9月19~20日、第52回青年経営者全国交流会(略称:青全交)が宮崎で開催され、47同友会と中同協から1974名が参加しました(うちオンライン参加315名、10月5日号既報)。開催地あいさつや4つの分科会報告、まとめなどを紹介します。
開催地あいさつ
宮崎同友会 代表理事 宮島 孝美氏
開催県を代表して一言ごあいさつ申し上げます。
まずは今年1月に発生した能登半島地震、ならびに先の台風10号による集中豪雨の災害などで、全国各地で被災された皆さまに心よりお見舞い申し上げます。宮崎も8月に起きた震度6弱の地震、台風10号に伴う竜巻とみられる突風による家屋の崩壊など大変な被害が生じています。そのような中、ここに第52回青年経営者全国交流会を開催できましたことに心より感謝申し上げます。
「集え!変革者~日本のひなたから照らす未来」をメインテーマに掲げ、宮崎同友会では約2年間実行委員会を中心に準備してまいりました。宮崎同友会は5年前に青年部会を創立し、5周年の記念にこの青全交を誘致しました。全国各地から1694名の皆さま、そして宮崎同友会277名、あわせて1971名のご登録をいただきました。本大会を準備することは、私たちは宮崎の魅力、地域、地方の課題を見つめ直す機会となりました。重ねて心より感謝申し上げます。
現在、宮崎同友会は過去最高会勢の470名です。会員全員で宮崎の魅力のさらなる掘り起こしと直面する課題へ正面から対峙していく覚悟をお誓い申し上げます。今大会に携わっていただきました皆さま1人1人のこれからのご活躍とご健勝をご祈念申し上げまして、お礼のごあいさつとさせていただきます。
分科会座長報告
第1分科会(中同協)
役得とは?~役に挑んで見えた成長と変化~
われわれ青年経営者で次代に誇れる豊かな世界を創ろう!
パネリスト
(有)テヅカ精機 代表取締役…手塚 良太氏(長野同友会、中同協青年部連絡会代表)
(株)KOTOYA 代表取締役…豊田 泰隆氏(大阪同友会、中同協青年部連絡会副代表)
(株)ニシカン 代表取締役…岸本 拓也氏(広島同友会、中同協青年部連絡会副代表)
コーディネーター・座長
有希化学(株) 代表取締役…本間 英樹氏(新潟同友会増強委員長、中同協青年部連絡会副代表)
第1分科会は「役得」というテーマでパネルディスカッションを行いました。
本分科会は「役を受けて本当に成長できるのか」「お金や時間をかけて役を受ける意味があるのか」と疑問に感じている人に響く分科会にしたいと考えました。
3人のパネリストの実践や成長について報告したことで役得はあると伝えられたと考えています。それとともに、パネリストもみな最初からやる気に満ちていたわけではなく人任せの姿勢からスタートして成長してきたという点も共有しました。
分科会のまとめは3つです。第1に、経営者の姿勢が問われているということ。どういうふうに役得に向き合うかという姿勢が問われています。第2に、それを踏まえて同友会理念の3つの目的のひとつであるよい経営者をめざすことこそ、われわれ若手経営者が集中すべきポイントだということ。第3に、われわれには全国に仲間がいるということ。うまくいかないとき、1人では心が折れそうなとき、「一緒に頑張ろう」と切磋琢磨し合える仲間がいます。以上の3点を確認できた分科会でした。
第3分科会(石川)
廃業寸前の家業と自分自身の変革
~売上が10倍になった6年とこれから
報告者
(有)音地自動車商会 代表取締役…音地 利亮氏(石川同友会青年部会副部会長)
座長
(株)丸一観光 専務取締役…木下 恒喜氏(石川同友会常任理事・能登支部長/青年部会渉外チーム チームリーダー)
本分科会で音地氏は「変革の種は外にある」と報告しました。外とは自分の知らない世界、種とは出会いとそこから得られる経験のことであり、種を育てるのは自分次第です。また、変化は自然に起こる事象で、変革は自ら起こすものという違いがあるため、経営者は自ら変革を起こしていくのだという報告でした。報告では出会いや経験という種を育てていった結果、理念やビジョンに立ち返ったということが報告されました。
