同友エコ受賞企業(環境経営委員長賞、外部審査委員賞) 
気鋭の米農家 農薬・化学肥料不使用米に挑む 
(株)今井農園 代表取締役 今井 昭太氏(山梨)

 同友エコ2024―2025受賞企業を紹介する本連載。今回は、環境経営委員長賞と外部審査委員賞を受賞した(株)今井農園(山梨同友会会員)の取り組みを紹介します。

 高原特有の澄んだ空気ときれいな水、豊かな土壌に囲まれた今井農園(山梨県北杜市)では、今井昭太氏(専務取締役)が、新たな挑戦を続けています。2023年に行われたお米日本一コンテストでは、最高金賞を受賞。周りの米農家は高齢化で田んぼを手放す方も多い中で、地域の未来を担う存在として米づくりの可能性を広げています。

自然との共生へ

 今井氏が現在取り組んでいるのは、地域の慣行栽培基準と比較して節減対象農薬の使用回数0%、化学肥料の窒素成分量0%という条件で生産される「農薬・化学肥料不使用米(通称・無無(むむ)米)です。化学肥料・農薬を規定量使用する慣行栽培の米や、地域の慣行栽培基準と比較して節減対象農薬の使用回数50%以下、化学肥料の窒素成分量50%以下という条件で栽培される特別栽培米と比較してもその生産条件はとても厳しいものです。

 今井農園では、無無米の栽培の6年前から特別栽培米の生産を行っており、その田んぼでは生物多様性が徐々に豊かになっていました。もともと農薬の使用に抵抗感のあった今井氏は、特別栽培米の生産に加え、いっそのこと無無米に挑戦したいと考えます。

 しかし無無米への挑戦は、社長である父親から反対されます。農薬を使用しないことで田んぼが雑草まみれになり、疫病や害虫の発生を招き、それが周辺の田んぼにも広がる恐れがあったためでした。米づくりは周辺の農家との協力関係が必須で、社長の反対は当然のことでした。

アイガモロボとの出合い

 それでも諦めずに方法を模索していた際に出合ったのがアイガモロボでした。アイガモロボは太陽光パネルで発電をしながら田んぼの泥を巻き上げ、水を濁らせながら移動することで雑草の光合成を阻害、発芽を抑制します。またGPSを活用し、田んぼ全域に移動することが可能で、鳥のアイガモに頼るより手間もかかりません。この技術を使えば無無米の栽培に取り組めるのではと考えた今井氏は、再度社長を説得し「やるなら、目立たない田んぼで」と承諾を受けます。

 アイガモロボの投入のタイミングは極めてシビアで、早ければ稲が根付いておらず成長を阻害し、遅ければ雑草が繁茂してしまいます。時に失敗もしながら経験を積み、当初2枚でスタートした田んぼは現在8枚まで増え、無無米はあっという間に完売する人気商品になりました。タイコウチやシマゲンゴロウ、イトアメンボなど希少な生き物も増え始め、自然と共生する田んぼづくりは確実に前進しています。

今井農園のこれから

 「田んぼで米を作る楽しさを体現し、発信しなければ次世代につながらない」と今井氏は語ります。環境を育てる楽しさを共有し、今井農園を通して地域の世代交代を描いていきたいと意気込みます。その取り組みの一環として、「つぎの民話 プロジェクト」と協力し稲作の魅力を描く短編映画『田はひかる』を製作しました。今井農園の経営理念は「つなぐ。」です。おいしく安全な食文化と、その礎である気候風土を育みながら実りの喜びを分かち合う、この姿を次の世代につないでいくために今井氏の挑戦は続きます。

会社概要

設立年:2020年
従業員数:正社員3名、アルバイト2名
事業内容:食用米の生産、卸小売、加工品販売、農作業受託、イチゴの苗の生産
URL:https://imainoen.com/

「中小企業家しんぶん」 2025年 12月 15日号より