【若者に選ばれる企業へ】
社員とともに日本のものづくりを支える 
(株)エージェンシーアシスト 代表取締役社長 増井 祐介氏(京都)

 採用と社内環境改善を一体として取り組む企業を紹介する新連載『若者に選ばれる企業へ』。第6回は(株)エージェンシーアシスト(増井祐介代表取締役社長、京都同友会)の実践です。

 わが社は、産業機械メーカーに勤めていた父が独立して1990年に創業しました。ものづくり支援企業として、加工部品調達、マシナリー、計測の3つのサービスを提供しています。私はもともと他社に勤めていましたが、30歳のときに後継ぎとして入社しました。

自社のブランディング

 入社当時はインセンティブ制だったこともあり、営業社員たちは自身の売り上げが第一でした。周囲への気遣いや、お互いに協力して働くという意識は一切なく、取引先の情報は同僚にも開示しません。採用は中途の経験者のみで、成果が上がらない、社内でなじめないなどを理由に退職者が続出していました。

 初めに取り掛かったのがパンフレットの作成です。わが社に発注すればどんな素材や形状の部品でも少量から調達でき、手間やコストを削減できて生産性向上につながる、こうした自社の強みを明確に打ち出しました。その内容はホームページにも落とし込み、営業トークのベースを整備して社員の足並みをそろえていきました。もともと社員たちのスキルや専門性は高かったので、自社のサービスをブランディングして、徐々に方向性を明確にしていきました。

新卒採用を通じた社内の変化

 そんな中、初めて未経験の若者を採用しました。その際に変化があったのは既存社員たちです。仕事の教え方を考えてくれるようになり、自身の仕事に対する意識も向上するなど、後輩の存在が先輩たちの成長につながることに気づきました。その翌年には初めて新卒社員を採用、さらにその翌年から合同企業説明会にも参加し始め、現在まで毎年新卒採用を続けています。若手社員は先輩たちの姿に学び、先輩たちは背筋を伸ばしながら会社の思いに共感して仕事をする。新卒採用を通じて社内の風土が変わっていきました。

 同時に、社内では会議変革に取り組みました。数字報告だけでなく社員同士のコミュニケーションを深める場に変え、参加者全員に発言の機会があり、意見が否定されることはありません。チームの一員という立場で発言してもらうことで、社員の主体者意識が向上していきました。

生き生きとやりがいをもって働ける環境づくり

 働きやすい会社にするために何が必要かを各チームで検討し、指針発表会の際にプレゼン大会をしています。全社員投票で1位に選ばれたものは実際に導入しており、改善提案をして自ら会社を変えるという企業文化につながっています。2024年にはフレックスタイム制を導入し、お互いをフォローする仕組みを社員たち自ら考え、それを全社で横展開するなど自主的な取り組みが広がっています。

 また、社員の自主性を育むために、上司の許可や承認をなるべく減らして個人の裁量を大きくしています。自分の判断で値段を付けて見積書を作成してもらうなど、自由度を上げながら責任感を持って働いてもらっています。

 さらなる職場環境改善のためには収益性の高い強いビジネスモデルにしていく必要があり、これは社員任せではなく経営者である私の役割だと思っています。 人の評価の仕方に正解はありませんし、人が人を評価するということの意味も考え続けていく必要があると思っています。わが社は10年連続で評価制度を改定しており、より自然で納得感が得られる制度を作り上げて、社員たちと共に挑戦を続けていきたいと思います。

会社概要

設立:1990年
資本金:3,000万円
社員数:144名
事業内容:産業機械および関連する部品の販売と検査
URL:https://www.agency-assist.co.jp/

「中小企業家しんぶん」 2025年 2月 5日号より