連載「わが社のSDGs」では、経営理念をもとにSDGsに取り組む企業の事例を紹介します。第19回は、八千代紡織(株)(三友宏樹代表取締役、埼玉同友会会員)の取り組みです。
八千代紡織(株)の創業は1947年。三友氏の曾祖父が生糸の販売を行っていましたが、早世したため、銀行勤めをしていた祖父が会社を継ぎ、紡績工場を立ち上げました。三友氏は幼いころから会社に足を運び、親が働く姿を間近に見て育ったことで、「いずれ自分もここで働くだろう」と漠然と考えていたと言います。大学卒業後は別業界で10年間経験を積み、同社に入社しました。そのころ紡績業は年々売り上げが減少していたため、同社は主力事業を倉庫業へと移行していました。
環境に配慮した新倉庫
同社の倉庫は埼玉県伊奈町に位置しています。伊奈町は新興住宅地であり、騒音や振動が住環境に及ぼす影響を考慮し、近隣との共存を念頭に新倉庫を増設しました。この増設に際して、同社は埼玉県SDGsパートナー宣言を行っています。
新倉庫は防災拠点としての役割を果たす設備を備えています。雨水の処理をするための貯水槽(360トン)や、消防活動に使用できる防火水槽(計60トン)を設置しました。さらに、倉庫の屋根には太陽光パネルを設置しており、電力を太陽光発電で賄っています。そして、将来的には蓄電システムを導入し、停電などの災害発生時に、非常用電源として地域住民が活用できるよう整備を進めていく予定です。
また、倉庫内の照明にはLEDを採用し、環境に優しいエネルギー活用を推進しています。
同友会での学び
三友氏が同友会に参加したきっかけは、弟の哲哉氏が同友会に所属していたことでした。知人の経営者もいたため、2010年、例会にオブザーバーとして参加。その後、指針セミナーを受講して、指針を成文化しました。そして、新倉庫増設を契機に、3年前に再度指針セミナーを受講。これにより、将来像を具体化し、理念や事業環境を深掘りすることができました。
同友会に入会してよかった点として、同じ地域で活動する者同士が率直な意見を交換し、地域に根差した視点を共有できることを挙げています。新倉庫増設において、多額の設備投資や開発許可、銀行とのやり取りなど高いハードルがありましたが、「自社の可能性を考えるなら、思い切って取り組むべき」ということを実感し、この点を会員の皆さんにも伝えたいと三友氏は語ります。
今後の展望
現在、同社には1500坪の新倉庫のほかに、3000坪ほどの古い倉庫があります。老朽化した倉庫の建て替えが必要であり、これに合わせて太陽光パネルの増設を行い、さらに環境に配慮した倉庫をめざしています。
また、現在は哲哉氏と2人で会社を運営していますが、三友氏は60歳を超えたこともあり、次世代への継承を踏まえた採用活動を考えています。三友氏は「SDGsを通して地域住民の住環境に役に立つことを意識しながら、事業を継続していきたい」と笑顔で語ってくれました。
会社概要
設立:1947年
社員数:2名
事業内容:倉庫業
URL:https://www.yachiyobou.co.jp/
「中小企業家しんぶん」 2025年 1月 25日号より