2月6~7日、第55回中小企業問題全国研究集会in愛媛が開催され、47同友会と中同協から1173名が参加しました(2月25日号既報)。今回の特集では、全体会での主催者あいさつ、開催地あいさつ、4つの分科会レポートと2日間のまとめを紹介します。
主催者あいさつ
中同協 会長 広浜 泰久氏
今回の全研は1170名の参加者で開催されました。設営いただいた渡部実行委員長をはじめ、愛媛同友会、各分科会の報告者の方々、分科会設営同友会の皆さんに心から感謝申し上げます。
今年は労使見解ができてから50年、戦後80年という節目の年になります。このような年に「同友会が中小企業を取り巻く問題を全国的に研究する集会」を開催する意義は大変大きいと感じています。私は第1分科会で愛媛大学和田教授より情勢認識や条例、平和についてのお話を聞きました。グループ討論では「平和とは何か、中小企業家として取り組むべきことは何か」をテーマの1つとして討論しました。平和問題について論議することは一般的には難しいですが、グループ発表を聞いて私は驚きました。ほとんどのグループ発表が「平和」と「人間尊重」を関連付けて報告していたからです。これは同友会ならではだと思いました。平和と人間尊重を中心軸として論議できるのは同友会だけだと改めて感じました。労使見解から50年、戦後80年という節目の年にまっとうな論議ができたと強く感じています。
他の分科会でも、新しいステージで同友会としての新たな使命を果たしていこうという思いで開かれていたと思います。すべての分科会で中小企業を取り巻く問題を課題として置き換え、どう取り組むかという形で論議、発表されていることが今回の大きな特徴です。第2分科会の「賃上げができる企業づくりの王道を進もう」というテーマのように、私たちはあらゆる課題に対して「労使見解を含む同友会理念」に基づく王道を歩んでいこうと思いを新たにしました。
本日は籔さん、岡田さんの報告もあります。今回、「先達に学ぶ 今を生きる 未来を変える」というテーマにふさわしい全研になったと感じています。この2日間の学びが皆さん自身、皆さんの会社、同友会、各地域の未来を変える力となることを祈念申し上げ、主催者を代表してのあいさつとさせていただきます。
開催地あいさつ
愛媛同友会 代表理事 米田 順哉氏
同友会の新しいステージを担う私たち経営者1人1人がどうあるべきか。国や自治体、地域社会から期待される同友会のあり方はいかなるものかということをしっかりとこの全研で学んで帰りましょう。
私は昨年、三重全研でのあいさつで540名の会勢を必ず達成して皆さまをお迎えすると約束しましたが、現在456名で残念ながら未達に終わりました。しかしながら期首会勢では407名のところから50名近い純増となり、特筆すべきは83名の入会に56名もの会員が関わってくださっているということです。
これは会員増強の裾野が広がってきているおかげです。入会した直後の方からも紹介いただくということもあり、大変よい仲間づくりができたと思っています。準備期間を含めたわずか2年の活動期間中、組織委員会を中心に全会員さんが本当に頑張って達成していただいた数字で、私はこの数字に誇りを持っています。
あらためまして愛媛同友会のすべての会員さんに敬意と感謝の気持ちを表します。本当にありがとうございました。
分科会レポート
第2分科会【中同協】経営指針の全社的実践
賃上げができる企業づくりの王道を進もう
~「労使見解」発表から50年~
第2分科会では、林哲也氏(中同協経営労働委員会前委員長、香川同友会代表理事)が「賃上げができる企業づくりの王道を進もう~『労使見解』発表から50年~」をテーマに中小企業の未来像について学び合いました。
林氏は、最低賃金の上昇は新卒採用や外国人労働者の賃金に影響し、ベテラン社員との賃金格差縮小が人材流出を招く可能性について触れるとともに、企業淘汰(とうた)が懸念される現状を紹介。課題解決のために「労使見解」の精神に立ち返り、社員をパートナーとして尊重し、共に成長をめざす姿勢の重要性が強調されました。
賃上げできる企業づくりの王道として、同友会3つの目的の視点から具体的な取り組みを紹介。変動損益計算書や人時生産性を社員と共有し、共に経営改善に取り組み、会社が成長してきた事例に学びました。オイルショック後の高インフレ下に発表された「労使見解」の労働者をパートナーと捉え対話を重視する姿勢は、現代においても重要な教訓となっています。賃上げという喫緊の課題を通じて、企業変革の方向性について深く掘り下げた分科会となりました。
分科会レポート
第9分科会【中同協】政策課題(公正取引)
公正取引の実現で中小企業が発展できる社会を
~中小企業憲章が掲げる公正な市場環境をめざして~
第9分科会は「公正取引の実現で中小企業の発展を」をテーマに中央大学経済学部教授の松丸和夫氏が報告しました。松丸氏は、実質賃金はマイナスが続いている中、賃上げの意義は広く共有されているが、中小企業経営の現実は容易に賃上げできる状況にはないと指摘。それを克服するためには、サプライチェーン全体で企業の支払い能力を高める公正取引を実現していくことが重要であると強調しました。
さらに、政府も「労務費の適切な転嫁のための価格交渉に関する指針」や「改訂版・中小企業・小規模事業者の価格交渉ハンドブック」を公表するなど、大きな変化が表れていると指摘。世界でも人権デューデリジェンスを義務化する動きが広がるなど、取引関係の中での人権侵害を厳しく否定する動きがあることを紹介しました。中小企業には、このような時代の変化を追い風にしながら、価格転嫁や価格交渉に果敢に挑戦していくことが求められていると強調しました。
