【あっこんな会社あったんだ!】持続可能な経営 
若者が集まるミカン農園~革新を続け、地域産業を次世代へ 
(株)早和果樹園 取締役会長 秋竹 新吾氏(和歌山)

 企画「あっ!こんな会社あったんだ」では、企業経営に関わるさまざまな専門課題に取り組む企業事例を紹介しています。今回は「持続可能な経営」をテーマに、秋竹新吾氏((株)早和果樹園取締役会長、和歌山同友会会員)の実践を紹介します。

 和歌山県有田市でミカンの6次産業化を柱に農業経営を展開する早和果樹園は、1979年に地元農家の7戸の集まりからスタートし、2005年に株式会社化しました。少子高齢化が進む中、1次産業の人手不足が深刻化していますが、同社は現在、従業員100名余りを抱え、正社員の4割が20代と活気ある企業へと成長しています。創業者の秋竹新吾氏は、「若い人が入ってきてくれるのが、今の私たちの1番の強み」と語ります。

若手も高齢者も活躍できる職場

 若手人材の採用には特に注力しており、2014年から始めた新卒採用では、毎年4~6名が入社。今年も大学新卒4名と専門学校新卒1名を迎えました。インターンシップからの採用も多く、生産から加工・販売まで多様な仕事がある中で、本人の希望や適性を踏まえた配属を行っており、定着率の向上にもつながっています。秋竹氏は和歌山大学で講義も行い、「農業=高齢者の仕事」という固定観念の払拭に取り組んでいます。「新しい挑戦をしている話をすると、みんな本当に興味を持ってくれる」と秋竹氏。「地域の特産物を全国・海外に発信したい」「6次産業に携わりたい」と志望する若者が入社していると言います。

 また、高齢者の雇用にも積極的で、関連子会社では平均年齢76歳のスタッフが軽作業や社員食堂の運営を担っています。多世代が関わる職場環境も、同社の特徴の1つです。

 社員の成長を重視した組織風土も、同社の大きな強みです。「社員の成長なくして会社の成長はない」との考えから、社内外でのMG(マネジメントゲーム)研修をはじめとする教育制度を整備。また、社員の7割が女性であり、簡易託児所の設置や経産省の健康経営優良法人認定、男性の育休取得推進など、働きやすい環境づくりにも取り組んでいます。

地域とともに農業の未来を育む

 地域との共生も重視しています。有田地域は「ミカン一色」とも言える土地柄。同社では地域全体からミカンを集め、できる限り高く買い取る方針を貫いています。毎年の生産者大会では、農家の声を直接聞くとともに、技術の伝承にも尽力。「私たちは土着したミカンの会社。地域と共に歩まなければ、事業は成り立ちません」と秋竹氏は強調します。

 2010年には富士通と協力し、ICTを活用したスマート農業に着手。現在では自社独自で蓄積したデータを活用しているほか、ドローンによる急傾斜地での農薬散布なども進行中です。ICT活用は生産効率の向上にとどまらず、クラウド利用による製造・販売管理など6次産業全体のDX化による業務効率化へと広がっています。

売り上げ100億円の100年企業へ

 秋竹氏が同友会に入会したのは20年ほど前。異業種の経営者との交流は刺激的で、60代で特に多くの学びがあったと言います。有田支部の立ち上げと初代支部長も務めるなど、積極的に活動を続けてきました。

 同友会での学びから、経営理念の成文化を通じて社員をまとめる軸をつくり、その理念は現在の社長にも受け継がれました。事業承継が円滑に進んだ背景には、こうした理念や指針の明文化が大きく寄与しています。また、社員全員や金融機関と共に行う経営計画発表会も毎年継続しており、現在の指針書は167ページに及びます。「経営指針があれば、会社はブレずに成長できる」と秋竹氏は確信しています。

 現在、1番の問題はミカンの生産量減少だと言います。後継者不足など農業を取り巻く環境が不安定さを増す中、秋竹氏は「新商品開発などで、どう付加価値をつけるかが私たちの使命」と語り、子どもたちに対しては「自分が食べているものの背景を知る教育が必要」と教育の重要性を強調します。

 目標は「売り上げ100億円、100年企業」。その実現に向け、地域と共に歩みながら、持続可能なかたちで次世代へとつないでいく姿勢に、今後も多くの注目が集まりそうです。

会社概要

設立:1979年
従業員数:110名(常勤)
事業内容:みかんの生産、集荷・選別・出荷、農産加工、およびそれらの販売
URL:https://www.sowakajuen.co.jp/

「中小企業家しんぶん」 2025年 8月 5日号より