第9回環境経営・地球環境交流会in広島 
山から海へ、人から地域へ~持続可能な地球と地域社会を実現しよう

6月26~27日、第9回環境経営・地球環境交流会が広島で開催され、27同友会と中同協から153名の参加がありました(7月15日号既報)。本特集では、4つの分科会レポートと記念講演要旨を紹介します。

第1分科会
【石川】地域をつくる環境農業~環境給食で地域未来を創る~
農事組合法人北辰農産 代表理事 石川同友会理事/地域政策委員長 舘 喜洋氏

 第1分科会は舘喜洋氏が「地域をつくる環境農業」をテーマに報告しました。石川県白山市を拠点に米の生産・加工・販売を手掛ける北辰農産は、手取川の伏流水や白山おろしなど恵まれた自然環境のもと、先代から続く減農薬・無農薬の米作りに取り組んでいます。大学卒業後に家業を継いだ舘氏は、米価下落の中でお米に新たな価値を加えるため、地元和菓子店から受け継いだ技術で餅作りを開始。無添加で素材の味を生かす加工品ブランド「稲ほ舎」を立ち上げました。

 同社は、生き物や環境に配慮した栽培を徹底し、害虫駆除も手作業で行うなど手間を惜しみません。さらに、地域農家や学校、行政と連携し、白山市のオーガニック給食や体験農業、白山手取川ジオパーク教育など、地域循環型の農業モデルを推進しています。

 また、SNSを活用して生産の裏側も発信し、地域の魅力や農業文化を広く伝えています。

 同友会で経営理念を確立して以降は、ブランド力や売り上げ、社員数が大幅に成長。次なる挑戦として「環境経営」を掲げ、地域と共に歩みながら持続可能な未来を切り拓く強い意思が伝わる分科会でした。

第2分科会
【広島】山の豊かさを守るために、社員を守るために、お客様を守るために!“働くを「ワクワク」にするSDGsの取り組み”
ユダ木工(株) 代表取締役 広島同友会理事/県環境経営副委員長 湯田 卓氏

 第2分科会では、湯田卓氏が「山の豊かさを守るために、社員を守るために、お客様を守るために!」をテーマに報告しました。同社の主事業は木製ドアの製造です。かつては100%輸入木材を使用していましたが、湯田氏が「漁民の森づくり」に参加したことをきっかけに森の荒廃が地域課題となっていることを痛感。「葉っぱの世紀のはじまり。」をスローガンに、国産材の利用や節のある木材の活用、梱包資材の見直し、本社の屋上を利用した都市型養蜂などさまざまな取り組みを着実に進展。そしてコロナ禍を経た2021年には社内の夢ビジョン委員会を中心に「2030ビジョン」を策定し、社員の手でビジュアル化しました。社員と共に、働くことをワクワクにするため、ウェルビーイング経営に取り組むことの意義を確認した分科会でした。

第3分科会
【広島】きれいな海から豊かな海へ~持続可能な水産業加工業への挑戦~
クニヒロ(株) 代表取締役 広島同友会尾道支部理事/求人社員教育・役員研修大学担当 新谷 真寿美氏

 第3分科会では、新谷 真寿美氏による水産業の持続可能性に向けた企業実践が紹介されました。広島県尾道市を拠点とする同社は、カキフライなどのOEM生産を行う加工会社社です。

 クニヒロでは、ISO14001に基づく電力・水・廃棄物管理に加え、ブルーカーボンクレジット購入や海岸の清掃活動など、環境負荷の軽減に積極的に取り組んでいます。

 また、地域資源の再生や廃棄物の有効活用にも注力しており、尾道市山波地区でアサリの試験養殖を推進。社員や住民も巻き込み、「尾道アサリ祭り」やクラウドファンディングなど、まちぐるみの活動へと広がっています。さらに、カキ殻のアップサイクルや地元スタートアップとの連携による新たなビジネス創出にも挑戦中です。

 海外展開においては、EUHACCPの認証を取得し、日本初となる生食用カキのヨーロッパ向け輸出を実現。冷凍技術や品質管理を徹底し、業界全体の信頼性向上にも貢献しています。さらに塩田跡地を活用した養殖やベトナムとの国際連携など、次代を見据えた取り組みも進行中です。

 カキ業界のリーディングカンパニーとして、業界や地域と共に歩みながら未来を切り拓く強い信念が伝わる分科会でした。

第4分科会
【福岡】強い田舎を創りたい~やっぱ八女がよか~
(株)アズマ 代表取締役 福岡同友会環境経営委員長 中島 一嘉氏

 第4分科会では、中島一嘉氏が地域課題解決型の実践を報告しました。中島氏は地元八女市で、建築板金や太陽光発電を手掛ける企業を経営しています。人口減少や若者の都市部流出といった地域課題に直面したことから、「強い田舎」の実現をめざして行動を開始しました。

