連載「わが社のSDGs」では、経営理念をもとにSDGsに取り組む企業の事例を紹介します。第23回は、サンプラスチック(株)(大江正孝代表取締役、栃木同友会会員)の取り組みです。
栃木県那須塩原市に本社を構えるサンプラスチック(株)は、シュリンクフィルムや帯電防止・導電・防錆(ぼうせい)などの高機能フィルムを開発・製造するメーカーです。創業当初からリサイクル材の活用に積極的で、社内で発生するロス材を再生原料として使用した製品を積極的に展開。「限りある資源を大切に使うことは、私たち製造業に課せられた責任」と大江氏は語ります。
環境に配慮した製品開発
昨今、プラスチック業界では「脱プラスチック」の動きが強まり、同社は環境負荷低減のための製品開発に力を注いでいます。
特に注目されているのがバイオマスフィルムです。「おからバイオマスプラスチックフィルム」は、食品廃材である“おから”を15%配合し、ベースにはリサイクル材を使用。石油由来資源の使用を26%削減し、香ばしい匂いとクリーム色の独自性を備えています。この製品は、県の環境方針にも合致し、補助金を活用して実用化されました。
また、「和shu(R)」と名付けたバイオマスシュリンクフィルムの開発も進行中。10%のコーンスターチを混合し、和紙のような手触りと風合いを持たせたことで、高級感の演出という新たな価値を生み出しました。現在、さらなる増産に向け改良を重ねています。
加えて、製造プロセスの見直しも進めており、電気代高騰や脱炭素社会への対応策として、昨年自家消費型の太陽光発電設備を導入しました。
働きやすい環境づくり
同社は創業以来、従業員数を約10名増やし、若者の採用にも積極的に取り組んでいます。地元高校からの継続的な採用を行い、地域の雇用創出にも貢献。従業員の年齢層は18歳から72歳まで幅広く、平均年齢は43~45歳と、ベテランと若手のバランスが取れています。
また、社員が安心して働ける環境づくりにも注力。営業・事務・加工部門は年間125日、製造部門は年間165日の休日を確保。さらに、コロナ禍のさなかには工場内にエアコンを導入しました。かつて真夏には40度を超える環境でしたが、現場社員の健康を考慮し、快適な労働環境を整備しました。
経営指針を深め、企業連携へ
大江氏は、創業前からの知人の紹介で同友会に入会し、経営指針を学ぶ研修に参加。「どのような会社にしていきたいか」「経営者としてどうあるべきか」を見つめ直しました。
その後、経営労働委員会に参加し、サポーターとして他社の経営指針づくりを支援。こうしたネットワークが、事業の発展にもつながりました。その一例がコロナ禍での医療用防護服の製造です。指針受講者として関わった企業との信頼関係があったため、迅速に協力し、製造を請け負うことができました。
同友会には、経営理念を共有する企業が多く、事業内容や経営姿勢を理解し合うことでスムーズな連携が可能だったと言います。
地域に根ざす
同社は栃木県の「地域中核企業」に認定されています。県からの紹介をきっかけに制度へ応募し、認定後はメディアとの接点が増加。県外への事業拡大をめざす同社にとって、低コストでのPR機会となりました。
また、大江氏はSDGsや脱炭素に関する県主催の勉強会に参加し、事例発表を行っています。さらに、県の「地球温暖化防止活動推進員」としてワークショップを開催し、リサイクルや環境問題について啓発活動を実施。那須塩原市の依頼を受け、学校で回収したプラスチックをゴミ袋に加工する事業にも参画し、現在実証を進めています。「地域で事業を営む以上、自社の強みを生かし、貢献していきたい」と大江氏は語ります。
今後の展望
大江氏は、今後5年間で給与水準を40%引き上げる目標を掲げています。物価上昇や最低賃金の引き上げに対応するだけでなく、従業員の手取りを増やし、より働きがいのある職場を実現する狙いです。そのためには、現在の事業の延長線上ではなく、新しい商品・売り方・市場開拓が不可欠。特に、リサイクルを中心とした商品展開を強化し、半導体産業向けの製品開発にも注力する方針です。加えて、近隣の異業種企業と連携し、新たな事業創出にも挑戦していきたいと語ります。環境に配慮したものづくり、働きやすい職場づくり、そして地域との共生を大切に、サンプラスチックはさらなる発展をめざします。
会社概要
設立:2014年
資本金:1,000万円
従業員数: 31名
事業内容:プラスチックフィルムの製造・加工・販売
URL:https://www.sunplastic.jp/
「中小企業家しんぶん」 2025年 4月 15日号より