2024年度共同求人活動から 
共同求人活動は企業と地域の未来を創る―社会教育運動として取り組もう

 2024年10月の有効求人倍率は、1・28倍で昨年同時期からマイナス0・02ポイントとなり、コロナ禍前の2019年の水準には戻っていません。一方リクルートワークス研究所の大卒求人倍率調査では、2025年3月卒業予定の大卒求人倍率は1・75倍(2024年卒1・71倍)となっており、上昇傾向が続いています。

 企業規模別に見ると、従業員数300名未満の企業では6・50倍で昨年より上昇、5000人以上の企業では0・34倍で2010年卒以降もっとも低くなりました。倍率を見るだけでも中小企業にとって採用状況は厳しさを増しており、それに加えて初任給引き上げの流れが大きく進んでいます。従業員数300名未満の企業でも42・5%が前年よりも初任給を増やすと回答しています。

 Jobway参加企業は650社で前年と横ばい、2024年10月時点のユーザー数は1万3375名で、昨年3月から10月のユーザー総数は9万3621名、今年の3月から10月のユーザー総数は9万2569名でほぼ同数となりました。県別のユーザー数で見ると、学校訪問や大学での講義などを行っている同友会はユーザー数増につながっています。Jobwayは、中小企業を最大限に生かす求人サイトとして2002年にオープン、2024年は23同友会(昨年は20同友会)で利用されています。学校や学生への周知、参加同友会や企業を増やす取り組みなど課題はありますが、今後全国で活用が広がることが期待されます。

若者に選ばれる企業に~法令遵守の重要性

 就職活動を行う学生は複数の求人メディア等を活用しています。中同協では、Jobwayも求人メディアとして2019年3月に「求人情報提供ガイドラインに係る適合メディア宣言」制度の運用をスタートしました。適正な求人情報を提供していることを宣言することで学校や学生への信頼を担保すると同時に、適正化に向けて労働環境を改めて見直し、若者に選ばれる企業づくりをめざす取り組みの1つとして位置づけています。中同協では、事務局向けに求人に関する法改正等の説明会を毎年実施。各同友会事務局では、共同求人参加企業の求人票チェックを行い、法令等を遵守した活動を進めています。近年は、最低賃金の上昇による初任給の最賃割れの可能性がある企業も出てきました。今1度、初任給引き上げへの対応も含め労働環境の整備も必要です。

教育機関などとの連携~地域で若者を育てる

 各同友会では、キャリア教育やインターンシップ、出前講座など学生に「働くこと」の意義や中小企業の役割・魅力を伝える活動が継続して行われています。7月に実施した共同求人・社員教育活動に関する調査では、昨年に引き続き「学校からの協力要請増加」を活動の特徴として挙げる同友会の割合が最も高い結果となりました。大学への学校訪問は、34同友会395校で実施され、連携協定などを締結している同友会は33、83校にのぼっています。

 群馬同友会共同求人委員会では、2019年から毎年「社会連携シンポジウム」を開催しています。学校側からは県内各地の高校教諭や大学・短大関係者、学生など、企業側からは経営者・幹部社員などが参加し、毎年さまざまなテーマの企画で意見交換などを行っています。学校・仕事・地域社会をつなぎ、連携して若者を育てる活動を推進しています。

 7月に宮城で行われた中同協第56回定時総会では、「地域に人を残し、地域全体で人が育つ運動を展望する」をテーマにした分科会が宮城同友会設営で行われました。学生の就職活動の変化や人材不足による人材ビジネス市場急拡大、またインターンシップの定義が明文化され学校、企業、学生の間での認識のズレも生じています。このような状況も踏まえ、自社の採用活動とこれからの時代の共同求人運動について問題提起を受け、グループ討論で意見交換を行いました。

中小企業の魅力を発信~第5回中小企業サミット

 中同協共同求人委員会が主体となり、東京同友会の設営協力のもと「第5回学生と先生のための中小企業サミット」を6月7日に東京で開催し、40同友会82社(昨年は36同友会72社)の参加がありました。

 中小企業サミットは、中小企業の魅力を発信する場の1つとして、学生に自社や地域の魅力を語り、中小企業を就職先の選択肢に入れてもらうことを目的に、2020年からこれまで4回にわたり開催してきました。昨年に引き続き、今年もインターンシップマッチングイベントとして開催し、141名の学生が参加しました。

 インターンシップは学生にとって将来の選択肢を広げる大きな意義を持った取り組みです。他方で企業にとっても、学生に魅力を感じてもらえる企業に、そしてこれからの若者を自社に迎え入れる企業風土を築く上で大きな気づきと学びを得られる企業変革に向けた取り組みでもあります。参加企業からも「学生の積極性に驚いた」「地方にあっても優良な企業だと感じてもらうことができたなら勝負になると思った」「県内だけで採用活動を行っていたら接点を持つことが無かったであろう学生たちと接触できてよかった。インターンシップ参加に向けて学生の求める情報の魅せ方をこれから模索してきたい」という感想が寄せられました。

 採用活動にとどまらない自社の変革と社会教育運動の一環として、引き続き47都道府県の力を結集して取り組みを進めていきましょう。第6回は2025年6月6日に開催を予定しています。

共同求人活動は経営指針の実践の場

 共同求人活動は単なる人採りの活動ではありません。同友会で学び、採用活動を通して自社を外部評価してもらい、より若者から選ばれる、地域にあてにされる会社へと成長することが目的です。若者の人口流出が課題となる中、地域や社会に向けて活動する共同求人委員会の役割はますます大きくなっています。若者が暮らし、育つことのできる地域をつくり、雇用を創出することが地域経済の発展につながります。共同求人は人を育て、企業を育て、地域をつくる運動です。共同求人活動の輪を広げ、地域にあてにされる企業を増やしていきましょう。

「中小企業家しんぶん」 2024年 12月 25日号より