8月6日、オンラインにて2025組織強化・会員増強全国交流会が開催され、44同友会と中同協から434名が参加しました。問題提起と3県の実践報告の内容を紹介します。
問題提起
全国の組織強化・会員増強の課題と今後の仲間づくり
5万名推進・組織強化本部長/中同協幹事長 中山 英敬氏
中小企業を取り巻く環境の変化として、昨年は改正産業競争力強化法が施行され、新たに中堅企業が定義されました。政策が大企業と中堅企業に集中し、新陳代謝を促して再編しようと中小企業を軽視するような論調も出ている中、会員増強の意義がとても大きくなっています。まずは、引き続き21世紀型中小企業をめざし、発表50年を迎えた「労使見解」に基づく人間尊重経営を学び直して企業づくりを進めましょう。中同協では、経営指針の成文化・実践から確立へと呼び掛けています。経営指針の確立とは、企業変革支援プログラムの成熟度レベル4の状態を指します。企業変革支援プログラムの活用を広げながら、社員と共に指針の見直しと改善を行うPDCAサイクルを社内に構築しましょう。
各同友会の活動実態調査から
4月1日の全国会員数は4万7559名と、2年連続で過去最高会勢を更新しました。コロナ禍からのV字回復の勢いが弱まり、入会者数が横ばいの一方で退会者数は増加傾向にあります。対企業組織率10%を超えている市町村は64あり、全国で約8割の地域に会員企業が存在しています。例会数は2006年の調査開始以来、初めて7000回を超えました。グループ討論の実施率は12・7ポイントも増加しましたが、討論時間が短い傾向にあるのが気になるところです。入会対象者の参加者数は平均3・9人と伸びており、クロージングを工夫することで入会者が増えると予想できます。
企業づくりでは、経営指針成文化セミナー(創る会)の開催数は増えましたが、課程を修了した会員数は減少しています。会員の実態と成文化率を把握することが重要です。また、対外関係では「政策要望提言をしている」は17同友会にとどまっており、現場の声を届ける活動を増やすことが課題です。景況調査の回答率が高い同友会では、調査結果を記者発表などで対外的に発信しているほか、行政や金融機関との懇談でも実態を伝えるツールとして活用が進んでいます。
さらなる増強の勢いを
秋田(20年連続)と島根(23年連続)は創立以来最高会勢を更新しています。また、山形(3年連続)、神奈川(3年連続)、長野(7年連続)、愛知(2年連続)、兵庫(18年連続)、宮崎(2年連続)も過去最高会勢を更新しました。順調な同友会もあれば苦戦しているところもありますが、中同協は組織率5%を目標に掲げ、通過目標として5万名会員をめざしています。まずは全国の組織率3%を達成し、早期に5万名を実現しましょう。
確認しておきたいのは、同友会運動は安定した役員体制と事務局づくりができて初めて発展できるということです。会員増強は中小企業の社会的地位向上のために重要な活動ですので、目標を達成すれば大いにたたえ合い、未達であれば振り返りをして課題を明らかにしましょう。全国で共通した課題は小規模企業への対応です。小規模企業にも学びや気づきが多い場になっているか、活動を見直しながらさらなる勢いをつけていきましょう。
事例報告(愛媛同友会)
基本に忠実に活動すれば会員は増える
岡田印刷(株) 代表取締役/愛媛同友会副代表理事 桑波田 健氏
愛媛同友会は、設立40周年の2025年度までに会員540名を目標に活動しました。結果として達成には至りませんでしたが、2023年度は入会94名・退会47名で純増47名(純増率11・5%)という、愛媛として画期的な成果を上げました。特に今治支部では純増率33・4%を達成し、成功体験を築きました。
成果の要因は3つあります。1つ目はトップの意思決定、2つ目は他同友会の事例を学ぶこと、3つ目は戦略・戦術です。
リーダーを期待されていた方の急逝や事務局の人員減少など、逆風の中でも代表理事が「やる」と宣言。数値目標を下げず挑戦を続けました。
2023年度の初めに決起集会とスタートアップ集会を開催し、広島同友会から事例を学びました。組織委員会を設け、支部ごとに増強専門の委員を配置。『組織強化・会員増強の手引き』の読み合わせを行い、過去の「厳しい増強活動」への反発を解消しました。
また、新会員オリエンテーションを定期開催し、理解を深めた新会員がゲストを招く好循環を創出。入会候補者には必ず入会の意向を確認しました。
2024年度は組織委員会を正式に設立し、各支部の進捗報告とPDCAを回す体制を確立。支部の幹事会や委員会では「増強の意義」を再確認し、単なる数字目標ではなく組織発展の目的を共有。理事が先頭を切り、支部ごとに目標と計画を立てました。
私の活動の原点には、私自身が同友会に救われた経験があります。「経営と同友会活動は一体」という信念のもと、現場=各支部に足を運び、意思疎通を重ねました。近道はなく、愚直な積み重ねこそが組織を強くすると実感しました。
