「中小企業における労使関係の見解(労使見解)」の発表50年を記念し、「労使見解とわたし~発表50周年に寄せて」をテーマに全国から多くの原稿が寄せられました。お送りいただいた原稿を連載で紹介します。
(株)フジタ地質 取締役会長 岡山同友会顧問 藤田 賢治
私は、1991年に同友会に入会させていただきました。同友会での学びの根底にあるのが労使見解であり、人を生かす経営、人間尊重の経営だと思っています。
2022年11月に代表取締役社長を現社長と交代いたしましたが、そのときに重視したのは人間尊重の経営の継承です。現社長は1997年に同友会の共同求人による新卒採用の社員です。事業承継にあたって2018年11月に、全社員に次のことを伝えました。
会社経営の後継者は、社員の中からと考えています。
オーナー経営者という立場から考えれば、M&Aが手っ取り早いし実入りも大きいかもしれません。しかし、創業の時から苦労を重ね、共に働く仲間と危機を乗り越え、理念を共有し、現在のフジタ地質があることを思えば、会社を身売りすることは、私としてははばかられます。M&Aを実施すれば、当社は買収会社の子会社となり企業文化も異なることが予想されます。
私としては、独立会社として永遠に社会に貢献し、事業、理念、企業文化を引き継ぎ発展させていただきたいと考えています。当社では、社員は単なる人手ではなく、会社を築き上げている人財であり、共に働く仲間です。また、業務を遂行する能力によって評価は必要ですが、人間としては仕事の能力に関係なく対等です。役職も人間としての地位を表すものではなく、役割だと考えます。人を生かす経営、人間尊重の経営を追求していく会社にふさわしい社員に後を託したいと思います。ぜひ、みんなで協力し合い、実務的にも人間的にも成長し合い、物の面でも心の面でも幸せを感じることができる会社と地域社会づくりに邁進(まいしん)していただきたい。
以上のことを伝えて4年後に社長交代いたしましたが、交代後も全社員力を合わせて順調に業績を伸ばしています。人を生かす経営、人間尊重の経営は全社員に浸透していったように感じます。労使見解の精神は事業承継においても欠かせないものだと思います。
(株)コマーム 取締役会長 埼玉同友会代表理事 小松 君恵
「労使見解」節目の50年、自社「こころ ま~るく むすぶ コマーム」は節目の30年。故きを温(たず)ねて新しきを知るの「温故知新」を超えて、未来を共に創って行こうという発想で「温故共創」と捉え、さらに「新たなステージ」に向かおうとする同友会運動や自社と自身の未来像を重ねて「労使見解」も温故共創を考察する機会にしたいと考えています。
会員経営者たちからの熱い取り組み報告を聞かせてもらうたびに、自社も自身も何も成せていないと感じることが都度あります。そんな折、昨年の宮城総会では「人を生かす経営『労使見解』の精神をもとに、真の人間尊重経営の実践」というテーマを頂戴し、大いに悩み、戸惑ってしまいました。あえいだあげく、「労使見解」を社員と共にめざす「ウェルビーイング」と柔軟に読みかえて、「ウェルビーイング」で自社の社会的価値を最大化「中小企業 まんなか 経済」へ~というテーマで報告することにしました。
その報告体験から、「労使見解」の発展形が「21世紀型企業づくり」にあることに気づかされました。21世紀企業づくりを進めるためには、まず、自社の存在意義を問い直し、何のために自社があるのか、未来につながるビジネスモデルがあるか、そういった経営姿勢の確立が重要になってきます。次に社員の創意工夫や自主性を発揮できる社風はどうしたら作れるかということになります。
自社は紆余(うよ)曲折がありますが、それを乗り越える次のビジョンを社員と共に共創していくことの重要性を感じています。目の前は辛いことが多いけれど、時には目線を上げてそれを乗り越えるようなはるか遠い壮大なビジョンを描いていくことで、これに賛同する仲間が1人2人と増えて社員と共によりよい幸せの「ウェルビーイング」共同体をめざしていくことだと考えています。
「新しいステージ」においては、「中小企業 まんなか 経済」にしていくために、同友会も自社もさらに仲間を増やし連携し合いながらやっていくということが必要です。1人1人の小さな力を大きな力にしていけば、いろいろな地域課題・社会課題を変えていくことだってできます。わたしたち中小企業家の小さな力を大きな力に変えて「中小企業 まんなか 経済」に変えていかなければ、社員だって幸せになれない。社員を最も信頼できるパートナーにするというのは、労使が一緒に世の中を変えていくというビジョンを社長が描き、社員を巻き込んで「ウェルビーイング」を地域に広げていく営みなのではないかと考えています。
「中小企業家しんぶん」 2025年 8月 5日号より









