【特集】各地の経営研究集会・フォーラム 
同友会理念に基づく企業実践の成果を共有

10月から11月にかけて、多くの同友会で経営研究集会・フォーラムが開催されています。今回の特集では、青森・和歌山・広島・山口・徳島同友会の様子を紹介します。

障全交に向けてキックオフ!
第23回経営研究集会【青森】

10月10日に第23回となる経営研究集会を開催し、116名が参加しました。今回は1年後に控えた青森同友会17年ぶりの全国行事「第23回障害者問題全国交流会」のキックオフイベントとしても企画されました。

基調講演には、岡山同友会顧問で中同協障害者問題委員長の(株)マスカット薬局代表取締役の高橋正志氏を迎えました。「『人間尊重の経営』の実践こそ組織のイノベーション~ビジョンの実現から幸せな社会づくりへ~」と題して、故・赤石義博氏(元中同協会長)から学んだ「人を生かす経営」実践の意義や、自社の「薬を売るのではなく、健康を売る会社」としての実践の内容について学びました。

基調講演後には2つの分科会が用意され、第1分科会の(株)IOS代表取締役の中鉢貴省氏(宮城同友会副代表理事・宿泊業に特化したシステム導入支援業務など)による「経営指針で会社が変わった! 同友会の学びと実践」では、「いつ辞めてもいい」とまで思っていた、どん底の会社経営と、同友会と経営指針に出会ってからの意識変化と経営の軸を打ち立てて以降の取り組み、その後に襲ったコロナ禍での経営難とそこからの再起に奮闘する実践が報告されました。

第2分科会の(有)工藤板金工業専務取締役の市川恵子氏(青森・屋根板金工事業)による「100年企業になるために、欠かせないのは社員共育」では、創業者の「屋根があれば人は集まる」、その時々の社員からの言葉やでき事に突き動かされるように経営方針を軌道修正し、ついに全社一丸となった経営理念をつかみ取った事例や将来展望が報告されました。

分科会後には懇親会を催し、青森同友会最大の学習行事での学びを交流しました。懇親会では障全交正副実行委員長によるPRも行われ、2025年10月の開催に向けた気運の醸成と準備の加速が誓われました。

共に創る未来
第24回経営研究集会【和歌山】

10月4日、第24回経営研究集会が「共に創る未来」をテーマに和歌山市内で開催され、約90名が参加しました。

第1部は分科会。第1分科会では、和歌山大学の上野美咲准教授が「地方版エリアマネジメントの導入可能性~私たちの健康と幸福を育む取り組み~」と題して、地域活性化の取り組みについて報告しました。特に、高野山や湯浅町の事例を通じて、地域文化や産業、観光の創造的活動を促す組織体制について学びました。グループ討論では、地域ごとでメンバーを構成し、各地域の課題や可能性を共有し何ができるかを考える機会になりました。

第2分科会は「出会いが未来を切り拓く~それいけ!みんなの夢を守るため~」をテーマに和歌山同友会会員の西裕生氏(SCRUMきのくに(株)代表取締役)が報告。27歳で会社を設立後、温泉施設の運営を通じた経営者としての自覚や組織づくりなど、その時々の人との出会いから得た学びや気づきを基にした成長の過程を報告しました。

第2部の基調講演は松井健彰氏(松井エネルギーモータース(株)代表取締役・富山同友会)を迎え、「地域の声に耳を傾け成長し続ける~事業定義の見直しから地域づくりへ~」と題し行われました。

2013年の富山同友会政策委員会での中小企業振興基本条例制定運動に地元上市町がモデルとして選ばれ、松井氏は2014年に地域の現状と課題、未来を考える「ハッピー上市会」の発足に参加。企業だけでなく、行政や学校なども加わる会の活動を通じて地域に対し自社だからできること、すべきことを考えるきっかけとなり、「地域の声に耳を傾けそれに応えることで成長していく企業」と事業定義を見直しました。それに伴い福祉車両事業、ニューモビリティ事業などの新たな取り組みを全社一丸で行ったと報告しました。

最後に松井氏より「視点を少し変えてみて、地域のお役立ちのために自社だからできることは何なのかを考えてみてください」とメッセージがあり、参加者からも地域について考える重要性について感想が寄せられました。

人を生かす経営の総合実践で、企業づくり・未来づくり
2024年経営フォーラム【広島】

10月11日、広島同友会は「人を生かす経営の総合実践で、企業づくり・未来づくり~学びの実践で新たな時代のよりよい企業、よりよい地域へ~」をテーマに経営フォーラムを開催し、約550名が参加しました。今回で37回目を迎える経営フォーラムですが、今年6月に一般社団法人化してからは初の開催、完全リアルでは2019年度以来の開催となりました。

基調講演は「人を生かす経営の総合実践~自主・民主・連帯の精神を企業に生かそう」をテーマに中同協副会長の加藤明彦氏(エイベックス(株)代表取締役会長)が登壇しました。加藤会長からは「人を生かす経営は、経営者が社員を生かすための経営を行うことで、社員が生き生きと働ける環境をつくることを意味します。しかし、最終的な目標は人が生きる社会をつくることなのです」と報告がありました。

