発祥の地「北海道」から切り拓く共同求人と社員教育の未来 
2025共同求人・社員教育活動全国交流会in北海道

6月17~18日に、2025共同求人・社員教育活動全国交流会in北海道が開催され、360名が参加しました。今回の特集では各分科会の座長報告などを紹介します。

第1分科会座長報告 “学び”と“働く”がつながる社会に
~中小企業と学校教育の連携が地域と自社の未来をつくる

報告者 文化庁次長 兵庫教育大学客員教授  合田 哲雄氏
座長 (有)小田商店 代表取締役 徳島同友会代表理事 小田 大輔氏

第1分科会では文化庁次長・合田哲雄氏より、大きく変化する学校教育と子どもたちがもつ価値観や能力の変化、学校と地域の企業は今後どのように連携していくべきかというテーマについてお話しいただきました。日本の学校制度が確立されて150年が経った今、教育現場では急速にデジタル化が進んでいます。その1つに2026年以降、学校におけるテストはCBT(コンピュータを活用したテスト方式)/IRT(項目反応理論)化に移行され、テストの点数による評価だけでなく、生徒それぞれの思考を多角的に評価するものに変わるそうです。将来、このような教育環境で育った若者たちを自社に迎え入れるということは社内のあらゆる整備だけでなく、われわれ大人たちのアップデートも必要になります。社員の報酬や処遇を決めるためだけに評価を行っていませんか? もちろんこれも大事なことですが、社員の未来を考え、1人1人と向き合う必要があるのではないでしょうか。

さらに、学校教育を変えるには、まずは制度や法律をきちんと理解した教育長を育て、行政や自治体に働きかけることが大事だというお話もありました。学習指導要領は10年単位で変わります。同友会の共同求人・社員教育運動を展開していくことで、たとえゆっくりでも教育現場は変わります。変わらないから諦めるのではなく、根気強く働きかけていくことが重要です。われわれ中小企業家が地域の学校と連携して若者を育てていくことが、地域と自社の未来につながると感じた分科会でした。

第2分科会座長報告 学生との関わりが社員の意識を変える
~プレインターンシップが若者を受け入れる企業風土をつくる

報告者 (株)板垣水道 代表取締役 山形同友会 庄内支部幹事 板垣 一紀氏
座長 (株)サニックス 代表取締役社長山形同友会専務理事・共同求人委員長 佐藤 啓氏

板垣さんが採用の課題に向き合うきっかけとなったのが、山形大学と山形同友会が協力して取り組んでいるプレインターンシップでした。この取り組みは、大学1年生を対象に、採用には直結しない教育型のインターンシップとして、学生たちが地域の企業で学ぶ機会を提供しています。

板垣さんの報告から、この取り組みが単なる学生の受け入れにとどまらず、自社の魅力や存在価値に気が付いて、風土を変えるきっかけとなること。さらに学校や行政、他の企業を巻き込むことで若者の採用や地域の定着につながる流れを作り出していることを学びました。討論では、若手社員だけでなく、ベテラン社員も共に成長する機会となること。また、勤労観や職業観を育む取り組みが若者に中小企業の魅力を伝える鍵になるという意見も多く上がりました。これらの議論を通じて明らかになったのは、採用と教育を一体として地域を育てる社会教育運動として取り組むことの重要性です。共同求人は単なる人採りの活動ではなく、人と企業を育て、地域をつくる活動であり、社員教育は経営者自身が社員と共に成長する共育ちの場です。社員は企業の担い手であると同時に、地域や社会の担い手でもあります。

不確実性の高い時代だからこそ、企業は未来へとつながる人材を育てる覚悟を持ち、地域に根差し、若者と共に歩む姿勢を持ち続けることが求められます。採用や教育に対する考えを深め、地域全体で未来を育てていきましょう。

第3分科会座長報告 自分たちの道は自分たち自身の手で切り拓く!
~これまでの50年を受け継ぎ、これからの50年を創造する

報告者
 (株)サンキョウ-エンビックス 代表取締役岡山同友会 副代表理事・社員教育求人委員長 浅野 浩一氏
 (株)サンキョウ-エンビックス 執行役員 岡根 誠佳氏
座長 (株)ファーストディレクションTAKEKICHI 代表取締役 岡山同友会理事・青年部長 木本 康大氏

浅野氏が5代目の社長に就任した当時、社内には長時間労働と低賃金、社員の主体性の欠如などの問題が山積していました。浅野氏は創業家が保有する株式を買い取り、役員報酬を圧縮して社員の賃金に還元するとともに、職く環境づくりと社員教育に注力しました。その結果、組織の風土は大きく改善したものの、浅野氏個人は巨額の負債を背負うことになりました。そして株式の問題が次の後継者の重荷になると考え、1度は購入した株をファンドに譲渡するという決断をします。「経営(経営陣)」「所有(株主)」「労働(社員)」の分離を図り、経営理念を中心に据えた上でそれぞれが自分の役割に集中すると同時に相互の利害関係を中立に保つことが、自社の持続的発展には不可欠と考えたのです。こうした中で岡根氏という後継者に出会い、バトンは次世代につながれようとしています。

