同友エコ受賞企業(外部審査委員賞) 
「電気を使わない自動ドア」で環境問題だけでなく、経費削減や災害対策にも貢献 
ピーコン・リアルエステイト(株) 代表取締役 金丸 正徳氏(愛知)

 同友エコ2023―2024受賞企業を紹介する本連載。第4回となる今回は、外部審査委員賞を受賞したピーコン・リアルエステイト(株)(愛知同友会会員)の取り組みを紹介します。

緑をなくす仕事なのか

 ピーコン・リアルエステイト(株)は、「企画・提案・創造そして共尊共栄」をモットーに、開発行為をはじめとする企業誘致支援、都市環境施設の企画・コンサルタント、不動産の相続対策・有効活用立案などに取り組む企業です。

 金丸正徳氏は同友会歴こそ19年ですが、起業前にも会員企業で役員を務め、同友会大学などに参加して学ぶなど、同友会との縁は30年以上になります。

 住宅や商業施設、店舗、工場、倉庫・物流施設などの開発に携わる中で、元は山林や農地だった場所に約5000平米から時には3万平米を超える大型施設を建設するという、許認可を取る業務は「仕事とはいえ、緑をなくし、自然破壊に近い行為を同時にしている、という意識があった」と金丸氏は言います。

 そんな中、ある方からの紹介で「電気を使わない自動ドア」の存在を知ります。この「電気を使わない自動ドア」は、人が扉の前に立つことで、その人の体重を利用して、てこの原理で扉が開閉する仕組みです。金丸氏はさっそく同友会の仲間と一緒に研修を受け、東海エリアの総代理店を始めます。

環境配慮とコスト削減の一石二鳥

 この自動ドアは、従来の電動式の自動ドアと比較すると導入コストは約1・5倍ですが、維持管理費や電気代が不要でメンテナンスも安価にできます。また、電動式の自動ドアは約10年ごとに取り替えるケースがありますが、これは取り替えも不要です。自動ドアはあくまで建物の付属品であり、建物は建ててから数十年間も使用するため、20年、30年という長い目で見れば、トータルコストでは大きな違いがあります。物件にもよりますが、1つの建物の中に複数の自動ドアがある建物もあり、50年で比較すると数億円のコスト削減につながる試算もあります。今は電気代も上がっているため、もっと差が出ていると思われます。

多彩なメリットを武器に展開

 もう1つの追い風は今年4月に施行された「障害者差別解消法」です。これにより、障害者への合理的配慮の提供が義務化されたため、自動ドアに取り替える施設が増えています。

 それ以外にも、手開きの扉は強風で開いたり、電動式の自動ドアは前を人が通ると誤作動で開いてしまったりすることがありましたが、この自動ドアは扉の前に人が立つことで開く仕組みなので、人の出入り以外で扉が開くことがなくなり、オフィスや工場などでは労働環境の改善につながりました。また、人が扉の前に立っている限りは扉が閉じることはなく、挟み込みによる事故も減らせます。災害時に停電で扉が開かなくなって閉じ込められることもなく、大雨が降っても漏電の心配はありません。その意味でも「多方面から好評をいただいている」とのことです。

 電動式自動ドアを1年運用すると、CO2を227キログラム(植樹換算で32・5本分)排出する、という試算があります。自動ドアが10カ所設置されている建物では、10年で立木3250本分に相当するCO2を削減できます。今、SDGsやDXが言われている時代に、こういったことに取り組んでいる企業であるかどうかが、投資家などのステークホルダーからの高評価につながる利点も期待できる、そういう時代になってきています。

 電気自動車はそもそも充電のための電気を発電する際にCO2を排出し、太陽光発電も使用期間が過ぎたパネルは廃棄物になります。そういう視点で見ても、この「電気を使わない自動ドア」が「これからの時代に必要なカーボンニュートラルの商品」として、もっともっと普及、浸透することをめざします。

会社概要

設立:1996年9月
社員数:18名(うち契約社員2名)
事業内容:不動産コンサルタント・企業誘致支援・不動産の仲介、管理、分譲
URL:https://www.p-com.co.jp/

「中小企業家しんぶん」 2024年 10月 15日号より