戦後80年 問われる平和と民主主義~新聞各社の年頭社説から

 2025年が始まりました。新聞各社の年頭社説から今年の課題を考えてみたいと思います。

 まずは各社の社説タイトルから。「平和と民主主義を立て直す時 協調の理念掲げ日本が先頭に」(読売新聞)、「不確実さ増す時代に 政治を凝視し 強い社会築く」(朝日新聞)、「戦後80年 混迷する世界と日本 『人道第一』の秩序構築を」(毎日新聞)、「未来と過去を守る日本に」(産経新聞)。世界で「不確実さ」、「混迷」の度合いが深まる中、戦後80年を迎え、平和や民主主義、社会のあり方を問い直す論調が目立ちます。

 「不確実性という霧につつまれた2025年が始まった。日本でも世界でも政治や経済の混乱が毎日のように報じられ、先行きを案じて年を越した人も多いだろう」(日本経済新聞)。「胸騒ぎがする。波乱が起きる予感が。それが何かはわからない。いつにも増して先が見えない年が、明けた」(朝日新聞)。読売新聞は「3つの危機が同時に進行している」として、世界は「平和の危機」「民主主義の危機」「自由の危機」に直面していると指摘します。

 このような状況に対して私たちはどのように臨めばいいのでしょうか。北海道新聞は「自由で公正な社会を守るため、平和と民主主義を誓った戦後の原点を見つめ直す時」と強調します。

 平和の問題では、対立と分断が深まり、戦争の危機が広がっていることに対する強い危機感が各紙で示される一方、ノーベル平和賞を受賞した日本原水爆被害者団体協議会(被団協)の活動を称え、そこに解決の糸口を見いだす論説も目立ちました。「核兵器がどれだけ人道に背いているかを身をもって示してきた被団協に学び、『核兵器のない世界』を諦めてはならない」(中国新聞)。「行動し、被爆者の訴えを若い世代が受け継いでいけば、いつかは現実の岩盤を崩せる。諦めてはならない、大切なのは声を上げ続けることだ―。」(北海道新聞)

 平和な社会づくりを進める原動力としては、「理念の力」(読売新聞)、「対話の努力」(沖縄タイムス)、「外交力、経済力による国際援助」(河北新報)などを挙げる論説が目立ちました。

 平和と切っても切り離せないのが民主主義です。「民主主義の価値を国民が確認する重要な時」(信濃毎日新聞)、「民主主義が軽んじられ、少数者の異論が封じられていないか。私たちは時代の空気に注意深くあらねばならない」(西日本新聞)と警鐘を鳴らします。日本では少数与党となりましたが、「今年は与野党間の政策形成の過程がより可視化されるように、潮目を変えたい」として、有権者が「しっかりと声を上げる」(朝日新聞)ことの大切さを強調します。

 地方分権や地域振興も民主主義を考える上では重要です。「国と地方の関係を明治以来の『上下・主従』から『対等・協力』に変える地方分権推進法が成立して30年」(京都新聞)、「戦後の日本社会が『大規模・集中・グローバル』を追い求めてきたこと」を反省し、「『小規模・分散・ローカル』を軸に、持続可能な循環型社会に踏み出し、社会を再構築」(山陽新聞)すべきとの提起は重要です。

戦後80年の節目の年、「『人間らしい社会』を再構築できるか」。「重い問い」(毎日新聞)が人類に突き付けられています。

(KS)

「中小企業家しんぶん」 2025年 1月 15日号より