11月20~21日、第53回青年経営者全国交流会(略称:青全交)が香川で開催され、すべての同友会と中同協から2136名が参加しました(うちオンライン参加129名、12月15日号既報)。今回の特集では、開催地あいさつや3つの分科会レポートなどを紹介します。
開催地代表あいさつ
香川同友会 代表理事 林 哲也氏
今回の青全交のテーマは「守・破・離」です。「守」は先人の形を守ること。「破」はその形を破り、自分の工夫を加えること。そして「離」は自らの道を開き次の時代へとつなげていくことです。
これは特別な世界だけの言葉ではなく、皆さまがお越しいただいたこの四国にも自然に根付いているものです。その1つが88カ所を巡る四国遍路です。先人たちの道をたどる「守」、巡礼の中で問いを深める「破」、そしてここ香川にある結願(けちがん)の寺、大窪寺で「離」を迎えます。まさに四国遍路は守・破・離そのものの旅路です。
私たち香川同友会は全国でも特別な存在です。対企業組織率は10人に1人の割合で全国トップ。中同協が掲げる、組織率を高めて企業から地域を変えようという呼びかけをわたしたちはすでに実現しています。だからこそ自問自答が始まります。はたしてその規模にふさわしく地域を変えてきたのか。幸せの見える地域づくりに挑戦してきたのかということです。
香川同友会はこの数年間、地域を変える3本の矢に取り組んできました。第1に、災害の際に地域の中小企業が地域の人を守る「ココイコMAP」運動。第2に地域の人と地場産業をつなぐファクトリーツーリズムである「CRASSO(クラッソ)」運動。第3に若者と企業を共に育てる「共育型インターンシップ」運動です。この3本の矢がこれからの香川を大きく変え、発展させる地域運動になると確信しています。
お遍路の道は結願を迎えても新たな旅路へと続いています。同じように同友会の学びも守り、破り、そして離れて未来へと続いていきます。この青全交も、青年経営者の皆さんが語り合い、気づきを得て新しい挑戦へとつなげることで、皆さんの地域を変えるための一歩になればと思っています。
そして2年後の2027年には中同協定時総会がここ香川で開催されます。そのときには今日よりもさらに進化した香川同友会の新しい景色をお見せできるよう、全力で歩みを進めてまいります。
第2分科会(中同協)
真の人間尊重経営 ~あなたの不離一体は、どのフェーズですか?~
報告者:(株)ヒューマンライフ 代表取締役/中同協幹事長 中山 英敬氏
報告者:(株)A.モンライン 代表取締役/中同協青年部連絡会副代表 平澤 本氣氏
報告者:(株)LINK-S 代表取締役/中同協青年部連絡会副代表 安田 浩佑氏
第2分科会では、中山英敬氏、平澤本氣氏、安田浩佑氏の3名が報告を行いました。
平澤氏は、運送業を営んでいた家業を引き継ぎ、資金も人材もない中で勢いだけの創業を経験しました。大量離職や家族による資金流出など、数々の危機に直面しましたが、同友会での学びや先輩経営者の支えを通じて、理念とビジョンを確立。経営情報を社員に公開し、信頼関係を築く中で「人を生かす経営」へと転換しました。現在は教育投資を重視し、社員が自律的に学び、挑戦する企業風土を育てています。
中山氏は、過去に約40名もの退職者を出した経験から、現場を放置した自らの責任を認めて反省。その後、社員が経営指針に関わるようになることで、社員主体でPDCAが回る体制が構築されました。また、社員との対話を重ねることで心理的安全性を高め、社員の自主性を引き出した結果、コロナ禍という危機においても社員が主体的に新商品開発に取り組むなど、組織一丸となって困難を乗り越える企業へと進化しました。
3名の報告を通じて、経営者自身が自己変革を遂げ、社員を真のパートナーとして信頼し、本音で向き合いながら共に未来を創っていくことの重要性を再確認する分科会となりました。
第8分科会(岡山)
輝き続ける輝業へ ~孤独な経営からチーム経営への分岐点~
報告者:(株)ファーストディレクションTAKE KICHI代表取締役/岡山同友会理事・青年部部長 木本 康大氏
