学び合い活動と地域に広げる運動を展開し、早期に5万名の達成を 
特集:2024組織強化・会員増強全国交流会 オンライン

8月20日、オンラインにて2024組織強化・会員増強全国交流会が開催され、46同友会と中同協から490名が参加しました。問題提起と3つの実践報告の内容を紹介します。

【問題提起】
全国の組織強化・会員増強の課題と今後の仲間づくり
5万名推進・組織強化本部長/中同協幹事長 中山 英敬氏

2021年はコロナ禍の影響を受けて会員数が大幅に減少しましたが、2022年10月以降にV字回復し、今年の全国の期首会員数は4万7499名と4年ぶりに過去最高会勢を達成することができました。新年度から現在までの状況については、4カ月間で期首から14名純増という結果になっています。全体としては見事な回復と評価できますが、純増を達成した同友会は26にとどまっています。全国の入会者数は2549名で、昨年度と比較するとわずかに減少しており、退会者数は4189名と増加傾向にあります。

全国会員数の推移

支部・地区単位で見ると、229の支部・地区で純増となり、全体の45・8%が1名以上の純増を達成しました。また、10名以上の増強を果たした支部は39ありました。市区町村別の対企業組織率が10%以上の市町村は78に達し、前回調査から2増加しています。

例会づくりでは、全国47同友会の支部・地区で開催された例会数は6237回に達し、昨年と比べて増加しました。入会対象者の参加者数は平均3・3人で、のべ約2万人の入会対象者が参加したことになり、素晴らしい成果だと思います。また、例会の開催形式はリアルのみの開催が増加しています。実際に会って学び合うという同友会活動の本来の姿や、仲間づくりの重要性が再認識され、対面で同友会のよさを伝える意義が改めて認識されています。

対外関係については、「行政の審議会や会議のメンバーを推薦している」が35と最も多く、金融機関や大学・研究機関との懇談や連携も増加傾向にあります。一方で、「政策要望提言をしている」は16にとどまり、今後、要望提言活動を一層進めていく必要があることが分かりました。

8月の対企業組織率を確認すると、母数が変更されていることが分かります。全国の企業数は経済センサスから引用していますが、カウント方法が変更され、登録データに基づいた数値に改められました。これに伴い、中同協も新しい数値に合わせる形とし、全国の対企業組織率は前回の2・91%から2・67%となりました。まずは全国平均3%を達成し、5%をめざすためにも、今後さらに取り組みを強化する必要があります。

また、純増を達成した同友会は青森が3年連続、秋田が創立以来18年連続の純増を達成しています。さらに、山形が2年連続、千葉が3年連続、神奈川が2年連続、長野が5年連続で最高会勢を実現しました。愛知も最高会勢を達成しており、兵庫は17年連続、島根は創立以来22年連続で純増を果たしています。広島も2年連続で過去最高を更新し、会員数が3000名を突破しました。また、徳島は20年連続の純増、宮崎も最高会勢を実現しました。

全体的に見ると、会員数は順調に回復してきていますが、退会数が増加している点が課題です。特に、会員数が伸び悩んでいる同友会では、具体的にどのような課題があるのかを把握する必要があります。倒産する企業が増えている現状では、退会理由を丁寧に把握し、早めに経営上の課題を解決するための手を打つことが重要です。

【実践報告】
福岡同友会・福友愛支部 同友会を知る会で280カ月連続入会
2023年度仲間づくりリーダー 逸見 裕子氏((株)ヘンミ企画 代表取締役社長)

福友愛支部は、2021年度に福友支部分割により誕生した県下最大支部です。現在280カ月連続で入会者を迎えており、23年度は目標を上回る80名入会に至りました。その背景にある想(おも)いや取り組みを紹介します。

2つの成果の要因

1つ目は完成度が高い「同友会を知る会」のひな型と増強文化という土台。

2つ目は、今期の自分たちなりの勝ち筋を(1)理念としてのスローガンを掲げ言い続けること、(2)1点集中の絞り込み(知る会の完成度を高め続ける)、(3)毎月のブラッシュアップ(目的と言動の一致感上昇)の掛け合わせにより実践したことです。

毎月開催の「知る会」

学び多く魅力的な支部と自負していますが、常に新たな仲間を迎える増強文化が支部の根幹です。その中心が毎月の知る会。知る会は、仲間づくりプロジェクトと6つのブロックが連携して持ち回りで開催しています。