座長の石渡裕氏は「価格交渉は困難な課題ではあるが、その努力は自社の優位性を再確認することにつながるもの。共に頑張りましょう」とまとめ、公正取引の重要性、各社の課題などを深め合った分科会となりました。
分科会レポート
第11分科会【北海道】持続可能な地域づくり
未来に課題を先延ばししない、人・農業・町のこし
~農閑期を「付加価値創造」のチャンスに変える!地域と共創する持続可能な農業~
第11分科会では前田茂雄氏(前田農産食品(株)代表取締役)が「未来に課題を先延ばししない、人・農業・町のこし」をテーマに同社の歩みと今後の展望を語りました。
前田氏は十勝地方の本別町で100年以上続く農場の4代目。本別町の基幹産業は農業で、農地の規模は本州の数十倍です。しかしそれが「顧客が見えない」「農閑期の付加価値額が減少する」などの課題を生んでいました。
そんな中で前田氏は同友会で学び、自社小麦粉によるパン店とのコラボで顧客の見える化や国産初のレンジでできるポップコーンの栽培加工販売を行い、農業を起点とした食文化の創造と農閑期での売り上げ向上や雇用増加に挑戦。
社内でも生産性向上やGGAP認証(持続的な生産活動の認証)取得などに取り組み、人を生かす経営を実践してきたほか、食農教育ファームとしての活動や広大な畑を利用したイベントの開催など地域との協働・協創に取り組んできました。
分科会終了後は参加者全員でポップコーンの着ぐるみを身に付け、各地域での取り組みを誓い合いました。
分科会レポート
第12分科会【福岡】憲章・条例に基づく地域づくり
中小企業が元気に活躍するまち田川
~みんなでつくる地域内経済循環~
憲章・条例に基づく地域づくりをテーマにした第12分科会では、田川市建設経済部産業振興課の平塚幸雄氏と同友会メンバーとして産業振興会議に参加している荒川雅光氏((有)英設備工業代表取締役)の2名が報告しました。
平塚氏からは行政の視点で、地域の企業を活性化させることが地域衰退を防ぐことにつながるという考えのもと条例制定に取り組むこととなった背景、産業振興会議を明確に条文に位置づけるなどの、制定して終わりとならないための条例の特徴が報告されました。
荒川氏からは産業振興会議の活動を中心に報告。田川市の実態調査を実施、地域の特徴と課題が明らかになり、田川市中小企業振興ビジョンを策定。それをもとに設置された4つの部会の活動を報告し、条例を生かした地域づくりの実践を紹介しました。部会活動の中では、高校生が中心となって地域づくりに取り組む「たがわPlanner」の説明を高校1年生になる荒川結愛さん(荒川氏のご息女)が行い、取り組みの成果と自身の思いを報告しました。
行政・企業・学生、地域に住む多様な人々が自分事として地域を捉え、認識を共有し、田川を元気にしていく。条例という土壌のもとで、そこに住む人たちが一体となって地域活性化に取り組む事例に学ぶ分科会となりました。
まとめ
中同協 幹事長 中山 英敬氏
今回の全研は中小企業が抱える問題、課題を14の分科会で学び合いました。中小企業を取り巻く問題や課題が山積する中、私たちはこの難局をどう乗り越えていくか、2点に分けてお話しします。
1点目は企業経営の課題です。今年のスローガン「21世紀型中小企業づくり」は、31年前と同じスローガンを掲げています。90年代にバブルが崩壊して一気に不況に陥り、政治、社会、経済の枠組みがすべて変わり、激変の時代に直面しました。今の日本経済と似た状況です。その時に私たちの先輩は長く続く困難を予測し、最優先すべき経営課題として「21世紀型中小企業づくり」を掲げました。要点の1つは、自社の存在意義を問いただすことです。これだけ世の中が変わると今までのやり方での成長はありえません。今1度わが社の商品・サービスは価値があるのかを見直し、存在価値を高めるためには、社会課題や地域課題に正面から向き合い、自社の課題として取り組むことが重要です。「21世紀型中小企業づくり」には「社会的使命感に燃えて事業活動を行う」と記載されています。
2つ目は、社員の創意や自主性が十分に発揮できる社風をつくることです。これは人を生かす経営そのものであり、労使見解に基づく人間尊重の経営です。今日の籔さんのお話の中では、「ここまでできたのは中小企業家の意地だ。私たち中小企業家も崇高な理念に基づいて経営している。ここであきらめるわけにはいかない」という決してあきらめない意思を感じました。
2点目は、同友会運動の課題です。2010年に中小企業憲章が閣議決定され、中小企業振興基本条例が全自治体の43%を超える地域で制定された今でも国の政策に中小企業憲章の精神はまだまだ反映されていません。この大企業優先の中で中小企業観を転換させ、閣議決定ではなく国会決議で国民の認識として、国民的議論を経て憲章の精神が国の政策に根付いていくのではないでしょうか。私たちは力を入れてこの運動を展開していかなければなりません。そして最大の課題は、会員増強です。同友会運動の将来展望(10年ビジョン)では、国内において対企業組織率5%をめざすということを掲げています。各地で10%をめざし全国平均で5%まで高めることが目標です。対企業組織率が3%になれば認知度が高まり、5%になれば影響力が高まります。私たちの運動の影響の輪をもっと広めるために早く目標を達成しなければならないと強く感じました。私たちは国民一人1人を大切にする豊かな国づくりをめざしています。今回のテーマ「先達に学ぶ(素晴らしい同友会の歴史と理念をもう1度学び直し)、今を生きる(今の課題を直視し私たちが中小企業観の転換を実現する)、未来をつくる(国民一人1人が安心して幸せに生きられる国づくり)」に向け、自信と誇りを持って動きましょう。
「中小企業家しんぶん」 2025年 4月 5日号より









