【わが社のSDGs】
地域に息づく100年企業をめざす 
(有)東栄空調 代表取締役 東郷 浩二氏(宮崎)

連載「わが社のSDGs」では、経営理念をもとにSDGsに取り組む企業の事例を紹介します。第24回は、(有)東栄空調(東郷浩二代表取締役、宮崎同友会会員)の取り組みです。

 空調設備に係る配管工事の設計・施工を行う(有)東栄空調は、東郷氏の父が1980年に創業しました。80年代後半からバブル経済の波に乗り、日本屈指の大型リゾート施設「宮崎シーガイア(現:フェニックス・シーガイア・リゾート)」の建設に携わるなど業績を拡大。1990年には法人化し、「地域に根づき、地域に息づく100年企業をめざす」と掲げた経営理念のもと地域の人々の暮らしを支え続けています。

突然の事業承継

 創業後は順調に事業を展開していた同社ですが、バブル崩壊後に仕事量が減少し始めると同業者との価格競争に巻き込まれ、金融機関からの借り入れも難航して資金繰り難に陥りました。赤字でも仕事を引き受けざるを得ないほどの苦しい経営状況の中、先代である父に胆管がんが発覚し、その約1カ月後に50代半ばという若さで急逝。当時33歳で、営業所の責任者として赴任していた東郷氏が急きょ事業を引き継ぐことになりました。

 当初は経営に関する知識はなく、会社のめざす方向性や目標もなかったと言いますが、支えとなったのは社員たちの存在でした。「自分たちが会社をなんとかしないといけない」という意識が芽生え、自発的に仕事をするようになり生産効率が向上。それによって利益率も上がり、徐々に財務体質が改善していきます。自主的な社員たちの存在が、現在まで事業を継続できている大きな要因となりました。

SDGsとの出合い

 ある支部例会にゲスト参加した東郷氏は、グループ討論の中で会社の悩みを語ったところ、「今日は東郷さんの会社の話をしよう」と言われ同友会の温かさを実感し、2012年に入会しました。

 宮崎同友会では、企業経営を通したSDGsへの取り組みをいち早く会内で呼びかけており、それを聞いた東郷氏は自社での取り組みをスタートしました。まずは、宮崎同友会事務局長をファシリテーターに招き、SDGsについて学ぶカードゲームを社内で実施。すると、決して遠い世界の話ではないこと、自社にも取り組めることがあることに気づきました。

 金属パイプの加工を行う際には溶接作業が必須となります。もともと、当時主流だった「アーク溶接」という工法で作業していたものの不純物やCO2排出量が多く、「Tig溶接」という工法に切り替えてCO2排出量抑制と有害ガスの低減につなげています。また、溶接作業自体を減らすために工作機械の設備機器を導入するなど、気候変動対策への具体的な取り組みを進めています。

 また、健康診断で所見のあった社員には再検査の受診を促し、社内での健康維持促進に取り組むなど、ゴールとターゲットにあてはめながら自社でできることに取り組んでいます。SDGsの取り組みは経営指針書に盛り込み、全社員に配布して認識を深めることで、全社一丸となって持続可能な地域づくりに向けた活動を展開しています。

働く環境の継続的改善

 東郷氏は、SDGsの取り組みの一環として労働環境改善にも積極的に取り組んでいます。例えば、勤続年数にかかわらず20日間の年次有給休暇を全社員に付与しており、取得率や平均値を社内で公表して見える化することで、有休取得率の向上につなげています。

 また、以前は「先輩の背中を見て仕事を覚える」ことが一般的だったと言いますが、しっかりと仕事のやり方を学べる「技術研修会」を開催するなど、時代の変化とともに社員教育の方法も見直しています。全社員との個人面談を毎年実施し、要望などを聞きながらコミュニケーションを深めるとともに、自社の経営理念を繰り返し伝えることで社風の確立も図っています。現在では「会社がよくなるために何をするべきか?」をテーマに話し合う風土が出来上がっていると言い、社長自ら社員教育に関わることで、人が育つ組織へと変化してきました。

 2024年には、働きやすい職場として宮崎県の「ひなたの極」に認証されるなど、外部評価も受けています。SNSの発信に注力するなど、自社の存在と魅力を知ってもらうための外部発信も忘れません。東郷氏は、「自社の存在意義を地域の人々に知ってもらいたい。SDGsは各事業所と各個人が取り組むべきものであり、社員たちの成長と明るい未来をしっかりつくっていきたい」と、持続可能な企業と地域づくりに向けた展望を力強く語りました。

会社概要

設立:1980年
資本金:300万円
従業員数:20名
事業内容:空調設備工事、消火設備工事、設計・施工・保守管理ならびに一般配管工事
URL:https://toueikutyou.com/

「中小企業家しんぶん」 2025年 5月 15日号より