【障害者問題委員会・報告要旨】
同友会理念・労使見解と宮城同友会共生福祉部会の取り組み
(株)伸電 相談役 原田誠氏(宮城同友会相談役)

 6月13日、青森にて中同協障害者問題委員会が開催され、(株)伸電取締役の原田誠氏(宮城同友会相談役)が障害者雇用についての実践報告を行いました。報告要旨を紹介します。

 生きる過程において、不利な状況にいる人に手を差し伸べ、「どのように一緒に幸せな人生を歩むのか?」を考えるのが同友会らしい障害者問題の実践であり、同友会の一丁目一番地(最初に実施すべき最重要な事柄、最優先課題)です。

会社が儲かった後に障害者雇用をするのではなく、障害者雇用に取り組むことで企業が成長し、付加価値が上がるというのが本来の姿であり、それこそが「生産条件を上回る生存条件」だと思います。

私と労使見解

 1946年に生まれ、10歳まで電気の無い生活をしていたため、初めて目の前で電気がともった時の感動体験が現在の仕事につながっています。1度、大阪で就職しましたが、植物に学び植物とともに生きてきた人生だったことから、夢として持っていた(今も挑戦し続けている)「植物発電」の実現はサラリーマンでは難しいと判断し、縁もゆかりも無い土地でしたが、宮城県仙台市で1975年に(株)伸電を創業しました。

 初めて労使見解を読んだ時の感想は「良いことは書いてあるが、こんな甘いことを言っているから中小企業はばかにされるのだ」という怒りのような感情が沸き上がり、到底受け入れられるものではありませんでした。「何を言っているのかよりも、誰が言うかの方が重要」という私の価値観が、正しく読み解くことの弊害になっていたのだと思いますが、その後、当時の宮城同友会代表理事の言葉が響き、それなら間違いないと思い入会しました。

 同友会の幹部社員研修会に参加した際、知り合いの経営者から「あなたと幹部社員では言っていることがまったく違う」と言われたことがありました。また、ある女性の幹部社員が「私たちも会社のことを考えています。なぜもっと真剣に話を聞いてくれないのですか?」と、机を叩き泣きながら訴えてきたこともありました。これが相当こたえ、私自身が変わるきっかけにもなりました。経営者の仕事の1つは幹部社員を育てることだと思っていましたが、実は幹部社員が社長を育てるのだと思うようになりました。そして、その先では社員が幹部社員を育て、社員は新入社員が育てているのだと思いました。共同求人活動で毎年新卒採用をすることは先輩社員を育てるためのものでもあります。

最も信頼できるパートナーに「なり得る」存在とするために

 社員は最も信頼できるパートナーに「なり得る」存在であり、その「なり得る」を実現するためには、企業内に「共学」「共育」「共生」が必要となります。「労使見解」には「労働者の立場、考え方、感情をできるかぎり理解しよう」と記載されていますが、これこそが経営の肝であり、障害者と向き合う際にも特にこの部分が重要となります。

 わが社でも最も多くの資格を持つ社員が現場で大きなトラブルを起こし、その時に発達障害であることが分かりました。その後、製造部門に異動しましたが、大活躍し、部門全体を大きく成長させている1人となりました。本人も気づいていなかった潜在能力がありました。適材適所ではなく、その人がイキイキと働ける場所を見つける「適所適材」が中小企業らしい取り組みだと思います。社員が活躍できる場所と環境をつくることこそが経営者の責任です。

 障害者問題は地域全体の問題です。不利益を共有し、地域の中で誰もがイキイキと生きられる状態が人間の本来の姿ですから、存在基盤が地域にある中小企業こそが取り組むべき問題です。これが同友会の社会性の発揮であり、神髄です。

同友会理念・労使見解から共生福祉部会を検証

 休止していた宮城同友会共生福祉部会の活動を再開しました。自社と同友会を考えた時に、共生福祉というテーマと活動が無ければ本物の学びにならないと考えたからです。

 同友会理念と「労使見解」の視点から、共生福祉部会の活動を検証しました。誰もがイキイキ働けるのがよい会社であり、違いを認め合う人間性を持つことがよい経営者の条件、そして、誰もが住みやすい地域社会をつくっていくことがよい経営環境をつくること。また、経営指針の成文化と実践において障害者雇用のテーマを盛り込む必要があること、社員との信頼関係の構築における真のコミュニケーションとは強さと優しさを持つこと。以上のような検証と総括を繰り返しながら再スタートの運びとなりました。1度動きを止めてしまうと再び動かすためには大変なエネルギーを必要とします。いかに継続することが大事かと再確認した機会にもなりました。

 同友会は経営者団体ですから、仲間を増やしてナンボです。会勢が伸びなければ、いくら立派なことをしていても評価はされず、運動は広がりません。すべての道は会員増強につながっています。仲間が増える学びと実践を継続していきたいと思います。

会社概要

設立:1976年
資本金:3,000万円
従業員:17名
事業内容:電気工事、管工事業
URL:http://e-shinden.com/index.html

「中小企業家しんぶん」 2023年 9月 5日号より