木本氏は、脱サラして2016年に同社を創業しましたが、理想の経営者像とは真逆の現実が待っていました。資金繰りに苦しみ、自ら現場に立ちながら、夜間にはアルバイトをする毎日が続きます。自身の見栄っ張りな性格から、ひっ迫する財務状況は社内で公表せず、誰にも相談できずに1人で悩み続けて社員との関係も悪化していきました。
そうした中、同友会で報告者を引き受けたことが契機となり、自己開示の重要性や社員たちを信じる大切さを学びます。そして、自らをさらけ出すツールとして活用し始めたのが経営指針書でした。
キャッシュフローが苦しいことを社内で打ち明けたところ、幹部社員から返ってきたのは「一緒に何とかしましょう」との一言。社員たちを、本気で会社のことを考える仲間・パートナーと捉えられるようになり、経営者としての覚悟が決まりました。現在では、地域活性化に向けた共創プラットフォームの構築を進めており、社会から必要とされる会社へと成長しています。
本気・本音で社員たちと関わり合い、経営指針の実践を続けている木本氏の報告を受け、グループ討論では青年経営者たちが熱い議論を交わしました。
第20分科会【オンライン】(香川)
泣く人がいない明日へ、コーヒーと繋ぐたくさんのスマイル ~アロバーはいかに時を編んできたか
報告者:(株)アロバー 代表取締役/香川同友会 梶聡一朗氏
第20分科会では、梶聡一朗氏が、両親から受け継いだコーヒー豆専門店の歩みを報告しました。幼少期の経験からコーヒー嫌いだった梶氏は、頼まれて事業に携わったことを機に理解が深まり、生産者に正当な価格を支払うダイレクトトレードを通して生産者と信頼関係を築くまでになりました。
しかし、母が病に倒れたことで経営の実情を知り、赤字脱却を果たしたことから天狗になり、スタッフが次々と離れていく暗黒時代を経験。気づきを得るため入会した同友会で経営指針を創る会を受講したことで、お客さま・取引先・スタッフの三方よしに通じる経営理念「スマイルトライアングル」を策定し、スタッフが輝く会社づくりに舵を切りました。
ところが、コロナ禍で心身が疲弊し追い詰められた経験から、理念に自分自身が含まれていなかったことに気づきます。利他と利己がつながらなければ、組織も人も枯渇してしまうという本質的な学びを経て、梶氏は誰も泣かない経営を誓い、「Part of your life(誰かの人生の一部に)」なれる会社をめざしています。経営理念と経営者自身のあり方、その結びつきの重要性について考えさせられる分科会となりました。
2日間のまとめ
中同協幹事長 中山 英敬氏
今回の青全交には全国から2000名の青年経営者が集まり、学びを深めることができました。本青全交を設営いただいた香川同友会の皆さん、関係の皆さんに心から感謝を申し上げます。
現在私たちを取り巻く環境をみると、日本経済も世界経済も先の見えない混沌(こんとん)とした状況が続いています。
しかし間違いなく言えるのは、地域や中小企業にとっては厳しい状況が続いているということです。また格差も広がりつつあります。コロナ禍やAIの進展により環境も激変しています。
そんな中でわれわれ中小企業経営者に課せられた大きな課題は、3点あると思います。
1点目は、企業づくりです。課題が山積する中で、「守・破・離」、つまり同友会の人間尊重の理念を学び深め、作り上げてきた自社の形を激変時代の転換点においてどう壊し、変革していくのか。また、新しい時代に向けて新しい企業の形として自立していくかということを分科会や基調報告、特別報告で深められたと思います。これだけ環境が激変していく中で、自社の商品やサービスの価値はあるのだろうかと自社を問いなおす21世紀型企業づくりを進めましょう。特に社会的使命感に燃えて、社会課題や地域課題を捉え、自社の事業領域をその方向に修正したり新しい事業に挑戦したりと、社会的価値を生み出される企業をつくりましょう。
2点目です。私は第2分科会で自主・民主・連帯と「労使見解」というカテゴリーの下、「真の人間尊重経営」をテーマに学びました。これほど同友会の理念を深いところまで学び合おうとする分科会を、青年経営者で設置したことがすごい、成長したなと心から感じました。そしてこの難しいテーマをみんなで深め、これからの時代を担う青年経営者がまとめをしました。
