4~6月期の財務省の法人企業統計によると、全産業(金融・保険業を除く)での売上高は伸び、経常利益も前年比13.2%増の35兆7,680億円、64半期連続のプラスと4~6月期としては過去最高額になりました。4~6月期は今年の賃上げを反映しているので、前年と比較した従業員給与を規模別に見れば、資本金1億円未満の中小企業で7.3%増となっています(図)。また、従業員数4.5%増に対し、人件費は6%台の増加と賃上げを大きく反映していることが分かります。1~10億円未満の中堅企業も従業員給与が6.0%増となっています。ところが10億円以上の大企業の従業員給与はわずか1.7%増です。今年経団連が発表した春闘の大企業の賃上げ5.58%はどこに反映されているのでしょうか。従業員数が0.8%減少しているのですから、その分の人件費を従業員給与に回し、6%程度は従業員給与を上げるべきですが、実際は1.7%増に過ぎず、実態として春闘の賃上げ対象の人は少ないということになります。
いずれにしても大企業は、売上高4.2%増に対して経常利益は15.3%も増やしている一方で、人件費に関しては労働分配率が37.6%と過去最低を記録し、従業員給与は売上高の5.7%となっています。中小企業は売上高1.8%増、経常利益は6.3%増ですが、売上高の17%を人件費に充て、労働分配率も70.3%と精いっぱい従業員に分配しています。従業員給与の増加率は売上高や経常利益より多く、売上高の11.7%、経常利益の259%の金額を給与として支払っています。(労働分配率の数値は日本経済新聞2024年9月3日参照)
6月に行った中同協のアンケートでは81%の企業が賃上げを実施したという結果が出ており、6月の日本商工会議所の調査では、24年度に「賃上げを実施予定」とする企業のうち「防衛的な賃上げ」は59.1%と中小企業は原資がなくても賃金を引き上げています。
今後ますます人手不足が進行するので、毎年このような賃上げを続けられるようにするには、売り上げと付加価値の両方を上げ、1品でもいいので高く売れるものを新しくつくっていくことが必要になります。
「中小企業家しんぶん」 2024年 9月 25日号より