4月2日、アメリカのトランプ政権は、全世界を対象にした「相互関税」を発表しました。各国からの輸入品に一律10%の関税を課し、加えて約60の国・地域に対して、異なる税率を上乗せするというもの。上乗せ税率は、中国34%、韓国25%、EU20%、そして日本は24%と極めて高率です。また、自動車関税も発動され、全ての輸入自動車および主要部品に対しても25%の追加課税が課されました。
大規模な貿易戦争への懸念から世界中に激震が走り、各国で株価が急落するなど、世界を混乱に陥れています。国際通貨基金(IMF)のゲオルギエワ専務理事は「世界経済の見通しにとって重大なリスクであることは明らか」と警鐘を鳴らしています(毎日新聞2025年4月5日)。アメリカが主導してきた戦後の自由貿易体制が揺らぎ、世界経済は大きな転機を迎えたと言えます。
日本経済への影響も甚大です。アメリカは日本の最大の輸出先で、輸出全体の約2割を占めています(2024年)。うち自動車は約6兆円で対米輸出額の28・3%を占めています。自動車以外にも原動機や建設用機械、半導体等製造装置、医薬品、農林水産物、食品など幅広い分野でアメリカ向けの輸出を行っており、大きな影響が懸念されます。
第一生命経済研究所は、今回の関税措置によって世界全体で0・5%、日本でも0・5%、実質国内総生産(GDP)を押し下げると試算。大和総研は、トランプ政権の関税政策全体で、日本の2025年の実質GDPを0・6%押し下げ、中期的(2029年)には2・9%下押しすると試算しています。
世界各国も一斉にアメリカの措置を非難。中国はアメリカからの全ての輸入品に34%の追加関税を課すと発表。EUも対抗措置を検討することを示唆しました。
日本政府も関税対策の関係閣僚会議を設置するなど対応策を検討しています。中小企業への支援策としては、特別相談窓口の設置、セーフティネット貸し付けの要件緩和などを発表しました。
アメリカは相手国が関税を引き下げれば相互関税も見直すとし、各国に譲歩を迫る作戦ですが、 日本は間違っても安易に妥協するのではなく、EUや東南アジア諸国連合(ASEAN)・世界各国とも協力して相互関税の撤回を求めるべきです。自国第一主義的な保護主義は、かつて世界大戦を招く結果となった歴史の教訓を忘れてはなりません。各国の経済主権を尊重し、多国間協議により持続可能で公正な経済発展をめざすことが求められています。
かつて、リーマンショックや東日本大震災、新型コロナウイルスなどが中小企業経営に計り知れないほどの打撃をもたらしました。その難局を乗り切ってきた会員企業の教訓として、(1)経営姿勢の確立(会社の維持・発展、雇用維持)、(2)財務対策・資金手当て、(3)経営指針の見直しを通じた全社一丸の体制、(4)新たな仕事づくり、(5)情報の共有と見える化、(6)同友会への参加・活用、などが確認されています。
今後の動向を注視しつつ、これらの教訓にも学びながら、会員同士が知恵を出し合い、予想される難局を乗り切っていきましょう。
(KS)
「中小企業家しんぶん」 2025年 4月 15日号より