同友エコ2023―2024受賞企業を紹介する本連載。第5回となる今回は、外部審査委員賞を受賞した(株)プレゼントデザイン(広島同友会会員)の取り組みを紹介します。
東日本大震災の衝撃
広島同友会の環境経営委員長として活躍中の川端順也氏は大学の建築学科を卒業後、神戸市のゼネコンで震災後のマンション建設に従事。その後広島市の建築会社に移ります。そんな氏のターニングポイントになったのが2011年の東日本大震災でした。
その年の2月、語学留学で99年に1年間滞在していたニュージーランドで大地震が起き、ボランティアとして駆けつけようと準備していた矢先、大震災が起きました。半年後に被災地をレンタカーで走った川端氏は、津波で壊れていない町まで電気がともらないことに衝撃を受けました。「津波には勝てなくても、省エネはできる。発電所も太陽光発電も、同じ電気を作る装置だ。自分の仕事は建築業でもあり、エネルギー産業にもなると思った」と語ります。
その後、2013年に独立。最初に作った経営理念は「持続可能な社会実現に貢献し、『子どもたちの未来を守る』」です。今も理念は変わっていません。
全住宅でCO2排出ゼロに
川端氏が大事にしているのは、建てた後の費用をしっかりと提案し、敷地のポテンシャルを生かすこと。飽きのこないデザインで長く安心して暮らせる建物とすることです。断熱等級7による高性能住宅を設計し、2022年に竣工(しゅんこう)した住宅の総計では、太陽光発電を搭載しなかった住宅を含めて、1次エネルギー消費量を99%削減。2023年竣工の全住宅の合計でも二酸化炭素排出「0」を達成しています。
「環境問題への関心は多くの市民が持っていますが、負担の許容範囲は1000円/月、1万円/年程度です」と氏は語ります。そこで建築物のイニシャルコストと、ランニングコストを対比して考えることを大事にしています。「最近のエネルギー費高騰により、ようやく顧客の高性能住宅への理解が深まってきました」と語っています。
コラボと啓蒙活動
こうした情報を届けるために、さまざまな啓蒙(けいもう)活動を行政や関係機関とコラボして行っています。
広島県温暖化防止推進センターとコラボして温暖化防止推進委員と地域の子どもたち向けの断熱改修ワークショップを実施。「うちエコ診断員」として、岡山県職員および岡山市内の事業者向けに講演を行いました。また、広島県のスマートハウス普及促進事業にも携わっており、県内の各地域における、断熱グレード別の費用対効果シートのシミュレーションを作成して提出しました。さらに、住宅事業者向けや一般生活者向けセミナーなども開催しています。
広島市からフェリーで約30分の江田島にZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)体験用のゲストハウスを建築しました。
省エネ・高性能住宅は三方よし
「省エネ・高性能住宅は三方よし」と氏は語ります。施主には快適でローコストな生活を提供。設計事務所や工務店は、連携して技術革新に取り組むことができます。地域外にエネルギー費などが流出するのを防ぐこともでき、地域内にお金が循環することになります。
「思いを同じくする仲間とともに、子どもたちの未来を守りたいですね」。
会社概要
設立:2013年2月1日
社員数:2名
事業内容:住宅・店舗の建築設計、施工者向けのコンサルタント、講師業、小規模の建築工事
URL:https://pleasant-design.com/
「中小企業家しんぶん」 2024年 11月 15日号より