採用と社内環境改善を一体として取り組む企業を紹介する新連載『若者に選ばれる企業へ』。第7回は大福コンサルタント(株)(福田真也代表取締役社長、鹿児島同友会)の実践です。
わが社の歩みと採用への転機
当社は、道路や橋梁(きょうりょう)などの調査・測量・設計を手がける総合建設コンサルタントです。1973年に父が創業し、半世紀にわたって社会インフラ整備に携わってきました。
もともと、建設不況もあり場当たり的な中途採用が中心で、新卒採用には取り組んでいませんでした。そのため若手社員が少なく、将来の人材確保や技術継承に不安を感じていました。そんな折、2012年に同友会と出合い、これが転機となって、新卒採用に挑戦することを決意したのです。
私にとって初の新卒採用
業界内では県内トップの実績を誇っていたため、すぐに学生が応募してくると考えていました。ところが、実際に募集をかけても応募はなく、ガイダンスに参加しても学生が訪れませんでした。
そこで、まずは「自社の魅力を自分自身が本当に理解しているのか」と見つめ直しました。そして、地域への社会貢献や、当社で得られる成長の機会をしっかりと学生に伝えることが重要だと気づきます。この気づきをもとに、採用活動と並行して社内環境の見直しにも着手しました。
社内には「新卒よりも即戦力の採用が優先ではないか」という意見も根強くありましたが、10年後の会社の姿を示しながら新卒採用の重要性を訴え続けました。その結果、10年前に初めて新卒採用を実現させました。以来、毎年4名ほどの新卒者を採用し、地元の中学生から大学生までインターンシップを積極的に受け入れるなど、若者への情報発信にも力を入れています。
全社一丸体制の企業づくり
当社の業務では技術資格が多く求められ、社内で約70の認定資格を設定しています。資格は社員にとっても会社にとっても大きな財産です。そのため、資格取得支援制度を整備し、それぞれの資格に応じた費用負担などの支援を行っています。
また、以前から課題だったのが部署間の連携でした。そこで、同友会仲間の実践も参考にしながら、全社員が参加できる社内委員会制度を導入しました。現在、「広報委員会」「5S活動委員会」「技術向上委員会」など8つの委員会があり、異なる部署の社員が協力し合う仕組みをつくっています。
例えば、「技術向上委員会」では、資格試験のスケジュール管理や受験のための講習会の開催、年間研修計画の立案などを行っています。また、「健康推進委員会」では、鍼灸(しんきゅう)師を招いた社内マッサージやヨガ体験の企画を通じて、社員の健康増進を支援しています。
当社は「かごしま子育て応援企業」にも登録されており、毎月第2水曜日と19日(育児の日)をノー残業デーと定めています。「業務推進委員会」では、社内放送などを活用して残業削減の啓発活動を行っています。
各委員会の委員長などはなるべく若手社員に任せ、全社員の前でプレゼンを行う機会を設けることで、実務だけでなく役職経験を積めるようにしています。こうした取り組みを続けるうちに、社員が会社を「自分ごと」として捉え、主体的に職場環境の改善に取り組む風土が醸成されつつあります。
100年企業をめざして
新卒採用に取り組んだことで、社員教育や社内体制の強化の重要性に気づき、「社員をどのように成長させるのか」を強く意識するようになりました。
今年は新たな挑戦として、小水力発電所の建設を開始します。これにより、地域との災害支援協定を締結し、売電収益の一部を地域に還元する仕組みを構築する予定です。
100年企業をめざし、新事業の展開と社内環境の整備を両立させ、地域社会に貢献し続ける企業でありたいと考えています。
会社概要
創業:1973年
従業員数:114名
事業内容:建設コンサルタント、測量、補償コンサルタント、文化財調査、再生可能エネルギー事業、不動産事業
URL:https://daifuku-consultant.co.jp/
「中小企業家しんぶん」 2025年 4月 5日号より