にして引き継がざるを得なくなりました。40億円の借金を16年かけて完済されるという死にたくなるような壮絶な苦闘の講演に、皆さん身じろぎもせずに聞き入っていました。どんな苦難にも負けない勇気とスムーズな事業承継の重要性を学び取られたと思います。

 事業承継に関する親子の心情は微妙です。親は自分がしてきた苦労を子どもに味わわせたくないという思いと、しかし継いでほしいという思いの葛藤があり、子どもの方は継ぎたくないという思いと、しかし親を思うという葛藤を抱えています。従いまして、なかなか事業承継計画までたどり着かないのです。

 しかし、事業承継計画がないまま事業を継続していきますと、結果的には湯澤さんのように子どもは壮絶な負担を強いられることになります。

 一日も早く、自分の考えや希望を親子で話し合うことが大切です。

(株)紀之国屋 会長 中村 高明

「中小企業家しんぶん」 2023年 5月 25日号より