職場内のコミュニケーション-本音・本心で話す人は何割?

 新年度に入り、新入社員を迎えた会社も多いのではないでしょうか。新入社員にとって、仕事だけでなく職場内の人間関係やコミュニケーションがどうなっているのか気になるところでもあります。労使見解には「労使のコミュニケーションをよくすることは経営者の責任です」ともあり、職場内のコミュニケーションの実態はどうなっているか見てみます。

 (株)パーソル総合研究所が3月29日に、「職場の対話に関する定量調査」(全国の男女・正規雇用就業者(20-60歳)N=6,000)の結果を発表しました。

 職場での会話機会のうち本音で話せる割合(図1)は、上司との面談では、「全く本音で話していない」が41.6%、「2割未満」が9.6%で合計51.2%となっており、「8割以上」は9.6%にとどまっています。チーム内会議では、「全く本音で話していない」が43.0%、「2割未満」が9.1%で合計52.1%、「8割以上」は9.7%となりました。本音・本心で話していない割合は上司との面談、会議ともに過半数以上となっています。

 続いて職場内の本音で話せる相手を見てみます(図2)。職場内に「1人もいない」が50.8%と圧倒的に高くなっています。属性としては「同年代の同僚」が25.6%、性別・年齢は「同年代の同性」が43.6%となっています。同年代・同性以外とはなかなか本音では話せないということなのでしょうか。

 同調査では、本音でのコミュニケーションを遠ざける6つのリスクがあると分析されています。(1)組織に愛着がないと思われそうという「裏切者リスク」、(2)自分の評判が下がりそうという「低評価リスク」、(3)真剣に受け取ってもらえなさそうという「無関心リスク」、(4)意図しない範囲に広まりそうという「拡散リスク」、(5)自分の立場では言えないという「身分不相応リスク」、(6)相手との関係が悪くなりそうという「関係悪化リスク」の6つです。言われてみれば、思いつくようなリスクです。職場内でコミュニケーションをよくするためには、このようなリスクを低減する必要があります。

 一方で、本音・本心で話している層を見てみると、働く幸せを実感している割合、ワーク・エンゲージメント(仕事に対してのポジティブで充実した心理状態)、ジョブ・クラフティング(自分の仕事を主体的に捉え直し、仕事にやりがいを見いだすマネジメント手法)、個人パフォーマンスが高い傾向とのことです。本音・本心でのコミュニケーションは生きがい、働きがいにつながっていることがデータから見えます。社内のコミュニケーションの方針を経営指針で明らかにしてはいかがでしょうか。

(図1)職場での会話機会のうち本音で話せる割合
(図2)職場内の本音で話せる相手、本音を話せたと感じる会話内容

「中小企業家しんぶん」 2024年 4月 25日号より