青全交に参加された皆さんも種が見つかったのではないかと思います。その種を持ち帰り、水や肥料を与えて育てていくことが大切です。今日得たものを持ち帰るだけではなく、自分たちの成長のために一歩踏み出していきましょう。
第15分科会(福岡)
次代に紡ぐ街づくり・人づくり
~街の課題は自社の課題 街の発展は自社の発展
報告者
大牟田ビンテージのまち(株) 代表取締役…冨山 博史氏(福岡同友会ソーシャルビジネス委員会副委員長)
座長
(株)イナバ 取締役…稲葉 雄大氏(福岡同友会青年経営者部会副代表)
本分科会では単に地域づくりというだけではなく「地域が輝く企業づくり」「地域と共に歩む」というテーマで、大牟田で街づくりをされている冨山氏が報告しました。
冨山氏が家業を継いだときは非常に大変な状況でした。しかし冨山氏は同友会での学びを経て、地域の困りごとニーズを社会課題や地域課題に事業化することに取り組みました。
中でも印象に残っているのは「関係人口」という言葉です。冨山氏は大牟田に定住する人や働く人だけではなく大牟田の街に関わりたい人を増やすことで地域を発展させようとしています。
能登半島地震など災害が続いていますが、大牟田でも数年前に豪雨による大きな被害がありました。「災害が起きた時こそ街の真価が問われる。ピンチの時に中小企業がどう立ち振る舞い街に貢献できるか」という点が印象的でした。
グループ討論では「地域と共に発展する企業」とはどのような企業かというテーマで話し合いました。1番多かった意見は「地域に愛され、地域を愛する企業」という意見でした。地域と共にあってこその中小企業だと感じました。
第19分科会(宮崎)
「労使見解」継承と創造
~人間尊重の経営で未来を切り拓く
報告者
エイベックス(株) 代表取締役会長…加藤 明彦氏(中同協副会長)
(有)ウメイチ 代表取締役…梅田 益生氏(岐阜同友会副代表理事)
ファシリテーター
(株)ビューフィールド 代表取締役…前島 崇志氏(宮崎同友会理事)
座長
うと社会保険労務士事務所 所長…宇都 陽一郎氏(宮崎同友会青年部会幹事長)
来年で発表から50年を迎える「労使見解」について、報告者のお2人の「労使見解」との出合いと経営での実践、今の時代に照らしてどうか、そして「労使見解」を実践するうえで自主・民主・連帯の精神をどのように取り入れてきたかを深めました。その後、故赤石義博元中同協会長がおっしゃっていた「生きざま」や「生きる、くらしを守る、人間らしく生きる」などの言葉も登場し、非常に学びの多い分科会になりました。
学びのポイントは3つです。まず経営者の経営姿勢が大切だということです。時代が変わり、社員のニーズも変わるかもしれませんが、社員の生死を左右する影響力を持っているのは経営者だという自覚を持ち、まず経営姿勢を確立し、生きざまを学び実践していくことを確認し合いました。
第2に、「労使見解」の実践には自主・民主・連帯の精神が欠かせないということです。違いを認め、あてにしあてにされる関係を持ち、社員が「会社にとってかけがえのない存在だ」と思うことで社員に主体性が生まれます。経営指針の全社的実践を繰り返し、時間をかけて社風をつくり、人が育つ環境をつくることが経営者の役割であることを確認し合いました。
第3に、われわれ青年経営者は歴史に学び、未来を切り拓いていく役割があるということです。これまで「労使見解」や21世紀型企業づくりなど、議論を経てさまざまなものが生み出されてきました。青年経営者は先輩経営者が構築したものから学び、考え、議論をして新たな未来をつくっていく責任があること自覚し合いました。
中同協 青年部連絡会代表あいさつ
中同協 青年部連絡会代表 手塚 良太氏
