かつて三井鉱山をはじめとする石炭産業で栄え、1958年には人口約10万人を数えた福岡県田川市。しかしエネルギー政策の転換とともに閉山が相次ぎ、現在は約4万4000人まで減少しています。
2010年に国で中小企業憲章が閣議決定された流れを受け、田川市でも中小企業振興条例の検討が本格化。市内約2000事業所を地域の担い手と位置づけ、その活性化がまちの再生につながるとの共通認識のもと勉強会を重ね、「田川市中小企業振興基本条例」が誕生しました。
田川市の条例が全国的にも注目を集めている理由は、理念にとどめず、実行力と継続性を持たせる仕組みを組み込んだ点にあります。条例本文には運用組織として「田川市産業振興会議」の設置を明記。この首長や団体トップが集まる会議に加え、さらに現場で動く実務者による「実務責任者会議」を設置しました。この二重構造が条例を動かす原動力となっています。実務責任者会議は月1回のペースで8年近く継続され、福岡同友会の会員が委員長や委員を担い、議論と実践をリードしています。
条例を支えるもう1つの基盤が、徹底した実態把握です。市内全事業所を対象とした悉皆調査では、実務責任者会議のメンバーが電話や訪問で直接声を掛け、高い回収率を実現しました。調査結果を基に課題を8つに整理し、2019年に策定されたのが「中小企業が元気に活躍するまち田川~みんなでつくる地域内経済循環~」です。地域全体の“経営指針書”として、産官民学金が共通の方向を向くより所となっています。
ビジョン実現に向けては、4つの柱に基づく部会制を導入。経営者が学ぶ場づくり、ソーシャルビジネスの推進、生活者と事業者を結ぶ「KIBITTE」の構築、若者育成です。各部会で具体的な実践が積み重ねられ、高校生主体の「たがわPlanners」は地域イベントの企画や情報発信を通じ、地域の担い手として成長しています。
こうした流れは現在も進化しています。1月23日に開催された第87回実務責任者会議では、田川市初のビジネスプランコンテスト「TAGAWA GOLD RUSH」が議題となりました。これはKIBITTEに寄せられた地域の困りごとを起点に、新たなビジネス創出をめざす取り組みで、応募は49組に上りました。会議では最終プレゼン(2月28日予定)後の展開を見据え、意見交換が行われました。
条例を起点に調査―ビジョン―部会というサイクルを回す田川市。人を生かし、人が育つ仕組みづくりは、今も地域の未来を動かしています。
「中小企業家しんぶん」 2026年 2月 25日号より