 2017年には、地元企業73社の出資で八女エネルギー(株)を設立。地域で消費するエネルギーを地域内で生み出す「地消地産」型モデルを構築し、災害時の電力確保にも役立つ蓄電池を、消費者に負担なく提供できるサービスを展開しています。

 さらに地域づくりの取り組みとして、2022年には行政・企業・市民を巻き込む共創プラットフォーム「八女スマイル研究所」を設立し、SDGsをテーマとしたワークショップや全国地域エネルギーサミットを開催。活動に関わった地域の人たちと地域課題解決を目的としたビジネスを立ち上げ活動資金を確保し、若者への資金支援や、中小企業共同で人材教育や交流を行う「八女市人事部」の構想など、多様な活動を行っています。

 これらの取り組みにより、市民や行政との距離が縮まり、若者主体の地域づくりが徐々に浸透しています。

 中島氏は「強い田舎をつくりたい」を旗印に「お互いの立場を理解したゼロベースでの対話」や「小さな一歩から地域循環をつくること」の重要性を強調し、孫世代が誇れる八女市の実現をめざしています。

【記念講演】
エフピコモデルの資源循環型リサイクル
(株)エフピコ 執行役員・サステナビリティ推進室ジェネラルマネージャー 冨樫 英治氏

会社概要

 当社は1962年に創業しました。主にスーパーマーケットなどで使用されている食品トレーなどの製造・販売を行っています。連結の売上高は2356億円で、そのうちトレーの製品販売が約1800億円。その他はスーパーのバックヤードに使われる仕入れ商品の商品販売による売り上げです。

 年間260億枚以上のトレーを生産しており、国内で流通しているトレーの約3枚に1枚は当社の製品です。しかしトレーは、使い終わるとごみになってしまうため、見方によっては当社は「ごみを作っている会社」ともなってしまう可能性があります。そうならないために、当社ではリサイクルに力を入れてきました。

 当社では生産・配送、そしてリサイクルの拠点を全国各地に置いています。なぜなら、トレーは単価が安い(一般的な四角い食品トレーは4円程度)上にかさばるので、消費地に近いところで作らなければ利益が出にくいからです。リサイクルを効率的に進めるためには、使用後のトレーを商品配送後のトラックを使ってうまく回収しなければなりません(静脈物流)。そのため、当社では全国に物流ネットワークを構築し、各拠点100キロメートル圏内で全人口の85%をカバーしています。物流を担うグループ会社もあります。

 容器包装は日本特有の業界の1つで、四季に応じた商品のカラーコーディネートをしなければなりません。また当社の主な顧客はスーパーで、お客さまは毎日スーパーにお買い物に来ます。そのため売り場をマンネリ化させないこと、何か新しいものを提供することが重要になります。スーパーはセルフ販売方式なので、まずはお客さまに商品を手に取っていただかなければなりません。そのきっかけになるのが当社の製品です。例えば、外国産の安いお肉と国産の高級なお肉があるとします。前者には白い普通のトレーを、後者には木目柄の高級感のあるトレーを使うと、商品を差別化することができます。値段や付加価値の違いが一目で分かるようになるのです。当社の製品はそのような役割を担っています。

SDGs・プラスチックをめぐる動向

 SDGsがここまで普及したのは、達成に向けた取り組みを企業に求めたこと、SDGsへの取り組みを企業の評価軸の1つとしたからだと思います。例えば当社のような製造業であれば「つくる責任、つかう責任」の下、拡大生産者責任をいかに果たすかということになります。また「つかう責任」は、消費者の側にも責任があることを示していることもポイントです。これは使う側にもどの製品を使うかを選択する責任があるということですから、私たちは消費者に選ばれる商品を作らなければなりません。当社でもマテリアリティ(重要課題)を定めてさまざまな取り組みを進めているところです。

 続いてプラスチックに関する動向です。2017年、中国が廃プラスチックの輸入を規制するようになりました。欧米諸国は自国で廃プラスチックの処理ができないため、これをきっかけとして急速に「脱プラスチック」が進みました。しかしコロナ禍で、医療用手袋やマスク、デリバリー容器などプラスチック製品が再度使われるようになりました。するとプラスチック製品の特長に改めて注目が集まるようになり、「プラスチックの廃棄処理こそが問題なのではないか」という意識が高まったことで、資源循環、そして「活プラスチック」へのシフトが進行。現在では、脱炭素社会・資源循環社会への取り組みが世界的に進んでいます。

