2023年の農林水産物・食品の輸出額は、過去最高の1兆4,547億円となり、前年比では2.9%の増加、額では407億円の増加となりました。農林水産物・食品の輸出推移を見ると、輸出額ではまだ少額ですが、コロナ禍を経ても輸出実績が伸びているものがあります。
2013年の農林水産物輸出額のベスト20とランク外から伸びたものを2023年と比べてみると(コロナ前の19年も参照、表1)、福島第1原発の処理水の放出に反対する中国による日本産水産物輸入禁止の影響で23年の後半から大きく減少した「ホタテ貝」ですが、輸出額1位を維持し、173%(13年比、以下同)となりました。「日本酒」も前年比では23年は大きく減少したものの、3万円以上のものは増加傾向にあり、390%の増加となっています。姫路にある(株)本田商店(兵庫同友会会員)の純米大吟醸「秋津」の20年物は、米国にて1万ドルで5本が売れています。「なまこ」も減少していますが、13年比では173%となっています。日本の「真珠」は香港で加工されてから輸出されており、中国で人気です。生産量が減り値上がりしていますが、242%に増加しています。建築バブルの影響で、「丸太」も736%と中国の影響はよくも悪くも大きくなっています。2579%と最も伸びたのが「いちご」です。インバウンドで日本のいちごの味が知られてから人気が高まったとみられます。「牛肉」の1002%もそのおいしさが広がった結果と言えるでしょう。次いで「コメ」が914%に伸びており、2023年の海外の日本食レストランの店舗数は18万7,000店(19年:15万6,000店)と、2013年の5万5,000店から3倍以上に増加していることが要因と考えられます¹。その影響で「ソース調味料」が254%、「醤油」が235%、「味噌」が208%と伸びています。海産物は魚の取れ方で差があるので一概に言えず、変動は大きいですが、寿司の人気で「ぶり」や「マグロ」が伸びています。さらに健康志向から「たばこ」が減り、「清涼飲料水」434%、「緑茶」が442%。安全・安心志向で、菓子(米除く)が277%、米菓が175%伸びています。また、高級志向で「ウイスキー」が1259%と、全体で2位の伸びを見せています。22年に宝酒造(株)の「白河1958」が1本定価420万円(販売数量:70本)、サントリーの山崎55年が1本300万円(販売数量:100本)など、ブランド品として日本産が人気です。
今後中国を注視しなければなりませんが、日本食は海外で高い評価を得ており、日本食・食文化(2013年に和食がユネスコ無形文化遺産に登録)は一層の広がりを見せることを国内でも生かしていくことが必要です。おいしいこと、美しいことは当たり前で「(1)安全・安心であること、(2)健康的であること、環境に優しいこと、(3)少量で高くても高級なもの」などを日本でも取り入れていくことが求められます。
¹農林水産省「海外における日本食レストラン数の調査結果(令和5年)」参照
「中小企業家しんぶん」 2024年 11月 25日号より