6月12日、「中小企業魅力発信月間キックオフ行事~憲章・条例活用推進シンポジウム」がオンライン開催され、会内外から370名が参加しました(6月25日号既報)。本号では、来賓あいさつや中小企業団体・労働団体からのあいさつなどを紹介します。
主催者あいさつ
中同協会長 広浜 泰久氏
みなさまご存じの通り、7月は中小企業魅力発信月間です。この月間に合わせて、われわれ同友会は多くのイベントを開催していますが、それには大きく3つ理由があります。
1つ目は、中小企業家であること、また中小企業で働いていることにもっと誇りを持とうということです。もちろん、誇りを持つにふさわしい自分たちであるために、自助努力も欠かせないことも申し合わせています。2つ目に、中小企業の役割や重要性を広く国民全体に認識してもらう機会にするということ。最後に、どんなに頑張っても報われない経営環境があるとすれば、それを改善する機会にしたいということです。
われわれ中小企業家が地域活性化の先頭に立つという気概を持ち、これからも運動を進めていきたいと考えています。そのためには、多くの皆さまとの連携が必要です。本日のシンポジウムが連携の第1歩となることを祈念して、主催者代表のあいさつといたします。
来賓あいさつ
中小企業庁長官 山下 隆一氏
米国による一連の関税措置などのリスクに直面する一方、現在、日本の名目GDPは600兆円を超え、国内設備投資も100兆円に達しています。また、賃金についても2年連続で5%を上回る上昇が実現しており、経済全体として成長と分配の好循環がようやく動き始めていると認識しています。われわれは長年、コスト型経済に苦しんできましたが、今後はその構造からの脱却を図り、デフレに後戻りすることなく、持続的な成長型経済へと確実に移行していく必要があります。そのためには、現在直面しているリスクへの備えを万全にするとともに、日本全国のあらゆる地域における成長力を強化していくことが極めて重要です。
政府としては、賃上げこそが成長戦略の要であると位置づけており、持続的かつ安定的な物価上昇のもとで、実質賃金の1%程度の上昇を定着させ、国民の所得増加と経済全体の生産性向上を図ることをめざしています。この目標を達成するためにも、中小企業・小規模事業者の皆様による賃上げの推進が不可欠です。そのために、適切な価格転嫁の実現や、生産性向上に向けた支援、さらには経営基盤の強化を図るための事業承継、M&Aといった取り組みを全力で後押ししてまいります。
また、経済指標ではデフレからの脱却が見えてきてはいますが、「デフレマインド」はなお根強く残っています。したがって、ここからの脱却が必要です。その主役になるのは経営者であり、その成長意欲、変革への意志のエネルギーがこの国の経済を変えていくものと確信しています。われわれもその取り組みを全力で支援してまいります。本日のシンポジウムの成功を心から祈念し、ごあいさつとさせていただきます。
来賓あいさつ
中小企業基盤整備機構 理事長 宮川 正氏
私は、昨年4月に中小機構の理事長を拝命し、2年目を迎えました。経済を牽引(けんいん)する主役である中小企業の経営者の皆さまとお会いし、その力強さと地域への貢献に日々感銘を受けており、中小企業の皆さまが力を発揮できるよう、適切なご支援、サポートをさせていただく所存です。
中小機構は、中同協や中小企業家同友会の皆さまと手を携え、「中小企業で働く皆さまが誇りを持てる社会の実現」に向けて尽力してまいります。
昨今は、人手不足、価格転嫁の難しさ、米国の新たな関税政策など、先行きが見通しづらい状況です。特に、海外展開している皆さまにとっては、政策動向によって事業戦略の柔軟な見直しが求められる場面も出てくると考えられます。
こうした外部環境の変化により、新たな市場開拓、人材確保・育成、DXへの取り組み、省力化など、経営課題そのものが高度化・複雑化してきているのではないでしょうか。中小企業家同友会の皆さまの強みは、そうした経営課題に対し、互いに知恵を出し合い、本音で相談できる経営者の仲間が全国に4万7000名以上おられることかと思います。
また、皆さまの経営課題解決の一助として、中小機構の施策もどんどんご活用いただければと考えております。経営に関して少しでもお困りごとがございましたら、私共の地域本部やよろず支援拠点などの支援機関へお気軽にご相談ください。
昨年7月に中小機構は誕生して20周年を迎えました。この間に多くの企業支援に関する専門的な知見と経験を蓄積してまいりました。これらをベースに、支援機関や金融機関などとのネットワークを組み合わせた総合的・複合的なご支援を通じて、皆さまと伴走し、経営課題の解決に向けて全力で取り組んでまいります。
中小企業団体あいさつ
日本商工会議所 中小企業振興部長 松本 憲治氏
