1月22日に行われた中同協障害者問題委員会in群馬では、群馬同友会の石原秀樹氏が実践報告を行いました。報告要旨を紹介します。
わが社は、介護付き有料老人ホームをはじめ小規模多機能型居宅介護、昨年新たに立ち上げた居宅介護支援事業所などを運営しています。スタッフ49名のうち約7割が国家資格保持者で、高い専門性のもと地域の方々の「最期まで自分らしく暮らしたい」という願いを支えています。私たちの経営理念は、「誇り」「尊厳」「自己実現」の3つがキーワードです。介護は社会保障制度を支える非常に誇り高い仕事ですが、現実には女性の「やりたくない仕事ランキング」の上位です。私は、介護職を誰もが憧れる魅力的な仕事にしていきたいと考えています。
宿命の引き継ぎ―トップダウン経営の限界
私は2016年に当社に入社し、それまでは建設業界で現場監督をしていました。父と深い確執があり、幼少期から「あんな人間には絶対なりたくない」と思い続けてきました。そのため家業を継ぐつもりなど毛頭ありませんでしたが、2016年に会社が傾きかけて父から「助けてくれ」と電話があり、祖父の「家を守れ」という言葉が何度も夢に出てきて、覚悟を決めて家業を継ぐことにしました。
入社して現場を見たとき、絶望しました。組織に規律はなく、あいさつも満足にできず服装もバラバラで、「福祉だから、人がいないから仕方ない」という甘えが充満していました。就業規則の整備や制服の導入、言葉遣いを1つ1つ正すなど猛烈なトップダウンで管理するようにし、3年間ひたすら組織を締め上げました。結果として売り上げは安定し、表面上の形は整いましたが、どこか息苦しさが漂い、私が指示しなければ誰も動かない組織になっていました。
運命の出会い
ある日、地元の特別支援学校の先生が来られました。当時、私は大学で福祉を学び直しており、ピアサポート(同じ悩みや背景を持つ者同士が支え合うこと)の概念を知ったばかりで、「障害のある方が認知症の方に寄り添うことで、新しい支援の形ができるのではないか」と考え、障害がある若者1名を採用しました。
当時の介護現場は、何をするにも手書きで記録を残していましたが、彼は文字を書くのが非常に苦手でした。そこで、タブレットを導入して選択式のボタン入力に変え、マニュアルを極限までシンプルにすることで、誰が見ても「何をすべきか」「何が起きたか」を一目でわかるようにしました。すると、彼のために作った簡素化された仕組みが、結果として職員全員の負担激減につながったのです。記録にかかる時間は10分の1になり、利用者とじっくり向き合うという本来の仕事に割く時間が増えました。障害のある方が発する「できない、わからない」というサインは、組織に潜んでいる不備を照らし出すことに気づきました。障害者雇用は慈善事業ではありません。彼らを受け入れることで、経営者自身の管理能力の甘さや組織の未熟さが、容赦なく映し出されるのです。彼らが活躍し、多様性を尊重し合える職場であれば、それはどんな社員にとっても自己実現ができる最高の職場になります。
経営は「心の修行」
2025年、長年右腕として支えてくれた幹部社員が親の介護を理由に退職しました。打ちひしがれていた私に対して、残された職員たちは「私たちがやります。社長は1人じゃないです」と言ってくれました。そして、私が指示する「トップダウン」の組織から、みんなで考えてみんなで支える「フラット」な関係に転換。障害のある社員も、ベテランも新人も全員がパートナーで、理念という軸のもとに動く組織。それが、同友会で学んだ「人を生かす経営」の本当の姿なのだと、ようやく腹落ちしました。
経営とは、鏡の中に映る自分自身の醜さや弱さから逃げず、社員と共に成長し続ける「心の修行」に他なりません。「人を生かす経営」を掲げる同友会の仲間として、これからもこの鏡を磨き続けたいと思います。
会社概要
設立:2003年
資本金:700万円
従業員数:49名
事業内容:介護施設の運営
URL:http://rapport-isesaki.co.jp/
「中小企業家しんぶん」 2026年 2月 15日号より