主な内容は活動紹介、会歴3年未満の会員と3年以上の会員による「同友会と私」のテーマでの報告、グループ討論です。終了後は懇親会を実施。グループ討論・懇親会ではゲストの課題や悩みを聞くことを重点とします。翌日には担当お礼や入会フォローをスタートし、翌々日には反省会を行います。会の運営には、福友支部時代から引き継いでいる資料を活用します。

23年度の取り組み

23年度は「カムカムエブリ経営者! ご縁に全力投球!」をスローガン、「全員で最高の乾杯をする!」をゴールに設定。そして、OODA(ウーダ)ループの下取り組みました。OODAループとは、状況把握(Observe)、仮説立案(Orient)、手段選択(Decide)、実行(Act)の4段階からなり、営業など不確実な状況下で成果を出すのに適したフレームです。

私たちはこの中で「知る会に1点集中することが最重要」という仮説を立て、知る会の精度を上げるための取り組みを行いました。Zoomでのプレ報告と意義確認MTG・意識共有朝礼を実施。ブロック役員を含めた反省会、クラウドでの確認事項一元管理、活動紹介スクリプトの改善などを実施。課題発見と対策改善、実行というループを年度内12回、回しました。

想(おも)いを受け継いで

私の仲間づくりリーダー就任は入会3年目。そのころ、多くの役員さんに「前のリーダーたちがすごすぎたよね。逸見さんには荷が重いと思うし、増強は生半可な気持ちではできないと思うけど頑張って」など、プレッシャーに感じているだろうと心配をかけていた様子です。任命者の副支部長は私が乗り気でないと分かっていたと思います。ですが私のたくましさや決めたことを諦めない気質、経営者として人を雇用していく中で最高の学びになると考えての任命だったようです。

リーダーに決まった直後は勝ち筋が見えず悩みました。先輩リーダー2人に話を聞くと、わいわい活動できる空気づくりタイプや強烈なリーダーシップでの実行タイプで自分との違いを痛感します。一方、増強の意義について支部長に質問する中で『組織強化・会員増強の手引き』を紹介され、大きなよりどころになりました。

分からないことや悩みは昼夜問わず正副支部長に相談し「私なりのやり方でやればいい」と教えられ見守ってもらいました。年度終盤には副支部長・メンバーと「やり切って最高の乾杯を」「記録と記憶に残る増強に!」と声がけし合いました。結果、80名という入会を達成。

多くの人に支えられ、想(おも)いの継承と共有、そして仕組み化で増強に取り組んだ学び多い1年でした。

【実践報告】
北海道同友会・くしろ支部 地域に広める仲間づくり
支部長 曽我部 元親氏(北泉開発(株) 代表取締役)

くしろ支部の沿革、特徴

くしろ支部は、北海道東部に位置する青森県とほぼ同じ面積の広大な支部で、支部内に7つの地区会があります。1975年に「釧路支部」が設立され、その後独立する形で「南しれとこ支部」「根室支部」がそれぞれ誕生し、2016年に3支部を再統合して新生「くしろ支部」が設立されました。

支部を統合した理由は、人口減少に屈しない企業・地域づくりのために広域連携が必要であること、将来的な「道東経済圏」を見据えた動きが必要であること、釧根農業経営部会が支部を超えて立ち上がったことがあります。条例推進運動を活発化させることも狙いの1つでした。

会員数の推移と増強の取り組み

くしろ支部 会員数推移

コロナ禍で大打撃を受けて会員数は大きく減少しましたが、V字回復して現在の会員数は728名(24年7月末現在)、純増数は全国4位になっています。あらかじめ訪問先を絞って事務局、組織委員会などを中心に企業訪問してきました。また、新入会員対象の昼食会を1名ずつ開催し、既存会員を紹介するとともに、どのような思いで入会し、どのような課題を抱えているかを知る機会にしています。

入会の動機は大きく3つあります。1つは経営指針づくりです。くしろ支部では「くすり塾」、根室地区会では「かなめ塾」という名称で経営指針の勉強会・研究会を開催しています。2つ目が社員教育です。社員教育や幹部社員育成などに悩む経営者は多く、新入社員研修や入社3年未満講座、営業社員セミナー、同友会くしろ幹部大学など、活発な研修プログラムが魅力的だと言ってもらえています。3つ目が共同求人です。自社だけでは思うような採用ができず、同友会の活動に参加したいという方が増えています。商工会議所などの連携機関と合同企業説明会を共催しているほか、UIJターン個別相談会も実施。地区ごとに高校教員との懇談会も開催して、インターンシップ受け入れ企業の情報提供を行うなど連携を図っています。合同入社式や採用勉強会も開催しています。