今治支部の会員増強の取り組み
(株)平野 代表取締役/愛媛同友会理事・今治支部長 松田 泰幸氏
2024年度、今治支部は「全研までに純増30名」を掲げ、純増14名・純増率33%という成果を上げました。
まずは支部指針書を作成し、増強の意義や数値目標、具体策を明確化。全国大会(全研)という大きな目標を共有し、支部全員でプラス30名の会員増加をめざしました。増強の実践では、前年の三重全研での交流で得たアドバイスを軸に動きました。複数名でチームを組み、誰にどうアプローチするかを計画的に行動すること、周囲に頼ってゲストを紹介してもらうことなどです。
さらに対象者の視点を「入会しそうな人」から「一緒に学びたい人」に変え、古参会員にも再度声かけを促しました。例会もゲスト特化型のものを企画し、若手・後継者、女性経営者、飲食店関係者、建築業界などターゲットを絞った勧誘例会を開催。懇親会のクロージングも重要視し、ゲストを囲む配席にして課題や悩みを引き出し、入会への動機づけを行いました。また感想発表の場を設け、ゲストから前向きな発言が出れば入会への背中押しを徹底しました。
これらの取り組みにより、期首42名から期末56名、純増14名を達成。8カ月連続入会という記録も生まれ、支部全体の活性化にもつながりました。連続入会記録の達成や情報共有の活発化が、会員のモチベーション向上と地域交流の強化にも寄与しています。今治支部ではこの好循環をさらに発展させ、未達部分の目標達成に向けて継続的にPDCAを回しながら取り組んでいます。
事例報告(岩手同友会・岩手リアス支部)
震災を乗り越え、世代を越えて学び合う伝統を継承する
(有)橋勝商店 代表取締役/岩手リアス支部長 橋詰 真司氏
岩手リアス支部の前身である気仙支部は、2007年に県内初の沿岸支部として28名で発足しました。広大な地域に点在する会員間の距離を縮め、深い絆を築くために「学ぶ場の創造」を合言葉に活動を展開。多くの経営者が複数の経済団体に所属している地域特性を生かし、他団体の活動に積極的に参加することで同友会の存在を広めていきました。
支部の創立以前から宮城同友会の経営指針作成セミナーに多くのメンバーが参加し、お互いの決算書を開示し合うほどの深い信頼関係が築かれていました。そのような中で「何のために会社を続けるのか」「なぜ地域を存続させなければならないのか」といった本質的な問いを、世代を超えて愚直に語り合う風土が育まれていったのです。
初代支部長の田村滿氏((株)高田自動車学校取締役会長)は、深刻化する地域の人口減少に強い危機感を抱いていました。そこで「地域の企業を1社もつぶさない、つぶさせない」というスローガンを掲げ、地域課題の解決と経営指針の実践を支部活動の中心に据え、社員と共に育ち合う会社づくりを呼びかけ、地道な努力を重ねてきました。
まもなく100名達成直前での被災
例会には行政や金融機関、ゲストなど多くの人々が集うようになり、会員100名の達成も目前に迫っていた矢先に東日本大震災が発生。会員企業も甚大な被害を受け、厳しい状況の中、市役所などの公的機関と共に地域の受け入れ拠点となって被災した方々の困りごとに耳を傾け、奔走しました。震災から3週間後の2011年4月に陸前高田で開催した合同入社式では、地域の存続と再生に全力を尽くすことを誓い合ました。
しかし震災後しばらくの間は、例会の参加者が1桁の日々が続きました。それでも腹を割ってかんかんがくがくと話せる風土は失われることなく、地域課題と自社課題を出し合い、対話を重ね続けました。この経験は「自分たちが変化したように、地域そのものも変わっていくことができるのでは」という気づきとなり、活動を後押ししました。そして2025年、会員100名達成が見えてきました。さらに中期目標として150名を掲げ、新たな歩みを続けています。
気仙の未来の子どもたちへ
また、私たちは地域の未来を担う子どもたちのために、エネルギーシフト(ヴェンデ)に取り組んでいます。欧州視察を通じて得た知見を基に、異業種や異分野の企業が連携して持続可能な仕組みをつくる「地域版コングロマリット」の実現をめざして活動を進めています。
地元の建設業界は、依然として厳しい状況にありますが、「家をつくる」という共通の目的のもと、建築・土木・設備などの異業種が連携しています。地域の技術を集結させた最高の家を建てることはもとより、ごみやエネルギーの循環を視野に入れた提案を行い、住む人が地域循環の一員となれるような仕事づくりにも挑戦しています。
困っている人に自然と手を差し伸べ、辛いことを「辛い」と素直に言える関係性が当たり前の社会。そんな未来を、私たち中小企業家の手で実現していきたいです。
事例報告(長野同友会・しおじり木曽支部)
仲間づくり、ホントの仲間とは?
