【報告要旨】協力し合えなかった会社から社員総がかりで地域と向き合う優しい会社へ 
(株)グリーンロジスティクス 代表取締役 岩崎 浩氏(熊本)

 2月20日に行われた中同協障害者問題拡大委員会in熊本では、熊本同友会の岩崎浩氏が実践報告を行いました。報告要旨を紹介します。

 当社は産業廃棄物の中間処理業を営んでおり、収集・運搬、再生プラスチックの加工・販売などを行っています。かつては顧客や地域との関係、さらには社内の人間関係が悪く、問題が山積みの会社でした。そうした中、就労支援事業所を訪問したことがきっかけとなり、障害者雇用に取り組み始めます。社員たちからは猛反発を受けましたが、社内に委員会を作り、若手社員が委員長に手を挙げてくれたことで取り組みがスタートしました。

障害者雇用を通じた気づき

 現在は障害のある方を2名雇用しています。K君は15年目のベテラン社員ですが、当初は同じ場所にとどまっていられず、すぐに持ち場を離れていました。まずは、母親に会社に来てもらい働く姿を見せ、家庭内で会社の話題を増やしてもらいました。また、社員たちが一生懸命に接するうちに徐々に変化が見られ、希望する仕事内容を知らせてくれるようになりました。地域の人たちにあいさつできるようになるなど、生活面での成長もとてもうれしく、今でも元気に働いてくれています。

 続いてT君です。T君は、就労支援事業所の定着支援がなければ難しかったと思います。個人情報を守りたいという理由で本名を名乗りたがらず、現在まで12回も呼び名を変えています。また、子どもたちをじっと見つめてしまい、不審者扱いをされたこともあります。事故を避けるために「立ち止まって目で確認してから通りなさい」という両親の教えを守っていただけなのですが、それ以降は違う道を通ってもらうようにし、誤解であることを各所に伝えました。彼が好きだったことがきっかけで、朝礼にラジオ体操を取り入れたことは会社の変化の1つです。また、社内では「障害って何だろう」という話し合いが増え、障害に対する捉え方や考え方が変わったことはわが社の宝です。社員たちが愛情深く優しく接する姿を見て、何より経営者である私自身が深く学びました。現在はチームで仕事ができる会社になり、「障害者雇用をすると生産性が下がる」ということはありません。

地域や学校を巻き込む

 地元の小学校とは、17年にわたって取り組みを続けています。横断歩道での見守り活動から始めましたが、子どもたちや両親の「ありがとう」の言葉は、社員たちにとって初めて地域から感謝される経験となりました。その後、子どもたちのために何ができるかを考えていくと、社員から「登下校時の安全パトロールをしてはどうか」と提案されました。そこで、まず地域の危険箇所が書かれたマップの作成に取り掛かりました。そして、自社プラントで生成した燃料を使ってマップ通りに地域を回る「菜の花パトロール」が始まりました。原料となる油は地域の企業にも提供してもらい、校長先生と一緒に感謝状を贈呈しに行くなど関わりを深めています。また、小学生の環境学習も受け入れており、会社の敷地に植えている菜の花の刈り取り体験などを実施しています。子どもたちには資源やリサイクルの重要性を伝え、今日から取り組めそうなことを考えて「葉っぱ」に書いてもらい、みんなの「葉っぱ」が集まった「約束の木」が各教室に貼られています。さらには、社員が卒業記念品のキーホルダー製作を企画・実施するなど、子どもたちとの交流を楽しみながら主体的に取り組んでくれています。

 地元の支援学校とは、学校の草刈りから関わりがスタートしました。先生たちは忙しく、こうしたことに手が回らないのです。その後に授業を見学させてもらい、校長先生や進路指導の先生には同友会の例会でも報告してもらっています。関係を深めていく中で、小学校と支援学校合同での農業体験も実現しました。障害の有無に関わらず、地域の子どもたちが共に汗をかいて農業を学べるとてもいい場だと思っています。

 これらの活動は、子どもたちが地域で育ち、学び、働くことを支援するためのものです。新学習指導要領には、私たち中小企業は地域の教育を担うパートナーだと位置づけられています。地元の中小企業で働くという選択肢を持てるような働きかけが必要で、持続可能な地域をつくり、企業活動を続けていくために必要な取り組みだと思っています。また、こうした活動は全て社員が主体となって取り組んでくれています。地域に認められていることを実感しながら、地域貢献を大切にする会社の一員であることに心から満足してもらうことで、顧客満足や顧客創造にもつながると思っています。

会社概要

設立:1992年
資本金:1,000万円
従業員:42名
事業内容:産業廃棄物の中間処理および収集運搬
URL:http://www.greenlogistics.co.jp

「中小企業家しんぶん」 2025年 4月 5日号より