【あっこんな会社あったんだ】経営指針の確立 
「もうけ第一主義」から「人を大切にする経営」へ 
(株)花茂 代表取締役 大矢 みな氏(千葉)

 企画「あっ!こんな会社あったんだ」では、企業経営に関わるさまざまな専門課題に取り組む企業事例を紹介しています。今回は「経営指針の確立」をテーマに、大矢みな氏((株)花茂代表取締役、千葉同友会会員)の実践を紹介します。

 千葉県に本社を置く(株)花茂は、生花の小売3店舗とフラワーギフトの卸売を展開する老舗企業で、来年創業80年を迎えます。

挫折からのスタート

 大矢氏は、家庭の事情で大学を中退し、人生初の挫折を経験。そんな中、家の前にオープンした花店に縁を感じ、花茂にアルバイトとして入社しました。翌年には店長に就任し、5年後に店の主人と結婚。経営に関わるようになると、家族・親族経営の中で見過ごされてきた社内のゆがみや社員との関係性など、さまざまな課題が見えてきたと言います。「社員を大切にしなければ、この会社は続かない」と強く感じるようになったのもこの頃でした。

 約12年前、同社は売り上げ3億円から10億円へと急拡大する「膨張期」に突入。しかし同時に、社員や取引先とのトラブルも増加しました。その時期に社長に就任した大矢氏は、税理士の勧めで同友会に入会し、指針セミナーを受講。この学びが、自身と会社のあり方を見つめ直す契機となりました。

「もうけ第一主義」からの脱却

 大矢氏は「もうけ第一主義」から「人を大切にする経営」へと企業変革を1人で断行しました。不採算事業からの撤退を決断し、スーパーや量販店向けの安価なパック花の卸売(当時約4億円)を中止。金融機関や仲間から「売り上げを下げるのはよくない」と反対を受けながらも、フラワーギフト加工場を新設しました。同じ「花」でも業態を変えたことで単価が上がり、利益率は4倍に改善。この変革期には、経営指針に基づく体制づくりを進め、役員7名(夫を含む)にも退任してもらったと言います。

コミュニケーションと成長支援

 かつては部門間の壁が厚く、社員同士の関係がよくなかったという課題に対し、大矢氏は「委員会制度」(環境整備委員会・商品開発委員会・交流委員会など)を導入。毎月の活動を通じて、社員が互いに助け合い、同じ方向を向く組織文化を育てました。

 また、「鬼社長」と呼ばれた過去を経て自己変革を決意。理念の浸透を図るために毎週10分間の音声配信で思いやエピソードを共有する取り組みを行っています。さらに、年3回の全社員面談・毎週のマネージャー面談を実施し、日常的なコミュニケーションを活性化するため、毎日誰かと1on1(10分雑談)をする習慣も取り入れています。これにより、部門や立場を超えて気軽に話せる関係づくりを推進しています。

 さらに、「方針が社員の日々の行動につながらなければ意味がない」として、全社員が10日に1度目標を記入し、達成状況を共有する仕組みを導入。理念と行動が結びつく一貫した経営を実現しています。

 共育にも力を入れており、国家資格受験の補助や毎月の技術指導を実施。小売・卸・営業の各部門で個々の適性に合わせた能力開発を進めています。また、女性社員が多い職場特性を踏まえ、時短勤務や土日休みなど、子育てと両立しやすい環境づくりにも注力しています。

コロナ禍を越えるDX化と地域貢献

 コロナ禍では、葬儀や結婚式の下請け事業から撤退していたため影響は限定的でした。むしろ在宅時間の増加により「おうちフラワー」販売が好調となり、オンライン需要への対応で売り上げを拡大。現在はDX化を推進し、花の自動販売機を店舗に導入しています。モバイルオーダーとの連携により、社員の残業削減と働き方の改善につながっています。

 地域とのつながりも深く、店舗の一部を無料開放した「コミュニティスペース」で花サロンや交流会を開催。学校や公共施設との連携にも力を入れており、毎回満席になる人気教室も開かれています。

200年企業をめざして

 企業変革を経て、同社は今後、持続的な成長路線をめざしています。

 大矢氏は「理念に基づく着実な成長を通じ、社員が社会から認められる喜びを実感してほしい」と語ります。

 「日本一のフラワーカンパニー」を目標に、娘への事業承継も進行中です。「経営者として最も大切なのは、人間尊重の経営。社会に愛される200年企業に育てていきたい」と力強く語る大矢氏。人を大切にする経営が、企業の未来を形づくる。花茂の挑戦は、200年企業への確かな一歩です。

会社概要

設立:1946年
従業員数:23名(うちパート・アルバイト7名)
事業内容:フラワーギフト小売業・卸売業、フラワースクール
URL:https://www.hanamo.co.jp/hanamo/

「中小企業家しんぶん」 2025年 12月 15日号より