(有)テヅカ精機 代表取締役社長/しおじり木曽副支部長/中同協青年部連絡会代表 手塚 良太氏
ものづくりからまちづくりへ
私は、1976年に父が木曽郡木曽町で創業した会社を引き継ぎ、グループ全体で社員数150名、売り上げ10億円を超える企業へと成長してきました。カメラや電子部品の組み立てから事業を多角化し、木曽町を拠点に複数のグループ企業を展開するまでになっています。
当社の経営理念は「ものづくりからまちづくりへ」、ビジョンは「月曜日がワクワクする人が輝く信頼企業」です。これは社員と共に話し合って策定したもので、安心して働き、誇りを持てる企業づくりと、地域活性化の両立をめざしています。木曽町は急速な人口減少と高齢化に直面し、事業承継ができずに廃業を選ぶ企業も少なくありません。地域経済を支えるためには、企業の成長と人材の定着が不可欠だと痛感しています。
自社を圧倒的に伸ばせー「木曽塾」「ミニ例会」
長野同友会は2016年にしおじり木曽支部を立ち上げました。設立当初は28名でスタートしましたが、例会参加者が少なく、活動は停滞しがちでした。その際、先輩から「まず自社を圧倒的に伸ばせ」という助言をもらいました。自社の成長こそが仲間を増やし、地域の信頼を得ることにつながると気づき、経営指針を徹底的に実践し始めました。
その流れの中で生まれたのが、独自の経営指針策定プログラム「木曽塾」です。理念づくりから方針・計画までを1年かけて学び、実践につなげる仕組みで、地域の中小企業経営者が共に学び、励まし合いながら経営を改善していけるよう工夫しました。実際に参加した旅館業や商店などが業績改善に成功し、口コミで若手経営者が次々に入会しました。例会づくりでは、都市部から離れていることを逆手にとり、毎月ミニ例会を開催するようにしました。地域連携推進の場として経営者だけでなく、行政職員や金融機関などを誘い、地域の未来を広く考える機会に方針を転換しました。ミニ例会を継続していくうちに参加者が増加し、今年の2月には全国から117名が参加する大規模な例会も開催できました。その結果、しおじり木曽支部の会員数は2025年現在で50名まで増えています。
さらに、地域おこし協力隊の方々にも「木曽塾」を受講してもらい、卒業後に木曽町に定着して起業する事例も生まれています。行政や金融機関、学校とも連携を深め、地域課題を共有し、解決策を模索する場を設けています。こうした取り組みを通じて、同友会の学びが地域全体の人材育成や産業活性化に結びつきつつあると実感しています。
私は、支部活動は「地域と企業の両輪」だと考えています。地域の未来を支えるためには、企業が成長すると同時に、地域に必要とされる存在になることが不可欠です。自社の発展を土台としながら、仲間を増やし、学びを共有し、地域に貢献する。この循環こそが、持続可能な地域経済の力になると信じています。数年前は移住者が全くゼロでしたが、昨年は77組の家族が移住し、雇用の受け皿を同友会の会員企業が担っています。これからも「ものづくりからまちづくりへ」という理念を胸に、木曽町の未来を見据え、つながりの連鎖を生み出していきたいと思います。
「中小企業家しんぶん」 2025年 10月 5日号より









