日本中小企業学会の第45回全国大会が、10月3日~4日に中京大学名古屋キャンパスで開催されました。今回の統一論題は「サプライヤーシステムと中小企業―自動車産業の『大変革期』の中で」。大会は、統一論題報告2本、自由論題18本に加え、国際交流セッション、特別講演で構成され、労働、事業承継、地域振興、流通、外国人雇用、産業構造、金融などのテーマが取り上げられました。
特に注目を集めたのは、日本の自動車産業における中小サプライヤーの戦後からの軌跡と未来像を扱った統一論題報告と特別講演です。特別講演では、サプライヤー数の急減、国内自動車メーカーの苦境、中国企業の台頭などが予測され、自動車の価値がハードからソフトへと移行しつつある中、日本のサプライヤーシステムの弱体化リスクが強調されました。
統一論題報告では、既存のサプライチェーン依存からの脱却と、新たなコミュニティ形成や連携の必要性が提起され、大転換期は中小企業にとって新たな受注機会であると同時に淘汰(とうた)の危機でもあるとの認識が共有されました。
自由論題では、中小企業の価格転嫁問題が取り上げられました。中小企業の生産性は高いにもかかわらず、市場構造の差により価格転嫁力が弱まり、価格の二重取りともいえる収奪構造が指摘されました。かつては「損して得取れ」で成り立っていたビジネスも、現在では「No」と言えない企業が淘汰されている状況となっており、中小企業政策の抜本的な見直しについて言及されました。
また、国際交流セッションでは、ベトナムにおける人間中心主義のマネジメントや、企業文化を軸にしたグローバル展開の事例が紹介され、企業文化の醸成が国際競争力のカギとなることが示唆されました。
本大会は、愛知開催ということで自動車産業における危機と変革という喫緊の課題を中心に議論を深め、「事業承継」や「地域」といった日々の経営課題にも実証的かつ具体的な対策を模索する場となりました。
「中小企業家しんぶん」 2025年 11月 5日号より









