10月9~10日、第23回障害者問題全国交流会(略称:障全交)が青森で開催され、43同友会と中同協から559名が参加しました。今回の特集では、開催地あいさつや問題提起、3つの分科会報告などを紹介します。
開催地あいさつ
青森同友会代表理事 三浦 克之氏
本日は全国から550名以上の方にご参加いただき、まずは皆さまの熱意と行動力に心から御礼申し上げます。
2年前の愛知障全交では、150名以上が集まって2次会を開催していると知り、どれほど熱い思いにあふれた仲間の集まりなのかを知りました。語らずにはいられない熱意が渦巻く場であることを実感し、そのエネルギーを見て1つの委員会の枠を超えた運動であることを確信しました。
数ある経済団体の中で、障害者や社会的養護などの問題に真正面から取り組んでいるのは私たち中小企業家同友会だけです。企業は利益を追求するだけでなく、地域と共に生きる存在である。その思いを形にしてきたのが同友会の歴史であり、今でも受け継がれている精神です。分科会と懇親会での真剣な議論と温かい交流に、その歴史と精神が息づいていることを実感し、大きな喜びを感じています。
私たちは議論と交流を通じて新しい未来への道筋を共有しました。そして、今日はその未来に向けた力強い出発の日です。この青森の地で燃え上がった炎をそれぞれの地域に持ち帰り、地域を変え、社会を変える力にしていただきたいと思います。
ここから共に新しい未来を切り拓いていきましょう。
主催者あいさつ・問題提起
中同協障害者問題委員会 委員長 高橋 正志氏
実行委員長をはじめ青森同友会の皆さんには素晴らしい障全交を開催していただきました。事前学習会では全国から報告者を招いて学びと機運を深めてこられ、強い結束と成長を感じました。
さて、今年は「労使見解」発表50年の節目の年です。物価高や人材不足、賃金上昇など、現在さまざまな経営課題が顕在化していますが、こうした問題は今に始まったわけではありません。同友会では対等な労使関係を築く努力を真摯(しんし)に続け、さまざまな難局を乗り越えてきた歴史があります。私も悩み苦しんだときには「労使見解」を読み返していますが、そのたびに時代を超えて心に響くみずみずしい生命力を感じ、勇気と力を与えてくれています。
私は現在、同友会の歴史と理念を学び直すことが全国的な課題であると感じています。今年は戦後80年の節目でもありますが、世界各地で罪のない尊い命が毎日失われ、身体や心に深い傷を負う人が後を絶ちません。「労使見解」や同友会理念をつくり上げたのは戦争の悲惨さを身にしみて体験した方々であり、その先人が最も伝えたかったのは世界の平和と人類の安寧です。中小企業は平和な社会でのみ繁栄できるという立場に立ち、すべての人が幸せになれる社会と世界平和をめざしてきました。
「小難しい勉強よりも今をどうするかで必死なんだ」という言葉を聞き、大変悲しい思いをした方もいたそうです。私たちは先人たちに悲しい思いをさせていないでしょうか。社会や地域に山積している課題を解決すること、すなわち世直しをする経営者団体であることに自信と誇りを持たなければいけません。歴史を学び、理念を再認識することから私たちの行動が変わり、それが新しいステージの同友会運動に発展すると考えます。
「障害者雇用に限らず、すべての「生きづらさ、働きづらさ」を抱える人たちに光を当てる」そんな同友会運動にしていきましょう。
分科会報告
第3分科会(神奈川)
人間尊重の経営を根幹に据えて!
自主性を伸ばす仕組みづくり組織づくり
報告者 (株)エイチ・エス・エー 代表取締役 田中 勉氏
座長 (株)ロジナス 代表取締役 山本 啓一氏
報告では、障害者雇用や障害者を地域で生かすといった話は一切出てきませんでした。
田中氏は、会社は社会の縮図であり、さまざまな人がいて当然との考えから先着順採用を行っています。トラブルこそが仕組みづくりの最大のチャンスと捉え、さまざまな規定・規約をつくり上げました。最近になって「エイチ・エス・エーに入ると人間力が磨かれる」という声も聞かれるようになっていますが、それまでに21年かかったと話しました。最後に「世界中で働いている人たちに感謝とお礼を言いたいと思います。ありがとうございます」と報告を締めくくりました。
印象に残った点の1つ目は、田中氏の地域愛です。「地元・小田原でこんなことがあってはならない」と繰り返し話したように、地域の困りごと解決のために次々と事業領域を広げている姿に、損得を超越した地域愛を感じました。
2つ目に、自主・民主というキーワードです。同社は合議制です。合議制の下での民主的な運営には社員の自主性が必要と考え、「自主なくして民主なし、自主なくして成長なし」と強調しました。社員に主体的に動いてもらいたければ仕組みをつくること、つまり仕組みなくして自主はないと感じました。
3つ目が、多様な人材を生かすことです。設立当初から多様な人材を生かした企業づくりを強く意識しており、さまざまな人たちに来てもらえるように先着順採用を実施しています。嫌いな人ともうまくやっていける力をつけてほしいと話し、社員にとことん寄り添い続ける田中さんの姿勢が垣間見られました。
経営者、ひいては人としてのあり方と仕組みづくりの追求が、1人1人が成長する会社に成就すると感じられた分科会になりました。
