注目される「団体協約」制度~価格交渉に効果

 物価や人件費の上昇が続く中、中小企業にとって価格転嫁が重要な課題となっています。政府も価格転嫁を円滑に進めるために価格交渉促進月間の推進、「労務費の適切な転嫁のための価格交渉に関する指針」の公表、下請法の改正(2026年1月施行)などさまざまな施策を進めています。

 しかし、中小企業において価格転嫁はいまだ十分には進んでいないのが現状です。中同協の調査によれば、直近1年の賃上げや原材料費・エネルギーコスト上昇分のうち転嫁できた割合が3割以下の企業は約6割となっています。(中同協「2025年度上半期経営実態アンケート」)

 そのような中、あらためて注目を集めているのが「団体協約」制度です。「団体協約」制度とは、中小企業等協同組合法上、事業協同組合などに認められている制度で、「同じ取引先と取引をしている組合員がいる場合に、組合自身が交渉および契約締結の主体となって、当該取引先と当該組合員らとの間の取引条件に関する取決めを行う協約のこと」です。(全国中小企業団体中央会『中小企業と組合』2024年10月)

 団体協約制度を活用して価格交渉が効果を発揮した事例として、日本自動車車体整備協同組合連合会(以下、日車協連)の取り組みがあります。日車協連は工賃単価について大手損害保険4社それぞれとの間で交渉を重ね、中小企業等協同組合法に基づく「団体協約」を締結。平均で18・8%の引き上げを実現しました。工賃単価の引き上げは30年ぶりとのことで、日車協連の小倉龍一会長は「今回の妥結は画期的なこと」と述べています。(日車協連のサイト、および日本経済新聞2025年4月24日より)

 中小企業の価格転嫁が困難である原因の1つとして、取引企業間で「交渉力の格差」があることが指摘されています。日車協連の事例は、この格差を解決する方法の1つとして、中小企業が共同して価格交渉を行うことの有効性を示したと言えます。

 このように効果を発揮している「団体協約」制度ですが、あまり活用は進んでいません。経済産業省が協同組合や事業者などを対象に行った調査によれば、「現在効力を有する団体協約を締結している」との回答は、10%強にとどまっています。

 今春、下請代金支払遅延等防止法等改正に際して、衆参両院の経済産業委員会において以下の項目が含まれる附帯決議が全会一致で採択されました。

 「中小企業・小規模事業者が個々では解決できない課題に対応するため、全国中小企業団体中央会を通じた中小企業組合の設立指導や運営指導に取り組むこと。また、中小企業組合が主体となって、事業者と交渉を行うことで価格交渉力を強化できる団体協約の活用について周知を図ること」。

 中小企業憲章でも「中小企業組合、業種間連携などの取組を支援し、力の発揮を増幅する」と中小企業が連携することの重要性を指摘しています。業界によって条件は違ってくるとは思われますが、それぞれの業界においても「団体協約」制度の活用について検討してみてはいかがでしょうか。

(KS)

「中小企業家しんぶん」 2025年 11月 15日号より