「労使見解」にある通り、経営者には時代の変化に対応して経営を維持・発展させる責任があります。その一方で、どんな経営者であろうと永遠に経営を続けることはできないという厳然たる事実があります。だとすれば、自分がいない未来にバトンをつなぐことこそ経営者の大きな役割なのではないでしょうか。私はその際、理念を共有し、会社の成長を共にめざせる人材に事業を継承したいと考えます。そのような人材を育成するためには、自社の社会的存在意義や理念を明確化し、ビジョンを社員と共有して日々実践することが必要です。その実践こそが企業変革であり、21世紀型中小企業づくりそのものと言えるのではないでしょうか。経営の本質や未来へつながる視点を学ぶ分科会となりました。

第4分科会座長報告 若者に届くわかりやすい共育で働きがいのある社風づくりへ
~人生の豊かさを実感できる「真の人間尊重経営」をめざして

報告者 (株)レイジックス 代表取締役 北海道同友会常任理事・全道共同求人委員長 敬禮 匡氏
座長 (株)恒栄工業 代表取締役 北海道同友会全道共同求人委員会副委員長 上原 伸也氏

報告者の敬禮さんは、まず創業当初、地位・名声・お金といった目線での経営をした結果のしくじりを赤裸々に報告。その後同友会経営を本格的に学び、16年の年月を経て会社は社員と家族のため、という利他の精神へと変化し、腹落ちするに至ります。そして、企業理念、経営目的、社員本位の就業規則などできることから1つ1つ実行に移します。その時の最大の課題は、職人気質の中途採用者が大多数のなかでのチームとしての相互理解にありました。

敬禮さんは改革を急がずに、5カ年計画としてじっくり社風を醸成させるスタンスをとっていたのが、われわれにとっての学びでした。重要視したのは、人間的成長やチームを大切にする精神。それを社員理念として明文化し、分かりやすく項目化しています。自己成長の喜びを体感することを目的とした取り組みによって、社員がレイジックスで成長しようという機運が高まりました。また、それが同業者との差別化へとつながります。そして成長自体が評価に直結する評価制度、名実ともに成長自体が仕事の報酬という仕組みを実現させました。そうした敬禮さんの実践に分科会参加者は大いに学びました。

分科会の最後に敬禮さんが経営者に求められる資質を振り返るなかで話したのが、社員の本当の表情や考えていることが見えているのか、社員を人として尊敬し、本気で成長を願っているのか、です。最後の最後まで、人間尊重経営を求道し続ける姿が印象的でした。

パネルディスカッション まとめ
社員教育と共同求人の50年を検証しよう
―社会教育運動の原点からこれからを考える

パネリスト
 中同協共同求人委員長 川中 英章氏
 中同協社員教育委員長 梶谷 俊介氏
 北海道同友会全道共育委員長 安井 清吉氏
コーディネーター 中同協共同求人副委員長 佐藤 全氏

本日3名のパネリストの議論を聞き、改めて経営者がしっかり学ぶことの重要性を再確認させられました。経営者は忙しい、同友会はたくさん時間が取られる。それは事実でしょう。しかし、そこで働いている社員がこの会社で働いてよかったと言ってもらえるような、幸せな会社経営をしていくためには、経営者が全てやらないとダメなんだと感じました。

委員会活動に関しても、「何のためにやるのか」という本質的な部分を今1度議論してみてください。単なるイベントになっていないか、ただの運営議論になっていないか、再検証する必要があると思います。合説やインターンシップにしても「学生に何を伝えるのか」がしっかりと据えられていなければ失敗してしまうでしょう。同友会がめざす社会教育運動は、地域の子どもたちに「われわれが地域を支えているんだ」「ウチの仕事を通じてこういう風に社会はよくなってるんだよ」と、経営者自らがしっかり伝えるということが大事なのだと思います。それは社員をあてにするなということではなく、社員と一緒に話し合いながら進めていくことが大事で、単なる当番のような意識では、われわれがめざしている運動は進みません。今、運動のスタートから50年というタイミングで、われわれがどこまでできているのか。各県でも到達点と課題を明らかし、議論しながらこれからの10年を描きましょう。議論をベースにしたビジョンにすることで、参画する会員企業も増えていくでしょう。地域にとって同友会があってよかったと言ってもらえるような、われわれの活動を新たなステージにあげていくきっかけに、本日のパネルディスカッションがつながればと思います。

「中小企業家しんぶん」 2025年 8月 5日号より