24年の春闘で5%超えの賃上げ回答が出ていますが、実際に物価を超える賃上げになるかどうかを、昨年の結果から見てみます。
23年の春闘での賃上げ結果は以下の通り。連合による7月の最終集計では、平均賃金方式で回答を引き出した5,272組合の「定昇相当込み賃上げ計」は加重平均10,560円、賃上げ率3.58%(前年同期比1.51ポイント増)、うち300人未満の中小組合3,823組合は8,021円・3.23%(1.27ポイント増)となりました。また、経団連による2023年春季労使交渉の最終集計結果を見ると、大手企業の定期昇給とベアを合わせた賃上げ率は3.99%で、平均の賃上げは1万3,362円となっています。集計対象を資本金10億円以上かつ従業員1,000人以上の労働組合のある企業364社とした厚生労働省の2023年「民間主要企業春季賃上げ要求・妥結状況」では、賃上げ率は3.60%で平均妥結額は1万1,245円でした。
ところが、6月分の賃金を調査した厚生労働省の「令和5年賃金構造基本統計調査」によると、男女計の月額賃金は318,300円(前年比2.1%増)と29年ぶりの水準で賃上げ回答に準じて上がっていますが、これを規模別で見てみると驚く結果になっています。全年齢で見ると、1,000人以上の大企業では0.7%減の346,000円。対して、企業規模間の賃金格差はあるものの、100~999人の中企業で2.8%増の311,400円、10~99人の小企業で3.3%増の294,000円となっており、物価に賃金が追いつかない原因が大企業だったことが明白です。
年齢別に見ると一層鮮明で、大企業は29歳以下の若い層の賃金は引き上げ、35歳から54歳までの金銭的負担が大きくなる層の賃金を引き下げている一方で、中企業・小企業ともに全年齢で引き上げています。(表参照)
東京商工リサーチの2023年度「賃上げに関するアンケート」調査によると、企業の84.8%が賃上げを実施。資本金1億円以上の大企業の89.9%、中小企業の84.2%が実施していることから、今年も企業の8割以上が賃上げを実施すると見ていいでしょう。
中小企業は2.8~3.3%増(23年6月分の賃金)でほぼ春闘の回答通りでしたが、大企業は3.60~3.99%増の回答にもかかわらず6月分の賃金はマイナス0.7%なので、4.5ポイントほど低く、5%の賃上げを実施しても、物価に追いつかない予測になります。ただし初任給は別で、日経新聞を見ると、23年6月の記事では大卒初任給が25万円以上の大企業が10.9%、24年4月8日の記事では36.1%にまで増加しており、おそらく4割を超えると思われます。
「中小企業家しんぶん」 2024年 5月 25日号より