本日は、中小企業魅力発信月間キックオフ行事の開催を心よりお祝い申し上げます。中小企業の魅力を社会に力強く発信していくことは、地域経済の好循環をつくるうえで非常に重要だと考えています。
足元の経済状況を見ると、30年ぶりの高水準の賃上げや設備投資の進展により、日本は成長型経済への移行に向けた好機を迎えています。中小企業は全国の雇用の7割、地方では9割を担い、その「稼ぐ力」が日本経済を支えるエンジンであると確信しています。一方で、人手不足や円安によるコスト増、金利上昇、消費の低迷といった逆風もあり、地域経済の二極化が顕著になっています。いまこそ生産性向上、付加価値拡大、適正な価格転嫁を可能にするビジネス環境整備が急務です。
さらに、米国の関税措置が世界のサプライチェーンに影響を及ぼし、中小企業への波及も懸念されています。商工会議所としては、政府に対し、粘り強い交渉や影響を受ける企業へのきめ細やかな支援策を政府に強く要望しています。
私たちは、DX・GX推進、イノベーション創出、販路開拓、事業承継、スタートアップ支援などを通じて中小企業の変革に伴走しています。加えて、税制措置の拡充や人材確保、資金調達環境の整備にも力を入れています。特に企業数の85%を占める小規模事業者は、地域の生産・雇用・安心のインフラであり、地方創生に不可欠な存在です。3月に閣議決定された小規模事業者振興基本計画(第Ⅲ期)のもと、経営指導員による支援もますます重要になります。
私たちは中小企業の応援団として、1社1社が持つ技術やネットワークといった資産を最大限に生かし、地域で稼ぎ、地域に還元する好循環の実現に向け、今後も力を尽くしてまいります。
中小企業団体あいさつ
全国商工会連合会 産業政策部産業政策課長 大澤 良介氏
中小企業の足元の業況は、円安・物価高の継続や構造的な人手不足、さらには米国の関税措置など、不確実性が依然として高い状況です。
加えて、最低賃金の大幅な引き上げにより、経営者が身を削りながら賃上げを行っていることが当会の調査でもうかがえるなど、前向きな賃上げばかりではない厳しい状況が明らかになっております。
このような中での中小企業の魅力の発信は、中小企業の特性や強みを理解し、自社に誇りを持てるようにするものだと理解しています。今後は、経営者としての経営力・リテラシーの向上、そして経営の自走化をめざすことが重要です。また、積極的な設備投資やデジタル化、適切な価格設定・価格転嫁の推進も求められます。
商工会では、中小企業・小規模事業者の事業継続と発展を支えるべく、新事業進出や事業転換、生産性向上、省力化投資など、事業者のさまざまな挑戦への伴走支援を行ってまいります。
また、政府の「地方こそ成長の主役」の発想に基づいた、大規模な地方創生策についても重要なテーマと位置づけています。
最新の中小企業白書では、倒産企業数は1万件を超え、商工会地域では過疎化も深刻であり、都市部との賃金格差の拡大などにより地方離れが加速しています。
地域経済の活性化には、地方創生の主役である中小企業が稼ぐ力を高め、起業・創業・事業承継などの新たな活力を生み出す取り組みが必要です。
本行事を契機に、同友会の目的にもある「相互に資質を高め、これからの経営者に要求される能力を身につける」が実現され、また、関係機関のさらなる連携強化と、皆さまのご発展につながることを祈念いたしまして、お祝いのごあいさつとさせていただきます。
中小企業団体あいさつ
全国中小企業団体中央会 常務理事 及川 勝氏
業憲章の「基本原則」には、「経営資源の確保が困難であることの多い小規模企業に配意し、中小企業組合、業種間連携などの取組を支援し、力の発揮を増幅する」と定められています。
全国中央会では、組合を通じて個々の企業の力が増幅できるよう、中小企業組合による価格転嫁に向けた共同交渉や集団的な交渉を推進しております。
例えば、先般、中小企業等協同組合法に基づき、日本自動車車体整備協同組合連合会と大手損害保険会社の4社との間で、修理工賃の基準単価を全国平均で引き上げる内容の「団体協約」が締結されました。中小企業組合が価格交渉することで、傘下組合員企業4000者全てで工賃が引き上がり、仮に1社当たり10人の従業員とすれば、4万人の従業員の賃上げ原資が確保されたことになります。
人手不足に対しましては、地域の事業者の存続のために人材派遣を行う「特定地域づくり組合」の設立、生産性向上に向けた「ものづくり補助金」、人手不足に対応するための「省力化投資補助金」を事務局として執行しており、中同協の皆さまとも引き続き面的な連携をさせていただきたいと考えております。
結びに、本会議が関係機関との一層の連携強化と、中小企業の意義と魅力を実感していただく機会となることを心よりご祈念申し上げます。
労働組合あいさつ
日本労働組合総連合会 事務局長 清水 秀行氏
