【わが社のSDGs】
「タカハンの環境経営」~社員による“本気の省エネ” 
(有)高橋写真製版 代表取締役 髙橋 健一郎氏(宮城)

連載「わが社のSDGs」では、経営理念をもとにSDGsに取り組む企業の事例を紹介します。第25回は、(有)高橋写真製版(高橋健一郎代表取締役、宮城同友会会員)の取り組みです。

きっかけは電気料金の高騰

 (有)高橋写真製版(通称:タカハン)は、仙台市若林区に本社を構える印刷業です。同社が環境経営に本格的に取り組むようになったきっかけは、2022年のロシアによるウクライナ侵攻の影響による電気料金の高騰でした。取締役の高橋千春さんはまず老朽化したエアコンの交換を決断。「経費的にも、働く人にとっても問題だった」と語ります。猛暑や厳冬で快適さを欠く職場環境に、電気代は増す一方。そんな折に出会ったのが、仙台市の「温室効果ガス削減アクションプログラム」でした。

 補助金を活用しつつ、このプログラムに参加したことが環境経営の第一歩となります。ISO14001のような大規模認証とは異なり、中小企業向けに実行重視・地域密着の支援を行う制度で、タカハンの社風にも合っていました。

 取り組みは実に地道で、(1)人の多い部屋から順にエアコンを更新、(2)窓の目張りで断熱、(3)全社員に冬用フリース支給、(4)部屋ごとのビニールカーテンで冷暖房効率を向上、(5)全ての蛍光灯をLEDに交換―といった具体策を次々と実行。その結果、2021年比で電気使用量を48%削減し、仙台市からSランク評価と表彰を受けました。

 これらの成果を支えたのは設備だけでなく、社員の意識と行動の変化も大きな要因でした。削減効果は一過性にとどまらず、2023年、2024年、2025年と4年連続で前年同月比の使用量が減少。環境経営が持続的に根づいた証と言えます。

「当たり前」をつくるプロセス

 タカハンでは、毎月の電気・水道使用量を社内掲示し、見える化を徹底しています。年2回は社員全員で省エネ行動のチェックリストを記入。エアコンのオン/オフや照明・機器の電源管理、寒暖対策など、日々の小さな行動改善に継続して取り組みました。こうした積み重ねにより、「省エネは当たり前」という社内文化が育まれました。

 2024年には「脱炭素手当」を導入。電気・水道料金の削減によって生まれた利益を社員に還元する制度で、「CO2を減らせば自分に返ってくる」という実感が、さらなる行動変容とモチベーションの向上につながっています。

 こうした現場の取り組みを支えるのは、工場長の三浦将太さんです。三浦さんは、2013年から同社が参加している「同友エコ」のデータ記録担当として、電気や水道の使用量を毎月記録・グラフ化し社内に掲示。社員の意識を、「つけっぱなしが当たり前」から「こまめに消すのが当たり前」へと変えるきっかけをつくってきました。

 また、冷却設備を流水式から循環式に切り替えることも提案・実行し、水道使用量の大幅な削減にも成功。環境負荷の低減に大きく貢献しています。

環境経営を「頼みたくなる会社」の力に

 タカハンの環境経営の歩みは、2025年で4年目を迎えます。高橋社長は2003年の入社以来、地域清掃やエコキャップ回収などを1人で始めてきましたが、20年以上経った今では社員や近隣企業も巻き込む地域活動へと広がりました。「点でやってきたことが線になってきた」と環境経営のベースになっている実感を語ります。

 今後の展望として、タカハンは次の4つの挑戦を掲げています。

1.営業車のEV化

 補助金を活用し、5年間の総コストでガソリン車と同等となる試算のもと、敷地内への充電スポット設置も含めて導入を検討中。

2.印刷物への「環境の見える化」

 オンデマンド印刷とエネルギー使用量の表示を組み合わせ、名刺など小ロット印刷からCO2排出量の可視化に挑戦。

3.封筒の回収・リユース

 自社封筒に「回収します」と明記し、顧客からの返却を実現。リユース文化の定着をめざす。

4.環境配慮×印刷業の両立

 全社員が「環境を考える印刷会社」としての自覚を持ち、顧客との対話でも自然に環境意識が伝わる文化を育てる。

 タカハンの環境経営は、社員の行動、地域とのつながり、制度の活用、小さな工夫の積み重ねから生まれたものです。こうした実践が、「タカハンらしい」環境経営スタイルを確立しつつあります。

 電気代高騰を逆風に終わらせずタフに生き抜く力に転換させる姿は、地域に根ざしながら持続可能な経営をめざす中小企業らしい環境経営のロールモデルと言えるかもしれません。

会社概要

創業:1969年
設立:1982年
資本金:500万円
社員数:8名
事業内容:印刷製版業
URL:https://www.takahan.com/index.html

「中小企業家しんぶん」 2025年 8月 25日号より