釧路管内には高校が14校ありますが、卒業後に就職を希望する学生は400名しかいません。そのうち地元就職希望者は291名です。一方で採用希望企業は857社あり、高卒者の採用はかなり難しくなっています。近年は、社員数100名を超える比較的規模の大きい企業の入会が目立っており、そうした企業に学生が集中する可能性があるのが懸念材料でもあります。

会員増強の意義・今後の展望と地域に広める仲間づくり

支部のチャーターメンバーは「同友会の学びを広げたい」「一緒に学ぶ仲間を増やしたい」との思いで増強活動に取り組み、会員数が増えてくると運動を広げる気概が高まって、条例運動も活発になりました。

現在のキーワードは「連携」です。採用が難しいこの地域で事業を続けるために、同じ志を持つ経営者を増やして連携を深めたいと思っています。支部の組織率は15%、700名を超える会員がおりますので、それぞれのつながりを生かして、支部全体で会員拡大に取り組んでいきたいと思っています。

【実践報告】
兵庫同友会・中はりま支部 会員増強と企業づくりは不離一体
―支部活性化表を活用した組織づくり
支部長 衣笠 美幸氏((株)From ViVi 代表取締役)

支部・ブロックの活動の指標化

兵庫同友会は、2012年度から支部・ブロックの活動の見える化(活動の指標化)の取り組みとして活性化表彰を行っています。活性化指数は(1)入会率+(2)休退会率+(3)参加率で求められます。活性化指数上位3支部と上位5ブロックが、上期は秋の全兵庫経営研究集会(オール兵庫)で、下期と年間は春の定時総会で表彰されます。

(3)参加率は、ブロック会・例会・オール兵庫・総会などに参加した人数によって数値が決まるため、日々の積み重ねが大事です。後から急に上げようと思っても平均値なので数値は上がりません。支部長やブロック長を中心に毎回どれだけメンバーを巻き込んでいっているかが、参加率にはっきり表れます。参加率をコツコツ積み上げながら、入会のご案内をし、退会を防ぐ取り組みをしたブロックが最終的に上位に上がってきます。大体300ポイントをめざすと、年間でトップに手が届く位置につけます。

誤解のないようにしなければならないのは、数値目標はあくまで目安です。目的と目標を取り違えると、数字を追いかけることが目的になってしまいます。目的を定めるにあたって、私たちがよく参考にしているのは『同友会運動の発展のために』です。役員研修会で藤岡義己代表理事(兵庫)が、「これを自社に置き換えて読んでほしい。こんな会社ができたらめちゃくちゃ強いぞ」とおっしゃっていて、私も本当にその通りだと思っています。

同友会の学びを自社に落とし込む

会員増強の取り組みを自社に置き換えて考えてみます。私はネットカフェやカラオケボックスの経営をしており、店長と副店長には組単価や客単価といった数字の分析をしてもらっています。昨対比の数字の変化を見て、なぜそうなったのかをそれぞれ考え、店長会議で意見を出し合います。これは例会のバズセッション(グループ討論)からヒントを得ています。

また、会議では「企業変革支援プログラム」など同友会のツールを使った学びの時間を設け、同友会の考え方を会社の風土づくりに落とし込んでいます。

2年ほど前に、大雪で国道が8時間止まったことがありました。オープンして間もないベーカリーにお客さんが入って来られない中、エリアマネジャーが立ち往生している方々にパンとコーヒーを配りました。私の指示でやったわけではありません。日頃から「地域に対してどんな貢献ができるか」を考える会議をやっているからこその対応だったと思います。会社が強くなってきたのかなと思い、感動しました。

私の紹介で入会されている方もたくさんいらっしゃいますが、私はただ自分の経験したことを話しているだけです。同友会のおかげでつぶれかけの会社が回復し、店舗も増え強い会社になったと話すと、周りの人たちがどうやって経営しているのかを聞いてくれるようになりました。同友会での学びを社業で実践して、それを周りに伝えていくことを繰り返すのが、一番の会員拡大につながるのではないかと考えています。

「中小企業家しんぶん」 2024年 10月 15日号より