【あっこんな会社あったんだ!】市場創造 
顧客のニーズに応えながら企業発展 
(株)カクマル 代表取締役社長 曽根田 馨氏(福岡)

 企画「あっ!こんな会社あったんだ」では、企業経営に関わるさまざまな専門課題に取り組む企業事例を紹介しています。今回は「市場創造」をテーマに、曽根田馨氏((株)カクマル代表取締役社長、福岡同友会会員)の実践を紹介します。

 (株)カクマルは、電信柱用の根架せ丸太や工事用角材を取り扱う会社として1960年に曽根田氏の父が創業しました。創業64年の現在では角材や丸太だけでなく木杭、コンクリート境界標、金属製境界標など測量用材全般の製造・販売を行っています。

端材の活用

 曽根田氏は1974年に高校卒業の翌日に入社。最初の仕事は社内の清掃でした。「1日8時間の労働がとても長く感じた」と振り返りますが、会社を客観的に観察する機会となり、やがて社内の無理・無駄な部分が見えてきました。

 そのうちの1つが、社内の隅に積まれた角材の端材です。端材は薪として使用されていましたが、高度成長期で建設関連資材の需要が増加していたことから、「木杭」に加工して製品化。そこからプラスチックやコンクリート製の境界標など測量用材を販売し始めました。その後、顧客から「こんなものは作れないか?」との相談が増え、その場で油粘土を成形して製品のイメージを共有し、すぐにサンプルを作成して翌日に納品するなど迅速に対応していきます。その後、社内ではNC自動彫刻機を導入して量産体制も整備していきました。

 その後も顧客の要望に応えながら続々と新商品を開発し、日本で初となる測量用材専門メーカーへと成長していきます。販売先は日本全国に広がり、創業から60年以上が経った現在、同社の製品を扱う販売店は日本全国で144カ所までに及びます。

測量用材専門メーカー

 近年では、測量機械の小型化が進むと同時に、ドローンを使用することが増えています。レーザースキャナを対空標識に当てることで距離や面積を測定する仕組みで、同社でも1年の開発期間を経てドローン用の対空標識を製作しました。また、各自治体や土地の境界に設置する金属製境界標は月に約6万枚を出荷し、杭を埋設するための下穴掘り用エンジンドリルや杭を入れて運ぶザックなど取り扱う製品は多岐にわたります。

 木杭は1週間で約1万本、年間で約50万本を販売しています。杭は、災害時に土砂などで家屋や建物が流された際に、被害の範囲を測定するために活用され、正確な場所に設置する必要があります。アルミや真ちゅうの金属製境界標は長期間使用できる一方で、木は腐るため2~3年ごとに入れ替え作業が行われて常に正確な位置に設置され、特に田畑や農村部などを中心に木の杭が活用されています。

 今年発生した能登半島地震の際にも同社の製品が活躍し、数万本単位の在庫を持ち、短期での納品が可能だからこそ必要な資材を迅速に被災地に届けることができました。

働きやすい職場環境づくり

 曽根田氏は1992年の社長就任と同時に同友会に入会し、管理会計や決算書の見方などを学ぶとともに、経営指針セミナーに参加して経営指針書を作成しました。「特に社員との関わり方の学びが大きかった」と話し、その後『営業力強化マニュアル~全社員オール営業の実践』という冊子を作成して、社員の営業力強化と学びの環境を整備しました。

 また、就業時間内の生産性向上の取り組みによって残業時間削減につながり、特に残業の多かった製造部門も機械化によって定時退社を可能にしています。同時に、年間経営計画に休日を入れ込むことで休日数の増加と計画的な有給休暇取得にもつなげています。社員数34名のうち女性社員は10名で、営業部門・製造部門ともに女性が働ける社内環境づくりにも力を入れています。

 経営理念である「感動・感謝のあふれる心」を大切にしながら、測量用材を通して日本と地域を支え続けます。

会社概要

設立:1960年
社員数:34名
事業内容:測量用材の製造、卸、小売・販売
URL:https://kakumaru.jp/wp/

「中小企業家しんぶん」 2024年 10月 15日号より