続いて行われた分科会は、基調講演を深める分科会や地域づくり、環境経営や事業継承などをテーマに9つの会場に分かれて行われました。福岡同友会の森慎吾氏((株)アール・ツーエス代表取締役)を報告者に迎えた分科会では、およそ50名の参加者が経営指針の成文化と実践について学びを深めました。参加者からは「10年ビジョンで社員と一緒の姿を語れるようになりたい」などの声が寄せられました。

日本被団協のノーベル平和賞受賞の一報を受けた直後に始まった懇親会では、松井一實・広島市長が来賓あいさつで登壇し、会場では拍手が起こりました。会員企業の物産展も会場に花を添えました。

総会・フォーラム実行委員長の山西健三氏(映クラ(株)代表取締役)は、「企業活動を通じて、社員、社員の家族、取引先、経営者自身、そして地域を幸せにする。5年先、10年先の広島経済の未来をよりよくしていくきっかけになるような経営フォーラムをつくっていきたい」と開催にあたっての意気込みを語っていました。

参加者の経営実践がよりよい企業、よりよい地域、広島の未来につながることを期待して今年の経営フォーラムは幕を閉じました。

今を飛び出せ!新たなステージへ
第27回経営者フォーラム【山口】

10月5日に第27回経営者フォーラムが岩国国際観光ホテルとオンラインの併用で開催され、134名が参加しました。開催にあたり実行委員会では、100万一心の精神で耐え忍んだコロナ禍後の変わる世界を、多様性を持って俯瞰(ふかん)し受け入れ、今まさに勇気を持って前へ進むときが来たという意味を込めて「今を飛び出せ! 新たなステージへ」という言葉を掲げました。

初めに、吉川日生代表理事((株)シーパーツ代表取締役相談役)の「山口同友会は設立30周年を迎えました。21世紀型企業を展望した中長期的な視点を持ち、企業経営と同友会運動の発展を成し遂げましょう」というあいさつをもって開会しました。

報告者の今津正彦氏((株)アイ・エム・シーユナイテッド代表取締役社長・広島同友会副代表理事)は、苦心惨憺(さんたん)の家業期から、全社一丸で「みんなの経営指針書」を作る現在に至るまでの同友会的変革、「情熱・勇気・継続」のサイクルと地域連携の大切さなどについて力強く語りました。吉村宏真座長((株)エージェントY代表取締役)は「同友会のさまざまなカリキュラムに血を通わせるのは、自身の経験に結びつけ、自分事にしていく姿勢です。自社を客観的に見つめ直し、経営者としてよりよい会社づくりを進めていきましょう」とまとめました。

さらに初めての試みとして、1つの報告に対し3つのテーマを設定した「テーブル分科会グループ討論」が行われました。1つ目に何のために経営をするのかという「責任と覚悟」、2つ目に成長戦略を描くために不可欠な自社分析と「経営計画」、そして3つ目に地域に必要とされるチームづくりと「人を生かす経営」について、参加者は自身・自社の経営課題から選択したテーマに沿って深め合い、実践的な学びを得ました。

最後に、中村隆治実行委員長((株)ルマン代表取締役社長)が「フォーラムに関わった全ての方々に心から感謝します。明日からの行動は口に出すことで変わっていけると信じています」と締めくくり、山口同友会の1年間の学びの集大成が幕を閉じました。

立ち上がれ!新しい風を起こすリーダーたち
第17回経営フォーラム【徳島】

10月11日、第17回経営フォーラム「中小企業が日本を変える~立ち上がれ!新しい風を起こすリーダーたち~」を開催し、四国ブロックや他県会員を含め255名が参加しました。

冒頭、藤村泰之実行委員長((株)日産サティオ徳島代表取締役社長)より、「徳島の課題、中小企業の可能性」をテーマに問題提起がありました。「徳島県の人口減少の要因にもなっている若者が転出していく理由は、やりたい仕事、やりがいのある仕事がないと感じていることです。今回の経営フォーラムで探求したいのは中小企業の可能性です。われわれ中小企業が変化を恐れず、企業変革を続けてぶれない経営で魅力ある企業づくりをしていくことで、日本を変えていけるのではないでしょうか」と提起しました。

続いて、3つの分科会で学びを深めました。第1分科会は「理念を叶える仕組みづくりの秘訣とは~中野流カルチャーカンパニーから学ぶ」と題し、中野愛一郎氏((株)イベント21代表取締役社長・奈良)、第2分科会は「挑戦~鉄で全てを勝ち取り、みんなで自分の人生を最幸にする~」と題し橋崎牧人氏(日新産業(株)代表取締役社長・兵庫)、第3分科会は「“こんな思いはさせない!”本当の働きやすさとは~創業×M&Aで会社を急成長させた女性経営者の想い~」と題し植村 亮子氏((株)UR/ヒューマンプランニング(株)代表取締役・香川)が報告しました。

その後の全体会では分科会報告者3名が登壇し、「中小企業の可能性~中小企業に日本を変える力はあるのか?」のテーマでパネルディスカッションを行いました。ここでは、人を生かす経営をどう実現し、中小企業の可能性をどのようにとらえるのか、企業の可能性を最大化するための経営者の役割について深めました。

社員の可能性を信じて経営者自身も全人格的な成長をしていく中で、人を生かす経営を軸にした経営理念を実践していくことで、中小企業が地域、そして日本も変えていける可能性を感じられたフォーラムとなりました。

「中小企業家しんぶん」 2024年 11月 15日号より