『発展のために』には「自主・民主・連帯の精神の実践が労使見解に基づく人間尊重の経営の源である」とあります。ですから、「労使見解」に基づく人間尊重の経営の最も大事なことは、自主・民主・連帯の精神を自社企業の経営の中で生かす風土が醸成されているか、ということなのです。
また「民主」、つまり人はみんな違うこと、そしてその違いを認め合う風土が組織力や連帯力を高めます。そのためにはしっかりとした自主が育っていること、意見をぶつけ合い議論をしながら理解し合うという民主の実践が重要です。そしてその結果、連帯・企業力が高まっていくのではないでしょうか。
3点目は、会員増強の今日的意義です。この2日間で改めて、私たちが学んでいる真の人間尊重の経営がいかに素晴らしく普遍的であるか、また格差が広がり倒産する企業が増えている中で人を生かす経営を実践することの社会的意義を感じたと思います。地域の疲弊が進んでいるからこそ人を生かす経営の輪を地域に広げていきましょう。共育の輪が地域に広がると、地域が元気になり地域の未来が見えてきます。こうした活動が全国各地で芽生え始めています。こうした活動にも関わっていただきたいと思います。
同友会運動の影響力はまだまだ足りていません。対企業組織率が3%になれば認知度が高まり、5%で影響力が高まると言われています。この香川県は組織率10%を超えナンバーワンです。われわれは組織率10%をめざしており、ビジョンでは全国平均を5%にしようと掲げています。こうした影響力が高まらないと、地域を元気にすることや日本を変えることはできません。この会員増強を常に意識して活動を進めていっていただきたいと思います。
参加者アンケート記述回答(抜粋)
- 今までに何度も「人を生かす経営」の報告を聞きましたが、一番わかりやすく、一番刺さりました。(第3分科会)
- この分科会を選んでよかったと思える内容でした。グループ討論も盛り上がり、一緒にお話しできた皆まと仲間になれた気がします! 素晴らしい分科会の設営ありがとうございました!!(第4分科会)
- 小さな行動をすることの大切さ、まず一歩を踏み出すことによって大きな変化になっていく。それを従業員と一緒に体験することにより、会社全体の成長、意識改革になっていくことが学べた。(第5分科会)
- 熱い報告で胸を打たれました。家業に生かせるお話が多かったです。(第6分科会)
- 報告者の初心を貫く志と熱意を感じつつ、社業を改善・発展させていくためのヒントがたくさん得られました。(第7分科会)
- 社員との向き合い方を改めて見つめ直して明るい10年先を共有して巻き込む気合いが入りました。(第10分科会)
- 事業は全く違えど、新しいことへの挑戦意思と仲間に向き合うひた向きな姿勢は、学び多き時間でした。(第11分科会)
- 付加価値について見つめ直すよい機会になりました。また初めましての人とたくさん話せ、刺激になりよかったです。(第12分科会)
- 田中さんの社員と築いてきた関係性と文化と絆に感動して3回ほど涙しました。グループ討論ではお互い実践や課題を共有できてとてもよい時間になりました。(第13分科会)
- 報告者の梅村さんが会社で実践し、葛藤していることがすごく伝わりました。自社でも言語化と、検証と改善がとても大事だなと思ったので、すぐ実行します。(第14分科会)
- 地域課題は全く違う地域でも共感できるものが多かった。客観的に見て解決策を模索するのが新しい発見につながるということがわかって、すぐに活用していこうと思った!(第15分科会)
- 多様性のある会社にするために仕組みなどを含めた会社の器を大きくすること、その前提として関係性の質を高めるための社内コミュニケーションの強化が必要であると感じました。(第16分科会)
- 地域問題解決を新規事業につなげられた取り組みや、ウェルビーイングの考え方、自社の成功事例を全国に広めていきたいという思いは素晴らしいと思った。経営者の覚悟と熱き想(おも)いは大切!(第17分科会)
「中小企業家しんぶん」 2026年 2月 5日号より