第4分科会(滋賀)
同友会運動の実践で社員満足度87%の会社に
ボンクラ後継者を救った同友会
報告者 宮川バネ工業(株) 代表取締役 宮川 草平氏
座長 滋賀ビジネスマシン(株) 代表取締役社長 田井 勝実氏
障害者問題委員会が人を生かす経営の一丁目一番地という方もいれば、経営指針書を作成して社員に浸透させることが第一という方もいます。採用できない会社や社員が辞めていく会社は継続できない、だから求人・教育が一丁目一番地だという方もいます。宮川さんは、すべての委員会の活動に取り組むことがよい会社につながることを強調しました。
親としか話せない緘(かん もく しょう)黙(かん もく しょう)症(かん もく しょう)のある社員が入社したとき、先輩社員のNさんが「親としか話せないままでいいのか!」と、周りがひやひやするほど言い寄ったことがありました。すると翌日、Nさんに聞こえるかどうかの声で「おはようございます」とあいさつをしたそうです。そうした、障害の有無にかかわらず人間として接した社員に感銘を受けたエピソードも紹介されました。
「もにす認定」も取得している同社ですが、宮川さんは2年前にユニバーサル委員長に就任してから積極的に福祉作業所や特別支援学校などを訪問し、多くの気づきを得ています。それらの気づきのもと、能力があるのに働く場がない人に、雇用という活躍の場をつくることが経営者の使命だと話しました。同友会のさまざまなコンテンツを活用し、三位一体活動をすべて実践することの重要性を確認した分科会でした。
第5分科会(青森)
共に生きる未来を目指して
はじまりは一歩踏み出すことから
パネリスト
(株)吉村 代表取締役 橋本 久美子氏
(株)吉村 商品管理課課長 長谷川 智巳氏
(有)ローズリー資源 代表取締役 田中 桂子氏
コーディネーター (有)工藤板金工業 専務取締役 市川 恵子氏
第5分科会は実践報告にとどまらず、私たちに何ができるか、どう向き合うべきかを問い直す深い学びの場となりました。
(株)吉村の橋本さんは「納付金を払いたくない」という思いから障害者雇用をスタートしましたが、同友会で学びを深め、社員の力を引き出し、企業にイノベーションをもたらす取り組みへと発展させています。社員の長谷川さんは、現場で直接当事者と向き合い、自らチームを立ち上げ、仲間を巻き込み、誰もが安心して働ける環境をつくり上げていきました。また、先代の思いを大切にしながら、企業の成長にとどまらず地域全体の幸せを見据えて挑戦を続けているのが(有)ローズリー資源の田中さんです。
三者三様の実践から見えてきたのは、多様な人材を受け入れる風土づくりと、まず経営者自身が理解することの重要性です。そして、自己開示を通してお互いが補完し合う組織づくりを続けることが共に育つということであり、人を生かす経営だと感じました。参加者1人1人が自分自身を振り返り、明日への一歩を踏み出すための背中を押してくれた時間だったと思います。グループ討論も盛り上がり、最後にはパネリストと参加者が一体となって、熱気を帯びた学びが得られた充実した分科会となりました。
まとめ
中同協人を生かす経営推進協議会 代表 加藤 明彦氏
まずは、設営いただいた青森同友会の皆さんにお礼を申し上げます。「労使見解」発表から50年が経ったいま、2日間にわたって同友会の障害者問題への取り組みを深めることができました。「人を生かす経営」はあくまで手段であり、人を生かす経営を通して「人が生きる社会」をつくっていくことがわれわれ経営者の使命である、その必要性も学びました。
ポイントの1つ目は、企業内に働きやすい環境をいかにつくるかです。誰もが1度しかない人生を豊かに生きられ、生きることに幸せを感じられる企業づくりが大切です。そのためには、1人1人の違いや特色を認め合う風土をつくることが重要であり、それが「自主・民主・連帯」の精神そのものではないかと思います。
2つ目は、経営指針の確立です。同友会運動の新しいステージでは、経営指針の成文化と実践から、さらにそれを深めて確立していく段階に入っています。経営理念を基に1人1人の持ち味や役割を明確にし、障害の有無にかかわらず同じ職場の中で一緒に働ける環境をつくっていくこと。それを経営指針の中で展開し、採用・教育の具体的な方針・計画を立てて実行していくことが求められています。「労使見解」に基づく指針・採用・教育の三位一体活動の土台に位置づけられるのがこの障害者問題委員会ではないかと思います。
3つ目に、だからこそ1社1人の障害者と関わることです。関わるきっかけづくりや、知らないからこそ関心を持って「他人ごと」から「自分ごと」にシフトチェンジすることが大切だと思います。われわれが「労使見解」から学んでいるのは、経営者の姿勢と覚悟です。障害者雇用は経営者として当然のことであり、それによって経営者の姿勢が変わり、社員が気づくことで会社は変わっていくのだと思います。
人間尊重経営の基本となる「自主・民主・連帯」の精神が「労使見解」に結実する、この本質を改めて今回の障全交で学びました。企業や社会において実践していきましょう。
「中小企業家しんぶん」 2025年 11月 15日号より









