連載【中小企業を働きがいのある職場に】
人と人とのつながりを力にする建物リノベーション専門企業(後編)
(株)ストラクス 代表取締役 山本 克己氏(千葉)

 黒瀬直宏・嘉悦大学元教授(特定非営利活動法人アジア中小企業協力機構理事長)が、中小企業の働きがいをキーワードに魅力ある中小企業を取材し、紹介する本連載。今回は、(株)ストラクス(山本克己代表取締役、千葉同友会会員)の取り組み(後編)を紹介します。

新卒採用に注力

 ストラクスは2002年4月に初めて新卒社員を採用しました。同業・同規模で新卒採用を行っている会社は少ない時代でした。既存社員からは、新卒者は教育に手間がかかるとの声もありましたが、新卒者は経営理念を受け入れてくれ、共に同じ方向性で成長していくことができるため、方針は曲げませんでした。毎年5名の採用をめざしていますが、これまで平均して1~3名程度しか採用できませんでした。しかし、24年度には8名もの新卒社員が入社します。これで、社員54名中8名(15%)が新卒社員となりました。

 以前は山本社長が事務員1人の助けを借りて採用活動の先頭に立っていました。合同企業説明会で両隣の千葉市役所と千葉銀行のブースには黒山のように学生が集まっているのに、自社のブースでは閑古鳥が鳴いており、悔しくて、今に見ておれと奮い立ちました。現在は、2年前に採用担当者として任命した2名が採用活動を強化しています。全社員を巻き込み交流を図る会社説明会やインターンシップは学生から好評で、新卒採用の増加につながっています。山本社長は、中小企業は間接部門をおろそかにしがちだが、成長のためにはその充実が必要だとし、DX化を図るため、昨年新たに“IT課”も設置しました。

女性社員が4割

 男社会のイメージが強い建設会社ですが、ストラクスは全社員の4割が女性です。建設現場では書類作成などの事務仕事も多いため、事務職採用にも力を入れました。事務職希望は女性が多く、結果的に女性比率が上昇しました。また、最近では施工管理職を希望する女性も増えてきました。一昨年1名、昨年1名、そして今年の4月には施工管理職の女性が2名も入社します。ストラクスでは女性がライフイベントを経ても活躍できる環境を整えることで、建設業界のイメージを変えたいと考えています。

 女性の役職登用にも力を入れています。女性社員から「このまま勤め続けても自分の将来像が思い浮かばない」と言われたことがきっかけで、それ以来、ライフイベントが変化しても成長意欲のある人にはキャリアアップの機会を与えるようにしています。現に、女性役員も活躍中です。

異口同音に「雰囲気がよい」、いろいろな働きがい

 同社ホームページの社員インタビュー欄では、社員が次のように社内雰囲気がよいことを異口同音に伝えています。「何といっても皆さんとても明るくて、仕事の上でも、あるいは飲み会の席でも誰もが気軽に話しかけてくれるので社員間のコミュニケーションは豊富です」(2019年入社、事務、女性)。明るい雰囲気は社員がストラクスでの労働に働きがいを感じていることの反映です。

 同社では若手の早い成長をめざしています。男女に関係なく、施工管理職の若い社員に積極的に現場を経験させながら、建築士や建築施工管理技士の資格を取ってもらうようにしています。施工管理は、顧客との打ち合わせ、施工方法の提案・相談、現場が円滑に進むように協力業者との打ち合わせ、設計図通りの施工、工程の進捗状況の確認、協力業者への指示というように、その仕事は、顧客の意向を踏まえつつも命令されたものではないため、自分が自分の活動の主人公という自律性を味わうことができます。この点は新築工事にも共通しますが、改修工事には新築にはない喜びもあるようです。

 「リノベーションならではのやりがいは、日々変化を間近で感じられることです。きれいになっていく姿を自分の目で見て、お客さまの笑顔・感謝の言葉もいただけることは最大の魅力と言えます」(2022年入社、施工管理・営業、女性)。

 リノベーションでは労働対象が従来のものから日々変化し、ついに構想していたものが現れます。顧客が身近にいる中での作業のため、その時の達成感は、顧客からの「よくやってくれた」との言葉で倍加されます。マンションや大きなビルの新築工事では、使う人からの直接の感謝は得られないでしょう。

 また、施工管理職は、先輩からのアドバイスなしにはできなかったことが、自分の判断でできるようになったというように目に見える成長を味わうこともできます。大体入社5年目あたりで自律的に仕事ができるようで、社員は成長のステージを自分で計画できます。このような早い成長はおそらく大企業ではありえないでしょう。

年収1000万円をめざす、環東京湾構想

 大企業の社員が高給を取っているのはしゃくに障ると言う山本社長は、以前から社員の平均年収1000万円をめざすと社の内外で公言してきました。その達成は可能だと断言します。ストラクスは働きがいという精神的報酬と同時に高い経済的報酬にも向かっています。同社は千葉県に本社を置き、神奈川県に別法人を置いていますが、現東京事業所の法人化や埼玉県に新法人を設置する構想も描いています。この環東京湾構想には、地元の行政関係の仕事を取りやすくするなどの目的もありますが、社員に社長になってもらうことも狙いです。山本社長は、社員が新たな成長ステージに立つことを目標にしてもらいたいと思っています。

会社概要

設立:1995年9月20日
事業内容:建築物の改修・新築工事に関わる施工管理
従業員数:54名
URL:https://www.stracks.co.jp/

「中小企業家しんぶん」 2024年 4月 15日号より