【連載 中小企業を働きがいのある職場に】
ものづくりを楽しむ♪(前編) 
(株)木村タイル工業 代表取締役 木村 稔氏(青森)

 黒瀬直宏・嘉悦大学元教授(特定非営利活動法人アジア中小企業協力機構理事長)が、中小企業の働きがいをキーワードに魅力ある中小企業を取材し、紹介する本連載。今回は、(株)木村タイル工業(木村稔代表取締役、青森同友会会員)の取り組み(前編)を紹介します。

祖父が創業

 木村タイル工業は1950年創業のタイルの専門工事店で、ゼネコンや地元建設企業など30社から仕事を受注しています。同社ホームページは「この70年間、大手ゼネコン様から地元の大工様までさまざまなタイル工事にご協力させていただきありがとうございます。おかげさまで公共・民間の新築・改修工事において5000件以上の現場でタイル工事の実績を積み上げることができました」と述べています。従業員は22名ですが、決して小さな企業とは言えません。「建設業」の1事業あたりの平均就業者は10・2人で、同社は平均の2倍となる従業員規模です。

 1950年に、レンガ職人であった木村氏の祖父がタイル・レンガの専門工事店を創業しました。祖父は戦争中レンガ防空壕づくりに従事し、戦争に行かずに済んだそうです。創業後ブロックへ(ブロック製造工場も建設)手を広げましたが、木村氏の父(1991年社長就任)の入社後、地震による倒壊で需要の減っていたブロック事業から手を引き、タイルに一本化することで、顧客を増やしました。コンクリート造りの増加で外観を飾るタイル需要も伸びるという時代動向に乗りました。

企業を継ぐ気はなかった

 現社長・木村稔氏は2000年4月に入社しましたが、初めは、毎日汚れた作業服で帰ってくる父親を見て、家業が「タイル屋」であることにコンプレックスを持ち、企業を承継するつもりはありませんでした。勉強をしないと「タイル屋」にされてしまうと、家出同然で関東の大学に入学。心境が変わったきっかけは、夏休みに帰省し、小遣い稼ぎで父親の会社でアルバイトしたことでした。怖さを感じていた職人たちはユーモアがあって面白い。おそらく職場の雰囲気がよかったからでしょう。父親は職人を家族扱いし、仕事で大事にしただけでなく、遊びでも職人を誘いました。泊りがけで遊びに行って父親が作ったまずい料理を食べさせられたといったような話も聞かされたそうです。また、自分が大学に行けるのは職人のおかげだということもわかりました。そうしたことから、タイル工事に関心がわき、体力にも自信があったので家業を継ごうと、大学卒業後入社します。同時に愛知県常滑市のタイル専門校にも1年通いました。木村氏はここで受講者と一緒に行ったタイル工事が楽しかったと言います。この時のタイル工事の楽しい経験は、タイル工事の楽しさをみんなで分かち合える企業にするという目標として現在に引き継がれています。

 入社時は職人の「手元」として職人を補助していましたが、入社して5年後、父親が脳卒中で倒れ、闘病に入ったため、現場管理を代行し、2014年、37歳で社長に就任しました。

若い人が欲しい

 入社は自ら希望しましたが、先代社長に条件も出していました。その1つが若い従業員の採用です。入社当時の従業員は6名、みんな立派な職人でしたが、木村氏の25歳上が一番若い社員でした。しかし、若い人は来てくれてもすぐ辞めてしまう。木村氏は社長になってから若手社員の採用に注力。直近4年ではタイル工事を行う工事部要員として6名の新卒(高卒)を獲得、うち3名は建設業界では珍しい女性です。6名中1名は退職しましたが東京への憧れのためで、東京でタイル職人を続けています。2020年に新卒で入社した女性社員が産休・育休後、今年4月に復帰したように、新卒者は定着しています。

 新卒採用の成功で社員は大幅に若返り、木村氏が入社した25年前の社員の平均年齢は50歳前後でしたが、現在は38歳です。また、同社従業員22名中工事部所属は17名なので、工事部での女性3名の比率は18%となります。以上は、次のような建設業の状況を勘案すると、画期的と言ってもよいことです。

建設業の人材状況

 産業の人手不足が進んでいますが、特に建設業では深刻で、2023年の建設技能者数は1997年に比べ33%も減少、しかも他産業より高齢化が進んでいます。建設業では技能者の高齢化による退職が進む一方、それを埋める若年者の入職が少ないため、技能者の高齢化と減少が同時に進んでいるのです。

 日本では人手不足への対応として女性の雇用が進められてきました。しかし、建設業の女性就業者比率は全産業の半分以下で、建設業技能者に限ると女性比率はわずか2・7%と、女性建設技能者はいまだ例外的存在です。このようなことの背景にあるのが、建設業界における労働条件改善の遅れです。

 建設業界では社員として雇っても「一人親方扱い」が多々見られ、日給月給で収入は不安定、社会保険にも加入していないことが多くありました。ただ、かつて低かった賃金に関しては改善が進み、現在では全産業を上回るまでになりました。しかし、労働時間にはまだ大きな差があり、1日8時間労働とすると、産業全体より年間31・5日分多く、むしろ差は拡大しています。その主因は建設現場で週休2日がまだ十分に定着していないことです。建設業に女性が少ないのは、現場で女性専用トイレや更衣室など設備がないこと、産休・育休制度が不十分なためです。以上の業界事業に照らすと、社員平均年齢38歳、女性技能者比率18%の木村タイル工業の先進性が際立ちます。

(後編に続く)

会社概要

設立:1950年
社員数:22名
事業内容:各種タイル工事、石・レンガ工事、インターロッキング工事、エクステリア(外構)工事、左官工事
URL:https://kimuratile.com/

「中小企業家しんぶん」 2025年 7月 5日号より