今回の青全交には47都道府県の同友会から多くの会員が参加し、同友会の「仲間づくり」が感じられる素晴らしい青全交でした。私は同友会の仲間づくりは本当に大事だと思っています。仲間を増やし、自社をよくして地域をつくり上げていくことは同友会にしかできないと強く感じています。宮崎同友会は、青全交を通じて過去最高会勢を迎えられました。
私は長野の木曽という人口1万人ほどの山奥で経営しています。10年前に同友会の支部をつくり、現在は会員が少しずつ増え、今では雇用が生まれてきています。人口減少が進む中、地域をつくっていくのは本当に同友会にしかできないと思います。全国ではまだまだ空白地域があり、同友会を知らない仲間もたくさんいると思います。同友会を真剣にやっていくと本当に会社はよくなるし、この先の地域づくりは必ずできると思います。まずは空白地域をなくし、仲間を増やしてさらに地域をよくしていけば、日本の未来は明るくなると感じています。
この2日間の学びを明日からの自社経営に実践することはもちろん、地域にも目を向け、周りの経営者の方を同友会にお誘いし、来年の香川青全交で1年間の実践の成果を議論していきたいと思います。
明日からの実践がこれからの未来をつくっていきます。ぜひ香川でまたお会いしましょう。
宮崎青全交のまとめ
中同協幹事長 中山 英敬氏
全体を通して共通した大きな課題を2点にまとめました。
1点目は、私たちにとって一番大事なことは企業づくりだということです。同友会は31年前、激変する環境に対応するために「21世紀型企業づくり」を提起しました。第1は、自社の存在意義をあらためて問い直すとともに、社会的使命感に燃えて事業活動を行い、国民と地域社会からの信頼や期待に高い水準で応えられる企業になることです。社会課題や地域課題を自社の課題として経営指針に位置づけ、全社的に取り組むことは、これからの時代に求められる企業づくりで一番大切なことです。第2はまさに、人を生かす経営の実践です。労使見解や自主・民主・連帯の精神など、同友会の理念を自社の企業風土として育てることです。今年度、中同協の方針に「21世紀型中小企業」を掲げています。なぜ31年前に掲げたスローガンを今もう一度掲げているのか、先人たちは激変する時代をどのように乗り越えてきたのかということも含め、同友会の歴史や理念をしっかり学び直してください。
2点目は、青年部連絡会が掲げている「2030ビジョン」の実現に向けて大きな課題がのしかかってきていることです。「われわれ青年経営者で次代に誇れる豊かな世界を創ろう!」と掲げています。実現のための大切な3本の柱の1つ目は、同友会の学びを体現することです。学びとは同友会の歴史と理念です。2030年に向けて体現者になろうとする意識になっているでしょうか。2つ目は、人と地域が輝く企業をつくることです。企業活動の中で地域と関わり、地域の課題を自社の課題に位置づけて実践することが重要です。3つ目は、本気・本音で関わる仲間を地域に増やし、世界とつながることです。
ここで皆さんに本気で考えてほしいことがあります。同友会は創立以来「中小企業は平和の中でこそ繁栄する」との基本理念に立ち、「日本経済の自主的・平和的な繁栄をめざす」と掲げて運動を推進してきました。戦争を経験した先人たちが、苦しみながら平和の大切さをつないでいこうという思いが脈々とつながれてきています。私たちが提起している中小企業憲章草案や政策要望・提言の中でも平和の問題に触れています。今はいつ有事が起こるかわからない状態であり、戦争と平和の問題は避けて通ることはできません。われわれ青年経営者で時代に誇れる豊かな世界をつくるために、1人1人が同友会活動を通して平和の主体者になりましょう。
学んで実践する経営者が地域のすみずみに広がることで地域は元気になり、日本は元気になります。若い力でまずは全国会勢5万名を突破し、8万名をめざしましょう。
「中小企業家しんぶん」 2024年 11月 5日号より