【若者に選ばれる企業へ】地域企業の魅力を発信 
(株)仙北造園 代表取締役 佐藤 康之氏(岩手)

 採用と社内環境改善を一体として取り組む企業を紹介する新連載『若者に選ばれる企業へ』。第5回は(株)仙北造園(佐藤康之代表取締役、岩手同友会)の実践です。

 大学卒業後、造園会社に就職して修行を積み、2006年に仙北造園を立ち上げました。個人庭園や住宅外構の設計・施工・管理をはじめ公園の整備事業などを行っています。

 当初は個人事業主で、高齢のパート社員を雇って仕事をしていました。ある日、彼らを乗せて運転している私を見かけた妻から「仙北造園には将来がないね」と言われ、若いスタッフの採用が必要であることに気づきました。

初めての新卒採用と組織づくり

 同友会には2008年に入会し、「すべての行事に参加しましょう」という案内を読んで合同企業説明会にも参加しました。当時は新卒採用のことを考える余裕はなく、若者が入るような職種ではないとも思っていましたが、多くの学生が自社のブースを訪れてくれ、専門学生1名の採用につながりました。しかし、社内に就業規則や賃金テーブルなどはありません。給与は日給単価×出勤日数で、屋外作業が多いため天候の悪い日は休みになります。冬場は特に仕事が少ないため、1月から3月の3カ月間は月に10万円を支給し、別の会社でアルバイトをして生活してもらっていました。

 そんな中、共同求人委員会で社内環境整備と組織づくりの重要性を学び、法人化して就業規則を定め、給与体系の整備などに取り組んでいきました。その後、東日本大震災からの復興による仕事量の増加と人手不足から、大学3年生対象の復興ランドスケープツアーを企画。被災地の現状とともに自社の仕事を見てもらうことで興味を持った学生の入社につながり、徐々に新卒社員が増えていきました。

採用活動は継続が肝要

 昨年、中同協主催「中小企業サミット」に参加し、初めてインターンシップに挑戦しました。4名の学生を受け入れましたが、彼らは地域課題解決や社会貢献への関心が高く、地域や社会の課題解決に取り組まない企業は学生から選ばれないことに気づきました。現在、紫波町で廃校跡地を活用して地方創生を図る「ノウルプロジェクト」に携わっていますが、こうした地域課題解決の事業に取り組むきっかけの1つとなりました。既存社員たちの意識も高まるような事業にしたいと思っています。

 現在、仕事を通して社員の心が変わり、成長しているのを実感しています。ある女性社員は、入社当時は夜中まで遊んで翌日の仕事に身が入らなかったり、注意した先輩に反発した態度を取ったりしていました。しかし、産休なども経て女性でも働ける職場であることを体現してくれており、現在ではなくてはならない存在として活躍しています。今年4月に採用した社員は地方出身で社会経験も少なかったのですが、インターンシップでは自ら進んで学生に説明するなど半年間で大きく成長しています。

 就活にインターネットが欠かせない中、わが社の採用情報やエントリーの窓口はJobwayに集約しています。ホームページにJobwayのバナーがあることで採用活動をしている会社だということが一目でわかり、ホームページを訪れた学生は必ずJobwayにたどり着く仕組みにしています。「うちの会社では新卒採用はできない」という方もいると思いますが、共同求人は魅力ある強い企業づくりをし、自社の魅力を発信する活動です。すぐに結果が出なくても、活動を継続し、発信し続けることが何より大事なことだと思います。

会社概要

設立:2006年
資本金:300万円
社員数:16名
事業内容:造園工事、管理業
URL:http://senbokuzouen.com/

「中小企業家しんぶん」 2024年 12月 5日号より