平素より、広浜会長をはじめ中同協の皆さまには、各地域においても大変お世話になり、深く感謝申し上げます。今年の春季生活闘争に先立ち、中同協との意見交換を例年より1カ月早い3月10日に実施しました。事前に『中小・小規模事業者の適正取引と持続的に賃上げできる環境整備に向けた共同談話』を準備し、両組織や地方に展開できたことにも改めてお礼を申し上げます。
本日のキックオフ行事にあたり、連合の中小企業振興基本条例の取り組みをご紹介いたします。条例の制定は、連合の運動方針に掲げて取り組んでおります。昨年は、連合茨城と連合組織内議員の連携により、つくば市で条例が制定され、「労働組合の役割」も明記されました。連合茨城ではさらなる取り組み推進のため、集会で事例を共有しました。連合新潟・愛知でも同様の取り組みが行われ、新潟の三条市、愛知の西尾市でも条例が制定されています。
次に、2025春季生活闘争についてです。5月時点での賃上げは、労働組合全体で5・32%と昨年同期を上回る高水準です。一方で、中小組合の賃上げは全体平均を下回っており、格差拡大に歯止めをかけるには至っていません。この是正に向けては、共同談話でも触れた価格転嫁・適正取引の推進が必要です。「労務費の適切な価格転嫁のための価格交渉に関する指針」の認知が企業の価格転嫁実績につながっているとの国の調査結果もあり、周知と活用が求められます。
中同協が推進する「人を生かす経営」には、常々敬意を表しております。連合は、中小企業の経営基盤の強化と地域の活性化に向けて、「笑顔と元気のプラットフォーム」の取り組みを6年前から行っております。今後も、継続して取り組んでいきたいと思います。
労働組合あいさつ
全国労働組合総連合 議長 秋山 正臣氏
はじめに、中同協に参加されている経営者の皆さまが、社員とともに経営指針作りを進められるなど、日々努力を積み重ねておられることに深く敬意を表します。
また、最低賃金の引き上げなど全労連の取り組みに多大なご理解とご協力を賜り、厚く御礼申し上げます。
さて、米国のトランプ大統領就任以降、世界は混迷を深めているように思われます。
日本では、政府をあげて賃金引き上げが進められていますが、アメリカによる関税引き上げが賃金引き上げの流れに水を差すのではと懸念しております。
私どもは、労働者の賃金水準はまだまだ引き上げが必要と考えており、賃上げや政策の必要性について、皆さまと認識は一致しているものと思っております。
引き続き、中小企業支援策の充実と公正取引の実現を求め、皆さまと歩調を合わせ、政府に要求していきたいと思います。
ところで、経営者の皆さんや霞が関の幹部とお話しすると、若手の定着への危機感や、人材確保が十分にできないジレンマをお持ちになっています。
このままでは、それぞれの職場が持っている技術や経験が次世代に伝えられず、社会にとって大きな損失となることを懸念しています。
労働者が短期間で転職を繰り返す社会にしてはいけないと思います。中小企業は地域経済を支える中心であり、労働者の定着は重要な課題です。労働者が安心して働き続けられるよう、労働組合としても取り組んでまいります。
最後になりますが、持続可能な社会の担い手として、中同協の皆さまが、地域の中で大きな役割を果たされることを期待しております。
加えて、ご参加の皆さまのますますのご隆盛とご発展を祈念申し上げ、ごあいさつといたします。
まとめ
中同協中小企業憲章・条例推進本部 副本部長 杉原 五郎氏(大阪)
中小企業をめぐる経営環境が厳しさを増す中、本日はどの政党からも国を挙げた中小企業支援の重要性が共通して語られました。まさに、中小企業が経済を牽引し社会の主役であることを確認することができ、中小企業憲章が国会決議される可能性を実感できたのではないでしょうか。
黒瀬先生の基調講演では、中小企業こそがこれからの未来社会に向けて重要な役割を果たしていくことが理論的に解説されました。われわれ同友会の活動にも確信を持つことができたと思います。広島同友会からは、アンケート調査に基づいて現場の声を行政に届けている政策活動について報告され、景況調査の重要性を確認できました。また、香川同友会の菅社長の報告では、地域に根差し、文化や歴史を大事にしながら社会インフラを守り続けている100年企業の重みを感じました。こうした企業が同友会の仲間であることに大変勇気づけられました。
最後に、本日の学びをぜひそれぞれの同友会と地域で広げていただき、運動を進める契機にしてほしいと思います。同友会が掲げている目標に向けて、取り組まなければいけない課題はたくさんありますが、憲章を国会決議とするチャンスは広がっています。草の根から運動を盛り上げながら、一緒に頑張っていきましょう。
「中小企業家しんぶん」 2025年 7月 15日号より









