中小企業魅力発信月間キックオフ行事「憲章・条例活用シンポジウム」事例報告

6月12日、「中小企業魅力発信月間キックオフ行事~憲章・条例活用推進シンポジウム」が開催されました。本号では、当日行われた2つの事例報告の内容を紹介します。

中小企業の声を発信し、 憲章・条例が生きる社会を
広島同友会 専務理事 源田 敏彦氏

 広島同友会は、毎年7月と1月に「経営課題と政策要望のアンケート調査」を実施しています。2024年7月のアンケートは回答数1906名(回答率61・7%)、1月のアンケートでは回答数2072名(回答率69・0%)となりました。2000名の回答は大きな力となり、行政や金融機関などから「他にはないアンケート」と注目され、地域からあてにされる存在になっています。

 コロナ禍以降、中小企業の現状を伝えようという機運が高まり、調査活動の意義を役員や政策委員会で改めて認識しました。多くの声を集めることが経営環境を変える力になることを実感し、より活発な活動につながっています。アンケートはe.doyuのみで実施しており、役員は高い熱量で目的を会員に伝え、回答状況は毎日把握して未回答者への声掛けなどをしています。結果は分かりやすく会員にフィードバックし、自社の経営改善に役立てるように働きかけるとともに、例会などのテーマでも取り上げています。

2000名のアンケートは「中小企業の声」に

 回答企業の平均社員数は20~23名ですが、この企業規模の景況調査は他になく、行政などからの要望を受けて毎回結果報告をしています。市町村別に再集計・ローカライズして各自治体にも届けており、市長に直接報告している自治体もあります。行政などは、このアンケートを「現場の生の声」として楽しみにしています。

 回答数2072社を県内の企業数で割ると約4・9%と、20社に1社が回答していることになり、「県内の中小企業の声」と呼べる状況になっています。それを踏まえた政策要望は、まさに「中小企業の願い」です。同友会に対する期待や責務に応えるためにも、会員増強とセットで活動を進める必要があります。対企業組織率とアンケートの回答率が向上することで中小企業施策に大きな影響をもたらし、憲章・条例運動の推進と中小企業の地位向上につながると言っても過言ではありません。

条例に基づく広島同友会の取り組み

 広島県呉市は、以前から若者の流出が課題でした。そこで、地元の企業や仕事を知ってもらう企業展を呉市との共催行事として開催しています。出展企業は会員に限定せず、地元企業はもとより県警や海上保安庁、海上自衛隊なども参加。7回目となる今年は高校生や保護者ら700名が来場し、高校生たちは仕事体験コーナーでさまざまな仕事にチャレンジしました。振興条例の下、企業にとっては人材不足を、地域にとっては若者の流出を防ぐための取り組みとなっています。

 次に、府中市立明郷学園(小1~中3までの9学年)は、コミュニティ・スクールとして模擬会社「Links」を生徒が経営し、実際に商品開発・販売を行っています。生徒たちは、経営を通して主体的に行動するように成長し、職業観や労働観を身に付けながら将来地元で働く、あるいは起業するという選択肢を育んでいます。7年生の終わりに、社長や部長などの役割分担を決めて先輩から事業継承し、8年生になって商品開発・試作・製造を進め、11月の文化祭で販売します。修学旅行の際には、東京にある府中市のアンテナショップで一般販売し、3月に次の世代に引き継ぎを行います。現在は、教育委員会も関わる府中市官民連携会議の中で、府中市全体の取り組みとして広げていくよう議論が進んでいます。

持続可能な街づくり
~事業を通した地域の活性化・持続性へのチャレンジ~
(株)菅組 代表取締役社長 菅 徹夫氏(香川)

 当社は香川県三豊市で建設業を営んでおり、一般建築や住宅、リノベーション、社寺建築などを行っています。1909年(明治42年)に私の曾祖父が創業しました。

 三豊市の人口は約5万1000人。最近は父母ヶ浜(ちちぶがはま)が有名ですが、以前の父母ヶ浜はごみが散乱していました。1994年ごろ持ち上がった埋め立て計画に反対した7名のメンバーが「ちちぶの会」を発足させ、そのうちの1名が当社の会長(私の叔父)でした。毎月、海岸の清掃活動を継続した結果、2016年にフォトコンテストで入賞した写真がきっかけとなり、父母ヶ浜の絶景が注目され、今では年間50万人の観光客が訪れるようになりました。当社も清掃活動への参加、駐車場の提供などを行っています。

 2021年に当社のサスティナブル・ビジョンを発表しました。そこには「私たちが企業活動を行うことで 地球が少しずつ再生され 地域社会が豊かになり 社員及び関わる全ての人びとが幸せになる建築・土木集団を菅組は目指します」と謳(うた)っています。

 環境方針も掲げていて、「将来にわたって郷土の美しい自然と風景、長く続いた文化と伝統を守り伝えていく」こと、具体的には持続可能な原材料の使用、国産材・地域産材の積極的使用などを方針としています。

 ビジョンと環境方針に基づいて、年次計画書では「事業を通して地域の活性化・地域の持続性に頁献する」ということを掲げ、地域産業の継続と活性化、宿泊事業の展開などに取り組んでいます。

 具体的な取り組み例として、「古木里庫(こきりこ)」という施設を開設し、古材や古建具、古家具の再利用、地域交流、地域の建築文化の保存・継承・再生などに取り組んでいます。

 また、2002年から大黒柱伐採ツアーを実施し、家を建てる方などが参加して大黒柱に使う木材の伐採を行っています。

 地域産業(経済)の持続性も特に大事にしています。建築は大工・左官だけでできるものではなく、いろいろな技能者(職人)の力を借りて初めてできるものです。家具屋さんや建具屋さん、畳屋さんなどさまざまな職人の力が必要ですが、どの業種も大変な状況にあります。家具や建具は既製品が主流になりつつありますが、当社ではできるだけ地元の家具屋さん、建具屋さんに製作をしてもらうことで地元の産業を活性化させる、そして伝統技能を継承していくことが大事だと考えています。そして地域産材を使うこと、地域種苗を使うこと(生態系の保護)など、地域性をいかに地域ゼネコンとして表現していくか、それが街の個性や観光産業にもつながっていくのではないかと考えています。

 アルベルゴ・ディフューゾ(分散型宿)という考え方があります。これをやろうと思ったのが10年余り前で、今少しずつ取り組んでいます。街の中に残っている古民家(空き家)を改装して宿泊施設にし、銭湯や飲食店、雑貨屋さんなどいろいろなお店と連携して街全体をホテルとして位置付けて街づくりに取り組んでいければと考えており、6月に新しい宿泊施設がオープンする予定です。

「中小企業家しんぶん」 2025年 8月 15日号より