【あっこんな会社あったんだ】外国人材 
外国人材をパートナーとすることで会社の質を向上 
(株)ライフサポート山野 代表取締役 山野英治氏(茨城)

 企画「あっ!こんな会社あったんだ」では、企業経営に関わるさまざまな専門課題に取り組む企業事例を紹介しています。今回は「外国人材」をテーマに、山野英治氏((株)ライフサポート山野代表取締役、茨城同友会会員)の実践を紹介します。

 同社は2012年に山野氏の父が創業しました。現在山野氏の兄の和哉氏(茨城同友会会員)が経営する(有)やまの湯から、父が介護事業に取り組むために分社化した形です。山野氏は2代目で、介護部門に加え、23年から外国人材支援事業をスタートしました。

人手不足を背景に外国人雇用へ

 外国人雇用の背景はやはり人手不足。雇用のきっかけは、19年に茨城県福祉介護事業協同組合が主催するインドネシアの技能実習生の視察に行ったことです。現地では、活気、人口の多さ、若者の就労意欲の高さを強く感じました。

 受け入れ事例を見てみると、労働力の穴埋めとしての雇用は失敗しており、受け入れ環境の整備が最も重要だと山野氏は考えました。翌年、「技術・人文知識・国際業務(技人国)」ビザを持つ外国人の雇用をスタート。最初に雇用したのはベトナム人のアンさんで、日本語の基本的なやり取りは問題なくできました。任せた業務は経理・事務で、山野氏と一緒に働き、現場に外国人材を丸投げにすることなく育成を行いました。その結果、外国人材がいることが当たり前の企業になり、さらに、アンさんの日本語が上手であったことで、外国人材を受け入れても何も心配はないという風土もつくることができました。

 現在は、ベトナム、フィリピン、インドネシア、ミャンマー、ネパール、韓国から7名の外国人を雇用しています。採用をする際は、日本に来る目的の明確さ、就業意欲の高さを重要視していると言います。

 また、外国人の採用を始めたことで既存社員にも変化がありました。中途採用が多い業界で、指導対象者が少ないために、以前は人材育成環境が整いませんでした。しかし外国人雇用を行うことで指導対象者が増え、日本人側の人材育成能力が向上しました。また、同友会の幹部社員研修に外国人スタッフを日本人スタッフと一緒に参加させたりするなど、できる限りキャリアプランを一緒に考えていけるようにサポートしています。

地域との関わり

 同社は、茨城県福祉介護事業協同組合が主催する小・中学生が介護施設に宿泊して福祉について学ぶ介護体験キャンプに参加しています。コロナ禍で中止が余儀なくされていましたが、昨年から復活しました。また、アンさんが、子どもたちに外国語に触れてもらう「多文化交流会」を企画。交流会ではゲームや、日本語、英語、タガログ語の3カ国語で絵本の読み聞かせを行いました。読み聞かせを担当したのは、日本で子育てをしている外国人スタッフやその家族です。スタッフや地域の方が互いの文化や言語を共有する楽しい時間となりました。夏休みには、子どもの自由研究と題していろいろな国の料理を楽しむイベントも行い、インドネシアのナシゴレンとフィリピンのブコパンダンを子どもたちと一緒に作りました。

 経済産業省が実施する国際化促進インターンシップにも参加しており、23年にはインドネシア教育大学の学生をインターンで受け入れました。現地では若い人の就労機会がなく、学生のアルバイト先も不足している状況です。そこで、現地でもアルバイトができるように、ホームページ制作やパンフレットのデザインなどオンラインでの仕事を任せたり、地域との交流会で流す、インドネシアの紹介動画を撮影して送ってもらったりもしました。

多様な人がいるのが当たり前の職場

 現在、同社では障害者・高齢者の雇用も行っています。高齢者雇用では、認知機能の低下に伴うリスクなどを本人やご家族に伝え、話し合いを重ねて働き方を決めていくようにしており、職場を、退職したあとでも顔を出してもらえるような「居場所」にしていきたいと山野氏は考えています。また、精神疾患を持つ方に対しては、清掃業務からスタートし、訪問介護へステップアップするなど、その人に合った働き方を提供しています。

 日本の高齢者人口そのものは2040年ごろにピークを迎え、その後マーケットが縮小していくことは間違いがないため、海外進出も視野に入れられるような環境を今のうちに作っておきたいと言う山野氏。「言葉・文化の壁というのはありますが、それを乗り越えると、若くて優秀な子たちと出会えること、日本国外のマーケットのつながりをつくるなど新しいチャンスを得られることが外国人雇用のメリットだと思います」と語ってくれました。

会社概要

創業:2012年
社員数: 39名
事業内容: 介護事業(ショートステイ・訪問介護・居宅介護支援事業所・サービス付き高齢者向け住宅)・外国人材支援事業(登録支援機関)
URL:https://ls-yamano.jp

「中小企業家しんぶん」 2024年 12月 15日号より