8月2日、DOR150号記念公開シンポジウムが開催されました(8月15日号既報)。本号では、愛媛大学社会共創学部教授・曽我亘由氏の報告要旨を紹介します。
愛媛同友会景況調査(EDOR)の特徴
愛媛大学と愛媛同友会は2017年に連携協定を結び、産学連携を通して地域活性化、人材育成、教育振興などに共同で取り組んでいますが、今回報告する景況調査(EDOR)は、協定を結ぶ10年以上前の2003年から愛媛大学と愛媛同友会が共同で実施している調査です。連携協定を結ぶまでは愛媛大学の研究開発支援経費などでその調査を継続してきました。愛媛県内の企業を対象とした景況調査は、日銀短観の愛媛県集計分、財務省松山財務事務所が実施する『愛媛県内経済概況』、県内の金融機関が実施する景況調査などが存在していますが、小規模の企業を調査対象に含め、年間4回実施する調査はなく、既存の調査と補完的な関係にあります。
EDORは2003年第24半期(4―6月期)から調査を開始し、2024年4―6月期調査で85回を迎えます。調査項目は基本調査(売上、採算、採算水準、業況判断、経営上の問題点、力点)と特別調査から構成されており、中同協実施の景況調査の項目に準じた調査票になっています。調査には、会員企業のおおよそ30%にあたる120社程度が回答しています。調査結果は政策委員会を中心に構成される判定会議の場で共有され、現場の肌感覚と合わせて総合的な景況判断を議論します。
直近の景況感
直近の第85回調査(2024年4―6月期)では、売上高DIについては、前年同期比で18・4から11・5へと6・9ポイント悪化しました。採算(経常利益)DIについても、前年同期比で7・0から△0・9へと7・9ポイント悪化しました。採算水準DI(黒字赤字DI)は33・0となり、前回の33・0と同様の結果でした。自社業況判断DIについては、前年同期比で7・9から7・1へと0・8ポイント悪化し、前回調査からほぼ横ばいの結果となりました。(図)
経営上の問題点については、「仕入単価の上昇」を挙げる企業の割合が最も高く49・1%(36社)、次いで「従業員の不足」を挙げる企業の割合が38・2%(42社)、「人件費の増加」を挙げる企業の割合は32・7%(36社)となり、昨今の経営上の問題点の上位を占めています。
特別調査はその期の経済環境に合わせた調査であり、これまで経営指針の作成状況、設備投資の状況、雇用情勢、増税の影響、新型コロナウイルス感染拡大の影響、インボイス制度に関する調査、仕入価格の高騰に関する調査など実施しています。
景況調査の意義と可能性
会員企業は、EDORに回答することで、その期の経営実績を客観的に振り返り、経営活動の自己点検の契機にしています。合わせて判定会議は、景気動向への鋭敏な感覚を磨き、景気動向をふまえ総合的な判断ができるような場となっています。また、調査結果を報告することで、企業家団体としての情報発信の責務を果たす役割も担っており、これらはいずれも同友会が掲げている3つの目的にリンクしています。
一方、大学にとっては、県内経済の基礎的データの収集・分析、産学連携の調査を通した地域経済の発展への貢献、地元企業の理解の促進、インターンシップの受け入れ、実践教育への協力などの意義が挙げられ、地域に根ざした愛媛大学の責任を果たすことができると考えられます。
「中小企業家しんぶん」 2024年 10月 15日号より