同友エコ2024―2025受賞企業を紹介する本連載。今回は、奨励賞を受賞した宮原酸素(株)(長野同友会会員)の取り組みを紹介します。
地域産業発展のために
長野県東御市に本社を置く宮原酸素(株)は、1925年に個人事業として創業。1952年に合資会社宮原酸素店が設立され、1987年、現在の宮原酸素(株)となりました。設立以来、さまざまなガス関連事業で地域の産業を支えてきました。環境への取り組みについても、基本理念・基本方針を掲げ、ISO14001の認証も取得しています。現社長の宮原英嘉氏は3代目として、2023年に就任しました。
炭酸ガス(二酸化炭素)の農業への活用
宮原酸素で取り扱っている炭酸ガスは、石油化学プラントから排出された炭酸ガスを回収・精製したものです。多くは製造業の分野で活用されていますが、他社に先駆け、10数年前から農業における二酸化炭素利用を進めてきました。これは主に施設園芸において、ハウス内のCO2濃度の管理や、専用チューブを利用し群落内で局所的に利用することにより、収量や生産性を高めていくものです。トマト・キュウリ・パプリカなどの野菜、イチゴ・メロンなどの果物、バラなどの花卉(かき)まで幅広く、北関東から関西まで多くの導入実績があります。初めは、ガスの運用の1つとして始まりましたが、カーボンリサイクルやスマート農業などの時流に乗り、注目度が高まっています。最近では、農業に加え林業でも、無花粉スギやカラマツの環境制御育苗に活用されるようになってきました。
さまざまな分野で活用される産業ガス
宮原酸素の事業は、工業、農業、林業、食品、医療など、幅広い分野にわたっていて、それぞれの産業のインフラとして、ガスの安定供給が求められています。宮原酸素では、自社で設備の設計から施工・供給・保安・管理まで一貫して行っていることから、社内の工事部により、トラブルやお客さまの相談にも迅速に対応できることが強みです。また、それに関連して、配管からのガス漏れを超音波により検知するサービスも行っています。ガスを供給する立場からガス漏れを診断し、その誠実さがお客さまに感謝されています。
ガスの環境へ配慮した利用としては、食品分野では、カットサラダ・加工食品などの商品のパッケージ内の空気を、それぞれに適したガスに置き換え、鮮度保持に役立てています。コンビニエンスストアでは多く採用されており、フードロスの削減に貢献しています。
医療の分野では、在宅酸素療法で活用されています。在宅の患者さんのライフラインとなるものですが、災害時に無電源で使える医療用在宅酸素ボンベの備蓄にも取り組んでいます。2016年からテイジンと提携し、災害時にも必要な方に迅速に届けられる体制を構築しています。宮原酸素本社のある東御市は県内でも災害の少ない地域で、備蓄倉庫の立地として適していることも同社の長所です。
これから先も地域と共に
このほか、宮原酸素としては、地元・上小森林認証協議会の「にぎやかな森プロジェクト」にも参画しています。そして、来年春の完成に向けて、新工場建設もスタートしています。「分散していた設備の統廃合やオートメーション化を図り、地域産業のインフラとして、この先数十年、安定供給していけるように基盤を整えていきたい」と語る宮原氏です。
会社概要
設立:1952年
資本金:2,000万円
従業員数:60名
事業内容:産業ガスの製造・販売、ガスアプリケーションの提供、ガス供給設備の施工・管理
URL:https://miyabara-sanso.jp/
「中小企業家しんぶん」 2025年 10月 15日号より









