日本中小企業学会第44回全国大会が9月14~15日、専修大学神田キャンパスにて行われました。統一論題「地場産業における中小企業の挑戦」が5本、自由論題の16本がそれぞれ報告されました。
自由論題では「中小企業経営者の自己効力感が探索活動に与える影響」、「廃業を救うための第三者承継の分析」、「継続的に成長する中堅企業の特徴に関する一考察」、「コミュニティ活動が支えた地場産業の再生と地域企業の自立」など、副業・起業、経営者や従業員の幸福感や意欲の影響、組織開発、中小企業の成長・発展など、多岐にわたるテーマの研究成果が発表されました。
1日目午後の国際交流セッションでは、台湾の地域産業におけるイノベーションをテーマに台湾のハイテク産業を支える研究機関、工業技術研究院(ITRI)の取り組みや台湾の産業構造や政策的背景が紹介されました。
2日目の統一論題では地場産業における市場創造志向の企業実践事例として、福岡・久留米絣(がすり)を扱う下川織物の下川強臓氏がSNSなどを活用した来訪型マーケティングの取り組みを報告しました。また、産地スクールや地元産業ネットワークなどの地域資源を生かした創造的クラフトの事例として岐阜・多治見市陶磁器意匠研究所の駒井正人氏が人材育成事業を紹介、地域内外の多様な背景を持つ参画者との関係構築による自立共生の取り組みを報告しました。
安価な外国製品との競争激化、消費者の生活様式の変化、人口減少による国内市場の縮小や後継者不足など地場産業をはじめ多くの中小企業を取り巻く環境がますます厳しくなっている中で、新たな市場開拓や新製品開発、人材育成や組織マネジメントへの注力といった幅広い挑戦が求められています。
大きな変化のうねりにあって、従来当然とされていた条件そのものが変化し、考え方、進め方そのものが問われる局面が増えていますが、それは同時に成長、発展の可能性の広がりと捉えることができます。中小企業研究においても変革の契機となる多様な視点や切り口の開拓の重要性を再確認した大会となりました。
「中小企業家しんぶん」 2024年 10月 5日号より