 ここで重要なのは、社会的課題をトータルで検討してみるということです。例えばバイオマスプラスチックへのシフトは有効ですが、一方でその原料になる植物・穀物の不足や穀物を食料としている家畜にも影響します。こうしたトレードオフに留意しつつ、多面的に考えることが重要だと思います。

当社における取り組み

 当社製造のトレーは、問屋を通じてスーパーに卸されます。スーパーで食材がトレーに詰められ、消費者に販売されます。使い終わったトレーは消費者の皆さまがわざわざ洗って乾燥させて、スーパーなどの店頭回収拠点に集められます。それを当社が回収してリサイクル工場で再資源化し再びトレーを生産します。これが当社のリサイクルモデルです。

 当社が独自方式のリサイクルを開始したのは1990年です。当時はリサイクルに関する制度も法律も整っていない時代でした。そんな中でリサイクルを始めたきっかけは、米国で起こったファストフードチェーンに対する不買運動です。現在ではハンバーガーなどの商品は紙で包装されていますが、かつては発泡スチロールを使っており、フロンガスの使用が問題視されたのです。創業者の小松安弘氏は「こうした運動が日本に広がればわれわれの商売が成り立たなくなる。何も手を打たなければ不買運動となり会社がつぶれてしまう」と危機感を持ち、企業防衛としてリサイクルを決断しました。この決断がなければ今の当社はありません。

 そこで始めたのが、使用後のトレーを消費者がスーパーの店頭の回収ボックスまで持ち込み、当社の配送トラックで回収するという仕組みです。回収されたトレーは自社のリサイクル工場へ運ばれ、洗浄・選別・再資源化されて、再びエコトレーとして生まれ変わります。この「使い終わったトレーがまたトレーに戻る」仕組みが水平リサイクルです。開始当初は、回収したトレーを再資源化した原料でペンスタンドや貯金箱などの製品プラスチックに再利用していました。しかしこれでは売れませんし、売ったらそれきりです。そのため水平リサイクルをして、再び自社の製品に戻そうと考え、1992年に「エコトレー」の販売を開始しました。リサイクルだけでは赤字でも、リサイクルで出た再生ペレットから製品を作ることで付加価値を生み、その赤字部分をカバーするというわけです。

新たな取り組みの進展

 2008年には透明容器のリサイクルも開始しました。集めた透明容器は近赤外線によりOPS(2軸延伸ポリスチレン)、PET(ポリエチレンテレフタラート)、PP(ポリプロピレン)に選別します。OPSはそのままエコトレーの材料とできる一方で、PETは従来、当社ではリサイクルしていませんでした。しかし回収を続けていくと、回収量の50%はPETであることが分かり、このPET素材の透明容器を効率的にリサイクルするための資源として使用済みペットボトルに目を付け、2011年にペットボトルのリサイクルを開始しました。

 資源循環の観点からエコ製品への関心も高まっており、2025年3月期にはエコ製品だけで913億円の売り上げ、エコ化率は枚数ベースで51%となりました。脱炭素の観点でも、エコ製品の製造で削減できる二酸化炭素排出量は2025年3月期で20・9万トン。これはグループ全体の排出量の17・9万トンを上回っており、これは当社がエコ製品を製造することにより地球全体としての脱炭素に向けた当社の存在意義を改めて確認することができます。

 また、最近ではお店で使用された食品トレーやペットボトルをその店舗で回収し、その資源をエフピコで再生した食品トレーとしてまたその店で使用する「ストアtoストア」という取り組みを推進。当社のエコ製品へのエコマーク・ペットボトルリサイクル品である旨の刻印なども進め、お客さまと共に資源の有効活用を進めています。

 そのほか、本社所在地である福山市との連携協定締結や「エフピコ環境基金」(社会的課題の解決をテーマに活動する団体への助成制度)にも取り組み始めました。

能力を最大限に生かすダイバーシティ経営

 回収したトレーの選別や食品トレーの成形・組み立て工程には障害者を数多く雇用しています。具体的には、障害者の実雇用人数は401名、障害者雇用率換算数は676名、障害者雇用率は12・6%となっており、法定雇用率を大きく上回っています。全国各地に回収拠点(選別センター)があり、彼らの力なしでは当社のリサイクル事業を継続していくことはできません。

 今後もこうした取り組みをさらに進展させ、「地球の未来をトレーにのせて」という合言葉の下、持続可能な社会づくりを進めていきたいと思います。

「中小企業家しんぶん」 2025年 9月 5日号より