【企業変革支援プログラムの活用】自社の“定点観測”から始まる変革

 中同協発行『企業変革支援プログラムVer.2』の活用事例を紹介する本連載。今回は、奈良同友会経営労働委員長の脇阪麻水氏(訪問介護おっは~管理者)の実践を紹介します。

 私は、経営指針書を作成したくて奈良同友会に入会しました。右も左も分からなかった経営の世界で、一歩を踏み出すために参加したのが「経営指針成文化&実践セミナー」でした。その事前課題として、初めて『企業変革支援プログラムステップ1』のe.doyu登録を経験しました。質問項目1つ1つの意味を考えるだけでも必死でしたが、それでも「この項目はすべて“5”をめざせばいいのだ」と素直に思えたのを覚えています。

 セミナー中のグループ討論では、何年も継続してe.doyu登録を行っている先輩経営者のグラフを見せてもらいました。項目ごとの円グラフが少しずつ変化していく様子に、「自社の変化を可視化する力がこのツールにはある」と実感し、初年度から登録を続けています。奈良同友会は、このe.doyu登録をセミナーの宿題と位置づけており、参加者の全員が登録する仕組みになっています。

 奈良同友会では、経営労働委員会の“学びの時間”を使って『ステップ1・2』の取り組みを進めてきました。全ページの記入に取り組み、たとえ実践していないことがあっても「今は未実施」と正直に書き、空欄を作らないというルールで実施していました。2年目には別の色で追記することで、自社の成長の軌跡が目に見えて分かるようになり、これも立派な“定点観測”ツールとなりました。

 自社では、宮城同友会の玄地さんの例会報告に刺激を受け、スタッフと共に企業変革支援プログラムを活用することにも挑戦しました。記述式でスタッフから出た「休みにくい風潮がある」という声には、有休取得の推進で応え、結果的に2022年にはユースエール認定も取得できました。こうした改善点を経営指針書の方針の中に具体化し、「すぐできること」「長期的にめざすこと」と整理することで、確実に組織は変化していきました。

 プログラムが『Ver.2』に移行した際は戸惑いもありましたが、再びオンラインで参加した玄地さんの実践報告に背中を押され、スタッフと共に取り組みを再開しました。今はスタッフに各項目を評価してもらい、その平均点から最も低い項目の底上げを検討し、方針に反映しています。

 こうした経験を踏まえ、今期はなら支部の例会担当副支部長として、月例会を通じて企業変革支援プログラムに毎月1項目ずつ取り組む活動を始めます。例会参加者が1年かけて全ページに向き合える構成にしています。また、青年部会でもe.doyu登録を推進し、若手経営者にとっての「定点観測ツール」としての認知を広げたいと考えています。

 まずは経営者自身が向き合い、ツールの価値に気づくこと。その輪を、スタッフや同友会の仲間たちへ少しずつ広げていくこと。企業変革支援プログラムは、自社を見つめ直し、未来を切り拓くための大切な“羅針盤”になると確信しています。

奈良同友会経営労働委員長・青年部会幹事 訪問介護おっは~管理者 脇阪麻水

「中小企業家しんぶん」 2025年 5月 5日号より