労使見解とわたし~発表50周年に寄せて【最終回】

「中小企業における労使関係の見解(労使見解)」の発表50年を記念し、「労使見解とわたし~発表50周年に寄せて」をテーマに全国から多くの原稿が寄せられました。お送りいただいた原稿を連載で紹介します。

(株)ねぎしフードサービス 代表取締役 根岸 榮治(東京)

同友会との出合い、人を生かす経営へ

 私は、1995年に東京同友会新宿支部に入会しました。同友会の「共に育つ」という理念に共感、共鳴し、学びを深めていきました。その核心となったのが、「経営指針書作成」です。経営指針書を作成することで「人を生かし、永続性のある会社に成長させること」の重要さを学び、経営の目的である「働く仲間の幸せ(人の成長・100年企業)」の実現をめざし、理念共有と人財共育の仕組みづくりを徹底していきました。

 現在28冊目となる経営指針書は、なくてはならない経営の中心にある1冊になっています。毎年、会社のありたい姿としての成長戦略を経営幹部と議論し、店長以上の社員でKPIとそのプロセスを明確にします。経営理念や価値観を働く仲間全員が共有し、9割のアルバイトも含む組織全体が仕事を通して成長する人財共育PDCAの仕組みのアップデートをしていきます。そうしたことを継続したことで、社員が主体的に参画し、責任感が生まれ、狂牛病やコロナ禍などの過去の大きな困難を乗り越えることのできる組織力につながったと確信しています。

 飲食チェーン店の経営を支える一番大切なものは店舗であり、その責任者である店長の役割こそが、会社全体の成長において最も重要と言えます。店長は店舗で一緒に働く仲間を成長させることで自身の成長となり、その成長段階で得られる強いチーム力こそが「店舗力」を上げ、結果として顧客満足度の向上とリピー卜客の増加をもたらします。

そして、その土台となる理念評価や、育てた人が評価される育成評価制度を今後もさらに充実させていきたいと思います。

 今後も働く仲間1人1人が誇りを持ち、幸せを感じられる環境をつくり、「この街にねぎしがあってよかったというおいしい味と親切なおもてなしの感動を地域へ! 世界へ!」という未来のありたい姿の実現に向かって歩んでまいります。

(株)エニー 代表取締役 佐々木 雅一(神奈川)

 「労使見解とわたし」寄稿募集の中小企業家しんぶんの記事を読んだ途端、起業したころの記憶がよみがえってきました。

 勤めていたときは、最盛期50名近い部下を持つIT企業の管理者でした。しかし、平成不況で1500名を超える社員のうち3分の1が1年近くでリストラされました。各管理者は、リストラ名簿作成に苦慮しましたが、幸い私はその役目からは外れていました。銀行から天下っていた気概のある営業部長はあまりの理不尽なやり方に社長と口論の末辞めました。私もその後3年ともちませんでした。

 その後、川崎商工会議所が公募した起業家支援セミナーを受けた勢いで会社を辞め、起業しました。起業にあたり下請けの経営者からいろいろアドバイスをいただきました。例えば社員からの要望はいちいち耳を貸してはいけない。社員とトラブルがあったときは毅然とした態度で臨みなさいと助言されました。

 最初に採用した社員が初めての給料日、採用条件が違うと文句を言ってきました。私は前出の経営者の助言をそのとき忠実に実行しましたが、その社員はあっさり辞めました。起業したときは、前の会社の反省から社員を大切にしなければと理念らしき心得を持ったはずなのに、いきなり失敗です。そんなとき、セミナーの仲間から同友会の会合に誘われました。私が抱いていた経営者像はあっさり覆されました。経営者はざっくばらんに上下の関係なく議論していました。私の参加した部会は経営指針と社員との関係の報告で、社員との苦闘を切々と語られていたのに感動しました。私は間髪入れず経営指針作成部会に参加しました。そこで、「労使見解」に巡り合ったのです。社員退職の失敗は、就業規則もない状態で口答で簡単に採用したのが原因だと反省しました。

 それから、延々と経営指針と「労使見解」と付き合いが続いています。

【ご寄稿ありがとうございました】

 「労使見解とわたし~発表50周年に寄せて」には、全国の会員の皆さまから数多くのご投稿をいただきました。ご協力くださいました皆さまに、心より御礼申し上げます。本号をもちまして、連載を終了いたします。引き続き、皆さまのご支援とご協力をお願いいたします。

「中小企業家しんぶん」 2025年 11月 15日号より