【変革と挑戦】
地域と企業が共に価値を生み出す「コミュニティ」へ 
オープンファクトリーCRASO(香川)

 香川の地場産業や伝統工芸に光を当て、企業見学を通じてその魅力を広く発信する「オープンファクトリーCRASSO(クラッソ)」は、地域に点在する中小企業が連携し、普段は見ることのできない製造現場や職人の技を公開するファクトリーツーリズムです。

 参加企業にとっては、社員の家族や地域住民、学生に自社の魅力を伝える貴重な機会となり、地域経済全体にも波及効果をもたらしています。

 CRASSOのきっかけは、2021年に開催された香川経営研究集会でした。「地域課題を本気で解決する」という議論の中で、企業の価値や地場産業の魅力を発信する手段として構想され、以降、回を重ねながら発展してきました。

 縫製業が多い香川県東讃地域(東かがわ市・さぬき市)は、コロナ禍により販路が縮小し、大きな打撃を受けていましたが、地場産業の魅力を発信する場を設けることで再興への糸口を見いだしました。運営は実行委員会形式を採用し、同友会の枠を超えて地域企業や行政とも連携しています。

 2024年には小豆島を加えた6地域で、過去最多となる35社が出展。4日間の開催で延べ5000名を超える来場者を迎えました。自社のPRに加え、「社員育成の機会」として活用する企業も増えており、普段は社外との接点が少ない社員が、クイズや体験を交えながら来場者に会社を紹介する姿も見られました。「見学者の驚きや感動の声に、自分の仕事が誇らしく思えた」と語る社員の姿は、企業内部にも確かな変化をもたらしています。「地域の他社とつながることができた」「社員が生き生きと話すようになった」といった参加企業の声も多く、横のつながりから新たなコラボや商品開発の芽も育ちつつあります。一方で、集客に苦戦する企業もあり、今後は出展企業間の社員交流を通じた“共創”の取り組みが重要となっています。

 CRASSOは今、単なるイベントから、地域と企業が共に価値を生み出す「コミュニティ」へと進化しつつあります。2025年には大阪・関西万博や瀬戸内国際芸術祭との連携も予定されており、香川のものづくりの魅力を、より広く発信していこうとしています。

「中小企業家しんぶん」 2025年 5月 15日号より